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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第五章「白星ルーザーと急襲アンダーグラウンド」
73/175

『今日はいい天気ですね』

前回のあらすじ


しーらない


尾方巻彦は困っていた。


おぼろげな視線を前に移せば、三人の少女がわいわいと賑やかにしている。


それだけ聞けば微笑ましい雰囲気だが、実際はそうではない。


その一人は戒位第三躯の大天使で、


その一人は悪の組織の総統で、


その一人は詳細不明の天使である。


その混沌なトライアングルの渦中、誰を中心に渦巻いているかと言うと、まぁ、この薄目で現実逃避してる中年のおっさんなのである。


「ええ!? 尾方さんの待ち人ってまさか清先輩!? といいますかいま『メメント・モリ』っていいました!?」


「ええい、尾方!! 何者じゃこやつは!! あと待ち人ってなんじゃ!! ワシに内緒で清と待ち合わせしとったのか!!」


「え? 尾方さん私を待ってたんですか...? じゃなくて、なんでめぐるさんと一緒に? 経緯を知りたいのですが?」


三人は思い思いにわちゃわちゃしている。


尾方は、空を見上げる。


「(天気の話とか...してぇなぁ...)」


なんか黄昏ている。もう色々駄目らしい。


しかしこのままでは事態は進展しない。


尾方は一呼吸すると気合を入れ直す。


そして思いっきり手を打ち合わせた。


破裂音が突然打ち鳴らされる。


虚を突かれた三人の少女は口が詰まり、一瞬静寂が訪れる。尾方はそこを見逃さない。


「発言は手を上げて!」


こいつ状況を舐めている。


全員が知り合いとはいえ、その見た目が見た目とはいえ、一触即発の状態なのだ。


ここに来て子供騙しにもなっていない挙手制など...


「「「ハイ!!」」」


三人は噛み付かんばかりの勢いで手を挙げる。


「はい早かった、清ちゃん」


尾方がすかさず一人指名する。


残り二人は悔しそうにぐぬぬと口を紡ぐ。


なんとかなってしまった。これはあれだからな? 私は間違ってなかったからな? こいつらがアレなだけだからな?


私の気も知らずに清は話を進める。


「ええっと、めぐるさんと尾方さんはお知り合いなのですか? あと...えと、私を待っていたというのは...?」


「小廻ちゃんとはさっき知り合ったばかりだよ。タバコ吸おうとしてたら注意されてね。待ち人がいるって言う事でここで一緒に待ってたんだけどまさか待ち人まで同じだったとはねぇ」


尾方の答えに清はホッと肩の力を抜く。


「ハイ次」


尾方が続けざまに言うと、


「「ハイ!」」


残りの二人が我先にと挙手する。


「はい小廻ちゃん早かった」


小廻は少し誇らしげに胸を張り、姫子は地団太を踏む。


「尾方さんと清先輩はどの様なご関係で? あとさっき悪魔の組織名が聞こえた気がしたのですが?」


「清ちゃんとはご近所さんでね。こんなおじさんに話しかけてくれる数少ない良き隣人だったわけ。今は...稽古とかしてる...師と弟子...みたいな? あと後半は勘違いデスネ」


「師と...弟子...!」


最後はぐらかされたにも関わらず、小廻は驚愕の表情を浮かべる。


「はい次」


「ハイ!」


一人になっても懸命に挙手する姫子。


「ハイ、ヒメどうぞ」


「なんでワシが最後なのじゃ! 少しは贔屓せい贔屓を! ところで...えと、ワシはなにを聞くんじゃったかな尾方?」


「未回答で」


「クイズじゃないわ!!」


「座布団持ってって」


「ボケとらんわ!!!」


二人がいつもの漫才をしている内に清と小廻が話しはじめる。


「清先輩...本当なんですか? その、弟子と言うのは...?」


なぜか神妙な趣で小廻は言う。


「え? ええ、っと、少し違うけれど。まぁ、私がお願いして。そんな感じになっているっていうか...なんと言うか...?」


清はなんとも歯切れが悪い。まぁ、説明のしようもないのはわからなくも無い。


悪アレルギー克服のために権能晒して稽古をつけているなんて仕事仲間にはとても言いづらい事だろう。


しかし、今回の問題はそこではなかった。


「その手がありましたか...!!」


悲痛の表情で小廻は膝から崩れる。


心からの慟哭に漫才中の二人も驚いて顔を向ける。


「弟子...! 清先輩の弟子なんて...! 素敵過ぎます...!! 私も一番弟子名乗りたかったぁ...!! しかも清先輩から頼まれてなんて...! そんなの実質...! バディ...! パートナー...!」


話しが在らぬ方向に向いている。


尾方は寒気を感じてこっそりこの場から去ろうと足を忍ばせる。


しかし、


「尾方さん! 尾方さん勝負です! 一番弟子をかけて私と勝負してください!」


ビシィ! っと指で指され、尾方は顔を覆う。


「私は小廻めぐるです。私は小廻めぐると言います。私の全身全霊をかけて、貴方には負けられません」


後ろから感じる壮大なオーラを背中に感じながら、尾方は携帯を取り出し、適当に目に止まった主治医にメールを送った。


「今日はいい天気ですね」


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