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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第五章「白星ルーザーと急襲アンダーグラウンド」
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『princess hug』

前回のあらすじ


中年、なんか見えてる

前回のあらすじ


中年、なんか見えてる



お姫様だっこ。



お姫様だっことは、


抱きかかえられる側の人の体を横向きにしておき、


抱き上げる側は脇を閉めつつ両腕を差し出して、


対象者の上半身と下半身をそれぞれの腕で分担する形で支え持ち、


腰を支点にして自分の腹の位置まで抱え上げるというものである。



なんの話をしているかって?


いやいや、私は語り部だよ。


ありのままをありのままに君達に伝える役目を担った者さ。


つまり、今目の前で起こっている状況のそのままだよ。


風のように軽やかに飛び出した小廻は、尾方に奇襲を仕掛けた。


しかし咄嗟に反応した尾方がその攻撃の初動を押えようと前へ。


結果この形になった。


ならないって? なったんだから仕方ないだろ!


私だって前回まで生と死のシャトルランとか死のブザーとか言ってたんだぞ!


一番いたたまれないのは私だろ!


いや、失礼。私は誰でもない私だ。


取り乱したがそこは一貫しないといけない。


まぁ、その、なんだ。


その場は数瞬時が止まった。


当然である、皆、理解に時間が必要であった。


私だってそうだ。皆だってそうだ。


しかし、一番最初に動いたのは意外にも尾方であった。


三歩そろりと前に出ると今だ固まっている小廻を割れ物を扱うように慎重に置く。


そして三歩下がると再び、片腕を押えて清の方を見る。


そして、パンと手と叩くと言う。


「はい、テイク2!」


こ、この男! 間違いない! 無かった事にしようとしている! この後に及んで!


「な、なな、なななな...」


ワナワナと小廻は震える。


「なにをするんですかー!!!」


尾方を突き飛ばし、小廻は距離をとる。


「な、なな、なななな...、なんのつもりですか! なにがテイク2ですか! なかったことになんてなりませんよ! 私を抱っこしましたね! しかもお姫様だっこ! 初めてだったのに!」


顔を真っ赤にした少女は体を抱くようなジェスチャーをしながら中年を糾弾する。


「い、いやいや、おじさんだって人をお姫様だっこするのなんて初めてだよ。それに今のはさ。ほら、事故じゃない? ノーカンでしょ普通に考えて? ねぇ?」


うろたえる中年は振り返り救いの手を求める。


しかし、助けを求めた二人はどこか面白くなさそうにそっぽを向いていた。


「いやー、一回は一回なんじゃなかろうかのう? 知らぬがぁ一回もした事も無いからワシは良く知らぬがぁー」


「そうですね。一回は一回なんじゃないでしょうか? 私も未経験の事は知らぬ存ぜぬですが」


拗ねてる。


「え? え、え? なんか二人ともそっけなくない?? おじさんの肩を持ってくれてもいいんじゃない?」


「そんなことのぉ~女子の腰を持った男に言われてものぉ~」


「ええ、ええ、全くそのとおりです。腰を持って肩がこったのですか尾方さん」


すごい拗ねてる。


動揺してる尾方よそに、激昂した小廻が再度急接近する。


「ゆるすまじ!!」


完全に虚を突かれた尾方は咄嗟にその攻撃の初動を押えようと前へでる。


つまり、


お姫様だっこである。


お姫様だっことは......


まぁ、あれだ。天丼である。


二度目にも係らず再び凍りつく空気。


今度も最初に動いたの尾方だった。


少し手馴れた手つきで慎重に小廻を置くと、どこか諦めたような顔で姫子達の方を振り返る。


なんか分からないけど怒られることを悟ったのだろう。


「ん」


しかしそこには、尾方に向かって手を延ばす姫子の姿があった。


「ん?」


その予想だにしない姿に尾方は疑問符を浮かべる。


「ん!」


すると姫子は声を強めてなにかを促すように両手を広げる。


「え? ええっ...と? ん?」


尾方は恐る恐ると脇の下を持って姫子を持ち上げる。


「んん!!」


「え!? ええ!? もしかして、こう??」


さらに声を強められた尾方は、最近誰かを抱いた記憶を元に、咄嗟にお姫様だっこをする。


「ん」


どこか満足げな顔になった姫子を見て、尾方はホッと胸を撫で下ろす。


「いやなんか申し訳ないね、たまに分けわかんないスイッチ入っちゃってさぁ...」


一連の流れを見られた清に言い訳しながら尾方は振り返る。


すると


「ん」


そこには姫子と同じように手を伸ばしながら待っている清の姿があった。


「ええ!?」


「ん!」


満足げな姫を静かに置いた尾方は、恐る恐る清を同じようにお姫様だっこする。


「ん」


こちらも少し照れているようだが満足そうにする。


再び胸を撫で下ろした尾方は、これまたゆっくり清を降ろすと、


小廻の方に向き直った。


「さぁ来い! 天使め!」


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