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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『紫煙』

前回のあらすじ


シリアル


「どうも江見塚先生、ルカ姉さん。遅くなったね」


スタジアム観客席の椅子にそれぞれ座った大天使を尾方が見上げる。


「いいよいいよ。ちょうど息を整える時間が欲しかったからね」


江見塚が微笑み。


「ルカも魔法コスメで休憩さん星☆さんだったから無問題だよ♬(ノ゜∇゜)ノ♩」


瑠花が電波を飛ばす。


二人を一瞥した尾方は一度息を吐いて口を開く。


「単刀直入に言いますね。通してください」


大天使二躯の眉がピクリと動く。


「...通して欲しいとは? 我々は迎え撃つ側だと思っているのだが?」


「いいえ、貴方達は防衛が任務でしょう。今の今までここを動かないのが証拠だと思います」


「ルカ☆達は攻撃側だよ(c=(c=(c=(c=(゜ロ゜;c=アチャチャチャチャチャ-!! 何処を護るのかな(o゜ー゜o)???」


尾方は一瞬の沈黙の後。


「知ってますよ。天使のやり方は」


悲しそうな顔でそう言った。


バチィッッ!!!


瑠花の飛び蹴りを尾方は両の手で受ける。


「ごめん、通せない」


尾方は確かに飛び蹴りを受け止め、勢いを殺した。


しかし、


次の瞬間、腕が文字通り吹き飛び。


その勢いで壁に叩きつけられた尾方は『七転び八起き(トライアンドエラー)』の権能で起き上がった。


「ふぅ、思わず受けてしまった。失敗失敗」


「きゃあΣ(●゜д゜●)。本当に生き返った ( ゜д゜)ンマッ!!」


「そんなに珍しいものでもないでしょう。さて、久々に対峙して分かりますがいかんともし難いですな貴方の正装は」


尾方の言葉を受けて瑠花はポケットから取り出したコンパクトを胸の前に掲げる。


「白貫きゅんはもう知ってるかもだけど紹介するね☆ 魔法道具【:;。+゜+。フラワー✿ハート。+.。゜:;。+】! 魔法の力でルカを魔法少女にしてくれるのだ+*゜.ヾ(*´∀`)ノ☆*+.゜!」



正装:唯一花ゆいか


本体はコンパクトではなく中身のファンデーション。に使われた粉末物質。


この粉に触れた物体は存在の階級ランクが上がる。


そこに『在る』という事実の強度があがるのである。


これはその他の物質に触れた際に効力が強く発揮される。


即ち、発生した力がその他の発生した力に負けることがない。


また、下存在階級からの干渉をほぼ受けることがない。


一言で言うと、


『塗ると無敵になるファンデーション』である。



「昔から思ってましたけどズルくありません? 騎士道精神とかないんです?」


「あるのだー✧*。✧*。アイドルが必ず勝利するという顛末こそ☆ 全てを守る騎士道に勝る心なのさ♫ヽ(゜∇゜ヽ)♪」


「わりとそれ脳筋理論では?」


「えーい☆☆」


ドグシャァ!!


問答無用の右ストレートがガードを貫き尾方の首を飛ばす。


デスルーラで少し離れた所で生き返った尾方はさらに距離を取った。


「やってられないなぁ...」


瑠花の方を振り返りながら二、三歩下がる尾方。


「...失礼」


三歩目。


その位置に既に手が置いてあった。


...トンッ


本当に。


軽くコップを机に置いたような。


本当に軽い音。


しかし。


糸の切れた人形のように尾方は前のめりに倒れた。


「ゴホッゴホッ、はぁ。気持ちの良いものではありませんねやはり」


江見塚が咳き込みながら言う。


「ええ、似合ってないかと...!」


瞬間生き返った尾方は手を地面につき、ブレイクダンスのように足を振り回し蹴る。


江見塚はこれを最小限の動きで体の軸をズラすだけでかわした。


地面を腕でタンッと弾き、距離をとる尾方。


「貴方の脅威は正装よりその体術でしたね江見塚先生」


「いえいえ、護身術に毛が生えた程度でして。恐縮ですよ」


「護身術で人は死なんと思うのですが」


「天使の護身術なので」


「なるほど?」


言い包められた尾方は江見塚の手に握られた木の棒を見る。


確か笏と言うのだったか。



正装:正笏しょうしゃく


思念を持って笏で指した人物の近い未来が笏の裏側に示される。


何処まで先の未来を示すかは笏で指した時間に比例する。


ただ、笏の裏に収まる範囲での文字数となるため、あまり詳しい内容は記載されない。


また、この正装は使う事はもちろん、持っているだけで尋常ではない体力を吸収される。


故に使用者は常に病人のように痩せこけているのである。


しかし、正装所持者の江見塚〆はとある武術の達人であり。


体の中に流れる躍動の気を読み。


それを乱れさせて体を静の状態(死)に近づける。


技術というより術に近い体術を得意としている。


故に最小限の体力での戦闘が可能であり。


未来視と合わせた武術体系は、まさに必殺の極地となっている。


かの大天使に笏で指されたが最後。


示された未来の最後には。


死が追記される。



「先生と戦ってたら僕のデス数が過去一になっちゃいますよ」


油断なく半身で下がる尾方


江見塚はちらりと笏を見て言う。


「うーん、君の未来は死ばっかりでよく分からないなぁ。もっと自分を大切にしなよ?」


「そうしたいのはやまやまなんですがねぇ。時間がなくって」


「本当に気づいているのかい? うーん、私としては通してあげたいんだが」


「分かってますよ。だから僕も全力で行きますから」


「悪いね」


そこに瑠花が江見塚に合流する。


尾方は一つ溜息を吐くと二人を見上げる。


そして


「やってられませんね。そいじゃ」


力ない言葉とは裏腹に回れ右で全力疾走を開始した。


「まぁ、妥当でしょうけれど...私は走りたくないし」


「こらー(-`ェ´-怒)まてぇ‾͟͟͞(((ꎤ >口<)̂ꎤ⁾⁾⁾⁾」


追いすがる二人には目もくれず、尾方はスタジアムの外通路に入り、外を目指す。


「瑠花さん、これ以上は」


「分かってる(´·ω·`)」


外に出す訳にはいかない。


二人が足に力を入れようとした次の瞬間。


キュッ


思いがけず、尾方が進路を変える。


そちらは外ではなく。


倉庫の方向。


意図を読み取れず追跡を続ける二人。


笏で指しても、尾方の行き先は倉庫に他ならなかった。


そしてその未来の通り、尾方は倉庫に入っていく。


肉弾戦が得意な大天使相手に閉所。


考えるべくもなく失策である。


間違いなくなにかしらの罠だ。


しかし。


迷いなき足取りで大天使は倉庫へ入っていく。


悪魔の策略など。


大天使は、全てを受け止め。


その上から蹂躙する存在。


事実この倉庫でも。


彼らは無傷でこの倉庫から出てくる。


しかし。


それが勝利とは。


限らないのだ。



微かな煙草の香りが、大天使の鼻元をよぎった。



深層の紫煙(ディープダイバー)


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