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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『忠犬』

前回のあらすじ


友達...? 増える...?



「よし! 天禄に友達増えるといいな!」


大天使を一人押し付けた尾方は休む事無く駆ける。


するとそこへ。


「ワン!!」


戦場に似つかわしくない犬の鳴き声が響いた。


「ハチ!!?」


相対する尾方には明らかに動揺の色が見える。


「お座り! 待て! ハチ!!」


「ワンッ!!」


犬は絵に描いたような柴犬であり、凛々しくも尾方を睨み付けている。




特別に解説しよう。


このハチこと。大天使第八躯『忠義の天使』八は。


尾方巻彦の天敵なのである。


善神に不殺を誓い。


しかし、容赦なく悪魔を再起不能にするその柴犬は。


あまり信じられていないがシャングリラ戦線七不思議のひとつ。


『悪魔狩りの狂犬』その正体である。


ちなみに本犬はその呼び名を気に入っておらず。


『天使の狛犬』を自称しているらしい。


話が反れたが要に。


尾方巻彦は天使時代よりこの柴犬と相性がよろしくない。


いろんな意味で似た物同士だったためか性格面での衝突が幾度かあり。


また、正装の能力もすこぶる相性が悪かった。


少し過去の善神の聖堂では、犬の鳴き声と口論の声が少し後、


簀巻きにされた白貫 誠の姿が時折観られたらしい。




「くわばらくわばら!!」


一変、尾方は踵を翻して距離を取ろうと試みる。


「ワンッ!」


させぬとハチは正装を解放した。


それは首輪に繋がれた無数の鎖。


鋭く穂先を敵に向けながら、ユラユラとその数を増やしている。


そして一瞬ピタリと動きを止めると、激しい金切り音と共に轟と尾方に突撃した。


「勘弁してよ...!」


キッと無数の鎖を注視した尾方は、緩急を付け八方に跳び周りこれを寸での所でいなす。


しかしその内の一本が鋭く尾方の腕に巻き付く。


「やっば!?」


慌てた尾方が鎖に手を伸ばすが既に手遅れである。



正装:【三ッみつくび


数、長さ、動きを自在に操る事が出来る小判鎖。


その大元は一つの首輪であり、鎖はそこから顕現している。



この鎖に対し外部から何かしらの力が働いた場合、同量の力が拮抗するように働く。


つまり【どんな力でも壊せない鎖】である。


この鎖に巻きつかれた場合、力による脱出は不可能。


解こうとする力と同量の力が鎖から働くため、身動き一つ取れない。


如何なるものであれ逃れられない忠義の鎖。


それが正装、三ッ首である



「ええっと、どうするかなこれ!」


当然、尾方もその正装の能力は身を持って知っている。


力ずくは選択肢にない。ならば、


「ごめん! 芽々花ちゃん!」


葉加瀬に一言侘びを入れた尾方。


瞬間、鎖が絡まっていた手が外れる。


そう、偶然にも鎖に絡まれていた腕は義手の方だったのだ。


直前まで迷っていたようだが、尾方はそれを外すことを選んだ。


ハチは一瞬驚いたように静止したが、直ぐに持ち直し正装を操る。


四本の鎖をステップで回避した尾方は、少し距離を取る。


しかし、休みなく増え、動く鎖は、一層鋭く尾方を追撃した。


バチッ!!


響いたのは鎖と鎖がぶつかる音、そして。


何かが鎖にぶつかる様な音。


「やれやれ、杖突いた老人に追いかけっこさせるんじゃないよ」


「いや、これでも移動距離を最小限にしたつもりなんですがね」


悪道替々、老紳士は鎖を素手で受け止めていた。


当然、鎖は撒き付き、その手を縛るの...はずなのだが。


空中で制止した鎖はブルブルと震えている。


様子がおかしい事を察したハチは鎖をつたい、素早く二人の近くに着地する


「ああ、君がハチ君かね。噂はかねがね」


警戒の色を解かないハチは掴まれた鎖を睨みつける。


「ああ、これかね。私の権能はね。触ったモノとの力の逆転なのだが。これが面白いものでね。正装にも効果があるんだよ。恐らく君の正装の力と私の逆転の力が拮抗してコントロールを失っているんだろう」


替々の顔に影がかかる。


「ああ、大丈夫大丈夫。正装の持ち主には影響ないから。あくまで正装だけだから。でもなんでなんだろうね?」


上がった口角を隠しもしない。


「私の権能の対象範囲は悪魔と天使だけなんだが。なんでなんだろうねぇ」


「ワンッッ!!!!」


一層強く吼えた大天使は、無数の鎖を周囲に張り巡らせる。


「あらら、挑発しすぎた。逆鱗に触れてしまったかな」


やれやれと両手を上げた替々を尾方は呆れたように見る。


「今のは師匠が悪い。知ってる癖に」


「なにをかね? 私は好奇心に従ったまでなのに」


「好奇心は猫をも殺すと言います」


「老人の好奇心は打算的なのだよ」


先んじて飛んできた鎖を掴んだ替々は鎖を横に大きく振り残りの鎖を弾く。


「いきなさいよ尾方。分かってると思うけどこの戦はどうしようもならないからね」


「知ってますよ」


「でしょうね」


替々は心底呆れた様子で言う。


「君っていつもこんな戦いに身を投じてたわけ? 気が狂わない?」


「ご覧のとおりですが?」


「成る程だなぁ」


そこまで言った替々はハチに向き直る。


「メメント・モリ、相談役、悪道替々」


「ワンッ!」

(意訳:戒位第八躯、忠義の天使、八!)


「お手柔らかに」

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