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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル」
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『三顧の礼さえ断れる筋力』

前回のあらすじ

新しく搦手が仲間に加わった!


ところ変わらず尾方達。


一行は新たな協力者、搦手を引き連れアジトを奥へと進んでいた。


「もう、信頼してよん。私達、仲間でしょ?」


ついさっき無理やり仲間になったばかりの搦手が、これでもかとワザとらしい猫撫で声で尾方に語りかける。


「信頼はしないけど信用はしてあげるから今はそこで譲歩してよ。どう考えても怪しすぎるってば」


尾方は片手で頭を抱えながら早足で絡んでくる搦手を引き離す。


それに負けじと搦手も歩幅を広げる。


「まぁ、今はそれでいいかしら。それより現状把握してる情報交換をしましょう?」


搦手はその場でクルリとターンをし、話題も変える。


「まずは信用を勝ち取るためにも私からね。私達、睦首劇団の今回の目的は、貴方との接触、及び同盟の締結。私は手勢を率いて貴方の行き先をリサーチ。先回りしてこのアジトに到着。でもなんか先客がいたから喧嘩売って暴れてたって感じかしら」


「目的忘れるの早くない...?」


尾方は呆れて溜息を吐く。


「ほら、今度はそっちのお話を聴かせて頂戴?」


搦手はお次にどうぞといった風に、手の平を上にして尾方に向ける。


「(さて、どこまで話していいものか...)」


「どこまでも行きましょう?」


「モノローグ読まないで?」


困った尾方は視線を後ろに流す。


そこに飛んでいるドローンの主に助けを求めているのは明確である。


空気を読んでドローンが尾方に近づく。


「メメカちゃん...! お願い出来る...!」


「えー、私さん係わり合いになりたくないからワザと口を閉ざしてたんスけど...」


「そこをなんとか...! この辺の線引きはおじさんには酷なんだよ...!」


「大げさッスねぇ、こっちも大した情報持ってないんスし、全部言っちゃっても大丈夫ッスよ」


「......メメカさん!」


「...ハァ、...今度私さんの買い物に付き合ってくれるなら考えなくもないッスよ」


「やるやる! 荷物もちでもサイフ役でも頑張っちゃうから!」


「...交渉成立ッスね」


中年の悲壮な願いにJKが応える。


ドローンは早速尾方の前に出る。


『あー、あー、突然失礼するッス搦手さん。私さんは葉加瀬 芽々花。メメント・モリに技術提供している者ッス』


「あら、ご丁寧にどうもありがとう葉加瀬ちゃん。搦手よん。メメント・モリの協力者同士仲良くしましょう♪」


突然の知らぬ存ぜぬの声にも搦手は平然と対応する。


「はい、どうぞよろしくッス。ここからは尾方のおっさんに代わりまして、勝手ながら現状の情報開示を私さんが務めさせていただくッス」


「全然構わないわよ。誰にでも得意不得意あるものね」


搦手は快諾する。


葉加瀬は、差し障りのない部分。組織の目的や今回の作戦の内容、組織復興の経緯などを搦手に語った。


その際、現組織の構成やメメント・モリの壊滅に関する情報など、後に交渉のカードになりそうな情報は伏せて伝えた。


「なるほどねん。大体流れは分かったわん♪」


一連の情報を、搦手は吟味するように傾聴した後、そう満足そうに言った。


「貴方みたいな人が裏にいるならひとまずは安心かしら、正直その辺りは心配だったから」


本当に安心したように搦手は一息つく。


「ご納得いただけたようでなによりッス」


ふぅっと葉加瀬も同じく一息つく。


「メメカちゃんお疲れ様。大変助かりました」


そそくさと尾方がドローンの後ろから出てくる。


「全くッスよおっさん。こういう事も少しづつこなせる様になってくださいね?」


「それ私も思ったわ。任せっきりは良くないと思うの。もうベテランなんだから弁舌も多少は出来るようにならないと」


尾方は静かに悟る。


「あ、こういう時僕を責める役が一人増えた」と。


尾方が達観の眼差しを虚空に向けている時、


なにかに気づいたように搦手がドローンに話しかける。


「あ、そういえば直近のことだから教えて欲しいんだけど。襲撃してきた天使についての情報ってある? もしかしたら私の組織の情報で割り出せるかも」


「あー、それには及ばないッスよ。既に名乗りを聴いてるッスから。確か戒位二十九位。筋肉の天使、筋頭 崇って言うマッチョッス」


その名前を聴いたとき、これまで平静を装ってきた搦手の眉がピクリと揺れた。


「そう、よりにもよって...向こうもかなりキテるってことね」


眉間に手を当てて、首を横に振る搦手。


「ど、どうしたッスか搦手さん? なにか知ってるんスか?」


搦手は顔をあげて言う。


「大天使って知ってるかしら?」


「は、はい...戒位十位以下の天使側の最高戦力ッスよね...?」


「そう。味方にも天災として恐れられる化け物共。それが大天使十躯」


無論、尾方達は知っている。


尾方に関しては、その片鱗を味わっている。


「それで、その大天使がどうかしたんスか? 件の天使は二十九躯ッスよね?」


搦手はそこで一呼吸置く。


「三回よ」


「へ?」


「筋頭崇、彼が大天使への昇級要請を断った回数よ。...彼は、実力だけなら間違いなく大天使級に匹敵するわ」


固まる一行。


その時、おあつらえ向きにアジトの奥から、鈍い爆発音の様な音が響いて来て、かの者との再戦を予感させた。



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