中年サンタと自粛クリスマス
いつもの二人が駄弁ってるだけです
①
「はぁしぃれぇそりよぉ~かぜぇのよぉうにぃ~ゆぅきのぉなかおぉ~かるく~↑かるく~↓」
「ヒメの歌ってなんでこうコブシが効いてるんだろうね」
「さて尾方、待ちに待ったクリスマスじゃ。じゃんじゃん盛り上がってゆくぞ」
「いや、盛り上がるもなにも...おじさんとヒメの二人だけだよ」
「そうじゃな。...そうじゃな」
「露骨に盛り下がらないでよ。なんかおじさんが悪い感じになるじゃん」
「いや、でも仕方がなかろう。皆忙しいのじゃよこの時期は、師走なんじゃ師走」
「ヒメは師走ってなにか知ってるかい?」
「旧暦の12月のことじゃろ? 『師が走り回るような忙しさ』で『師走』。ここで言う師とはお坊さんの事じゃな」
「なんだ。替々師匠の事じゃないのか」
「大叔父様が走り回るなんてよっぽどのことじゃぞ」
「町内会でいい所見せようとして子供たちの前でバック転してから膝に爆弾抱えてるからね」
「理由は知らなくてよかったかなワシ...」
「ほらヒメ、おじさんサンタからプレゼントがあるから元気だして」
「わぁぁあ! プレゼントじゃプレゼントじゃ!」
「現金なボスだことで...」
「ここで開けていいかの!」
「どうぞどうぞ」
「これは...! ねるねるねるね...!?」
「魔女の格好して食べてね」
「ハロウィンは一ヶ月前じゃぞ。なんともマイペースなサンタクロースじゃ。むぐむぐ...うまい!<テーレッテレー」
「ねるねるねるねの豆知識とかないの?」
「ねるねるねるねを5千回ぐらい混ぜるとガムになるらしいぞ」
「ええ...ガムって作るの大変なんだねぇ...」
「いやいや、全てのガムの原材料がねるねるねるねの訳がなかろうが...っとまだまだお菓子が入っとるなこれ」
「おじさん、お菓子の目利きには一家言あってね。詰め合わせさ」
「お菓子の目利きに一家言あるおじさん...」
「改めて言われると思うところあるねそれ...」
「さて、お菓子は後で食べるとして。プレゼント交換をしようかのう」
「え? 二人で?」
「うむ、二人で。何人でやってもプレゼント交換はプレゼント交換じゃろう?」
「そりゃそうだ。ほい」
「うむ、ほれ」
「...なんか袋大きくない?」
「尾方のは小さい...というか封筒じゃの...? これ現金とか入ってないじゃろうな?」
「まさか、そこまで情緒に欠けた人間じゃないよおじさんは」
「ははは、それはそうじゃの。失敬失敬...ってこれは? 肩たたき券...?」
「プレゼントって言ったらやっぱこれだよね」
「情緒が足りすぎておる...」
「ヒメには少し早すぎたかな?」
「おじさんからの肩たたき券なんて人類には早すぎるじゃろ」
「あれ? 気に入って貰えなかったかな?」
「いや、この券には期限、回数などの利用要綱が書いておらん。つまりワシの思うままじゃ。夢のような券をありがとう尾方」
「あれ? もしかしてこれおじさん無期限肩たたき権を譲渡した事になっているのでは」
「いつどこでもなんどでもお願いするぞ尾方」
「重い、肩たたき券なんてちんけな紙切れに乗るにはその期待は重すぎるよ」
「重い想いにおのおの迷々じゃな」
「『おもいおもい』に『おのおの』『めいめい』...あこれ全部同じ意味なのか」
「正解、レイブンクローにプラス十点」
「おじさんグリフィンドールがいいなぁ」
「悪魔ならスリザリンを目指せスリザリンを」
「悪魔が目指すべきはアズカバンなのでは?」
「捕まっちゃ駄目じゃろ」
「そりゃそうだ。だったら名前を言えないあの人を目指そう」
「おお、そうじゃ! 夢はでっかくラスボスじゃのう」
「でもおじさん、夢でヴォル〇モートにクラウチングスタート&全力疾走で追いかけられてから苦手なんだよね」
「まごうことなき悪夢じゃな」
「あ、そうだ。ヒメのも開けていいかい...このでっかいやつ」
「うむ、モチのロンじゃ」
「......薄々気づいてたけどこれクリスマスツリーだね」
「うむ! リースと迷ったがやはりボスらしくクリスマスの象徴にすることにしたぞ!」
「うん、おじさんもそこそこ生きてきたけど木をプレゼントされるのは初めてだよ」
「そうであろうそうであろう。スケールが違うからなぁワシくらいになるとなぁ」
「うんうん、もうおじさん意外にこんなプレゼントしたら駄目だからね?」
「独占欲はよくないぞ尾方」
「保護欲かな」
「よし、では尾方よ。早速このクリスマスツリーに飾りつけを行うぞ」
「へいへい、まぁディナー前の軽い運動にはちょうどいいかな」
「あ、そういえば尾方よ。まだあの言葉を聞いておらんぞ?」
「ん、ああ、今更だぁね」
「よいよい、今日は何回でも言っていい日じゃ」
「そりゃそうだ」
「「メリークリスマス」」
皆さん良いクリスマスを