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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第五章「白星ルーザーと急襲アンダーグラウンド」
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『いざ尋常に』

前回のあらすじ


喧嘩ってよくよく考えると結構高等なコミュニケーションだよね


なんとも悲しい話である。


この少女二人、各々の事情により、同年代且つ対等な人間関係が欠落していたのである。


つまり、その構築の中で必ず起こる人間間の大小さまざまないざこざ。喧嘩の経験がなかったのである。


保護者二人は少し考えて眉をひそめると、小さな声で話し合いをはじめる。


「尾方さん。どうしましょう? これは困りましたよ。そちらのボスさんはどんな環境で育ったのですか?」


「いや、それを言うならそっちの天使ちゃんもでしょ? どうしよう突然急激のシオシオ加減におじさん胸が痛いよ」


「しかし幸い学ぶ事には積極的な二人です。ここはどうでしょう尾方さん? いえ、Doでしょう尾方さん?」


「よく分かんないけど押し付けられてるのは伝わる。なんでここに来て少しテンション高めなの?」


「あ、いえ、すみません少し浮れてました。でも、尾方さんにお任せしたいのは本当ですよ。ほら、喧嘩って私もあまり経験ありませんし...?」


「ああ、うん、なんとなく分かるかな(ほとんど蹂躙で勝負にもならないんだろうな)」


「?」


「まぁ、あれだ、どうなってもいいならおじさん任されるけどいいかい?」


「頑張ってください。勉強させていただきますね」


清に背中を押され、尾方は渋々と語る。


「いいかい二人とも。喧嘩っていうのはね。理由や責任、使命ではなく。感情から起こる人間間の衝突のことなんだよ」


「感情から起こる衝突?」


少女二人は疑問符を頭に浮かべる。


「そう、大事なのは感情。世の中には様々な衝突がある。立場の違いからの衝突、利権の取り合いからの衝突、天使と悪魔の衝突。そこには理由があり、責任があり、使命がある」


「でも喧嘩は違う、理由がなくとも。責任がなくとも。使命がなくとも。感情が示すままに、感情が指し示した相手と対立し、衝突する」


そこで小廻少女が手をあげ、尾方が手の平を向け発言を促す


「そ、それは流石に勝手過ぎますし、理不尽ではありませんか?」


「そのとおり、喧嘩とは身勝手で理不尽な衝突だ。基本的に当人たち以外には冷ややかな視線を向けられるものさ」


すると今度は姫子少女が手を上げる。


「そんなものしない方がよいのではないかの? そも普通に考えれば損しかなし。行わないのが普通では?」


「そうだね。ヒメが言ってる事は正しい。でもそうは行かないんだ。なぜならほら、人間には感情があるじゃない?」


尾方は胸の中心をトントンと叩きながら言う。


少女二人と若女将は静かに聞き入る。


「ここが許さないと決めたからには。立場は、利権は、使命は。そう、全て二の次。衝突する為の衝突。それが喧嘩なんだ」


「君達が喧嘩をした事がないのは、立場からか、利権からか、使命からかは知らないけれど。衝突に理由があったからさ」


「立場に縛られず、利権に目もくれず、使命も関わらない。しかし感情が揺るがす衝突は、純粋に人生の経験値に他ならない」


「これはおじさんの持論だけどね。喧嘩は子供のうちに沢山しておいた方がいい。それは、大人になったら出来ない事だからさ」


ここで尾方が気づく、そう、自分の世界に入って語りすぎていた事に、尾方は急にいたたまれない気持ちになり、こう付け加えた。


「さて、ここで問題です。私は何回衝突と言ったでしょう?」


「「「12回」」」


三人に即答され、尾方は普通にドン引きする。


「はい、終わり終わり。おじさん考えなしに喋るの疲れちゃった」


尾方は適当な文句でこの話題を終わらせようと踵を返す。


「いえいえ、勉強になりましたよ尾方さん。ほら、お二人もお礼を言いなさい」


「「ありがとうございました」」


「......」


青空教室かな?


尾方はますますいたたまれない気持ちになり顔を覆ってしまった。


そんな中年をさておき、少女二人は向かい合って話をはじめる。


「では、改めまして。私達も喧嘩をしようじゃありませんか」


「うむ、大体コツは掴めたぞ。感情のままに好き勝手やって良いとは気軽なものじゃ」


二人はお互いにせーのと息を合わせる。


「尾方さん! 清先輩の一番弟子の座を譲ってください! いざいざ勝負です!」


「ゆけ尾方! この小娘にお主の凄さを分からせるのじゃ! 尋常に勝負!」


「あれれ!? 長々と語ったのに話が全く進んでないぞ!!?」


少女二人の感情の発露は、大人尾方に立場と使命を与え。


二人の願いは見事に尾方に衝突した。


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