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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第五章「白星ルーザーと急襲アンダーグラウンド」
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『経営方針』

前回のあらすじ


総統って実際どのくらい偉いのかは知らない



「はい。と言うわけで紆余曲折ありましたが、これよりメメント・モリの定例会を始めるッス。進行、書記、記録は引き続き私さんこと葉加瀬技術顧問がお送りするッス」


ホワイトボードの前に立った葉加瀬がペンを持ちながら挨拶をする。


姫子がうむうむとなにか納得するように頷いている。肩書きに随分ご満足らしい。


そんな事は気にせずに葉加瀬はホワイトボードにつらつらと文字を浮かべる。


「さて、今回の議題はこちら。ずばり『今後のメメント・モリの活動方針について』ッス。まぁ当たり前ッスけど、数もそこそこ、アジトも手に入れた我々が皆別々の方向を向いていたんじゃ組織として成り立たないッス。そこで今回、今後暫くの組織的な方針を決めておき、皆々様にはその方針に沿って各々動いてもらう事になるッス」


話を一通り聴いた後、國門が手を上げる。


「話を遮ってすまん。一ついいか?」


「もちろん、どうぞッス」


葉加瀬は手の平を國門に向けて発言の続きを促す。


「方針でいいのか? まだ始まったばかりの組織だ。幹部一人一人にぐらいは指示を出して総括したほうがいいんじゃないか?」


「はい、もっともなご意見ッス。その点については姫子さん...いや、総統からご説明いただくッス」


葉加瀬は今度は手の平を姫子に向ける。


姫子はこほんっとワザとらしく咳払いをして口を開く。


「いやなに、そこについては簡単な話なんじゃ。ワシは組織運営について全くの初心者じゃ。だが幸い皆は違う。そこで方針だけ決め、後は各々の判断で組織の為に動いてもらった方が良いと考えたんじゃ。後々の為にワシはそこからいろいろ学ばせて貰いたいと思う」


姫子の返答に、一同はほうっと感心の息吹を吐く。


國門は少し考える素振りを見せたが、すぐに頷いて言う。


「まぁ、集まったばっかりの面子にそこまでの信頼は寄せるべきではないと思うが、ちゃんと考えてるんならよか」


そして葉加瀬が皆の納得を察して話を前に進める。


「ではでは早速皆々様の意見を募りましょうか。どなたからでも構いません。意見のある方はご自由に発言くださいッス」


葉加瀬に促され、一同は目を合わせる。しかしその視線は少しして、自然と一人の老人に集まった。


やれやれと肩を竦めた最年長は口を開く。


「えー...いいかな?」


「おお、替々相談役! どうぞッス」


待ってましたとばかりに葉加瀬が発言の続きを替々に促す。


「まぁ、有り体だが兎にも角にもまずは体勢をモノにするところからだろうね。我々は今、バスケットボールで言うところのリバウンドを先んじたに過ぎない。手の内のボールが離れてしまわない様にしっかり掴み込まなくてはいけないのだ」


「ほう、といいますとあれッスか? 一旦は防衛に専念して、物資とか人員補給とかに当てるとかッスかね?」


「いや、正しくはその段階にまでも我々は達していない。まず何よりも先んじてするべきは主張さ。ここが誰のモノで我々はナニであるか。我々を我々であると世界に知らしめる事。これが最優先事項だろうね」


替々は涼やかな顔でつらつらと言葉を繋ぐ。姫子はこれをまた必死にメモしていた。


すると、今度は搦手が手をあげる。


「おじいちゃん、少しいいかしら?」


「もちろんさ。搦手特務大使殿」


「言いたい事はわかるのだけど、それだとやる事がイマイチ掴めないんじゃないかしら? 我々はなにをすべきなの?」


「それはさっき総統殿が話された通りさ。各々が各々動くのであれば、これぐらい不明慮な方針の方が個々人の特性が出る。いや、差が出るんだよ」


「あら、それは...面白いわね」


搦手は少し考えたがすぐに口角を上げて応じる。


それに替々も満足そうに頷いた。


「ええっと、すみません少し状況が読み取れなかったのですが? 方針ってどうなったんスかね?」


「ああ、失礼。ちゃんと言葉にしよう。私が提案する方針はこうだ。『メメント・モリをメメント・モリとすること』この一点に限る。この言葉の感じ方、それによる動き方は個々人に委ねる。これでどうかな?」


一同は少し考えるように口を紡ぐ。


そして納得するように各々頷く。


「まぁ、これぐらい自由の方がやり易いわな。俺は俺のやり方で差を出させて貰うわ」


國門が息巻く。


「そうね。そもそもこのバラバラなメンバーが一致団結って難しそうだもの。私は私のやり方で総統、姫子ちゃんを立てるわねん♪」


搦手が浮き足立つ。


「ま、どんな方針になった所で私さんのやる事とやれる事は決まってるッスからね。まぁやれるだけやってみるッスよ」


葉加瀬が肩を竦める。


「いやはや、皆がこの言葉をどの様に受け取ったのか。提案しておいて少し心配ではあるね。まぁ、私は精々よりよい出目が揃う事を祈るよ」


替々が嘯く。


「いや! 素晴らしい方針じゃ! 皆々! 存分にメメント・モリを盛り立ててくれ!」


姫子が勢いづく。


「.........」


尾方が寝ている。


兎も角、ここに新生メメント・モリの方針が決定した。


この方針になにを思い、なにを為すのか。それは個々人の中にのみある。


そしてこの方針がこの組織を生かすか殺すのかも。


実はこの時、決まったりしていたのだ。




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