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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第四章「隻腕アヴェンジャーと奪還キャッスル」
44/175

『ここで装備して行くかい?』

前回のあらすじ

JK、フュージョン



「本邦初公開! これが私さん達の権・能・! 命名私さん! 【遊戯脳(メガドライブ)】ッス!」


葉加瀬 芽々花


権能【遊戯脳(メガドライブ)


能力...


...なにそれ?


知らない知らない。


付与した記憶が無いんだもん...?


これはアレか?


つまりは彼女、葉加瀬芽々花は先天的な権能保持者というわけか。


まぁ、私が先天的なんて言うのは可笑しな話だが、間違いないだろう。


そうか、可能性としては示唆されていたが実際に存在したのか。


これは面白い。


是非耳を傾けよう。


世界から()()()、その力について。



「ど、どういうことじゃ!? ハカセ! テレビの中にもう一人ハカセがおるぞ!」


姫子は尾方の袖を引っ張って驚きの声を上げる。


引っ張られてガクンガクンと揺れる尾方は別のことが気になっているようである。


「メメカちゃん、今、権能って...?」


葉加瀬は顎に手を当てて考えるようなポーズを取る。テレビの中の葉加瀬も全く同じポーズで続く。


「実際の所は不明なんスけど、そうとしか言い様がないんスよねー。自分自身、悪魔になった記憶はないんスけど、あるものはあるというか...いつの間にか得た不思議な力って感じッス」


本人の所感はそんな所のようだ。


まぁ間違ってはいないが、もう少し貴重なものだよそれは。


「という事は、メメカちゃんは悪の神に権能を貰った悪魔ってわけじゃないのかい?」


尾方が慎重に確認する。


「そう言うことになるッスね。この力自体、権能とは全く別のなにかって可能性もあるッスし。でも、現状それ以外に言い様もないので借りてるッス」


その言葉を聴いて、尾方は安心したように一呼吸する。


「そっか、だったらいいんだ。この事ほかに誰か知ってる?」


葉加瀬は二人で首を横に振る。


「これは私さんのトップシークレットッス。両親だってこの力の事は知らないッス」


すると尾方が不思議そうに言う。


「それは...なんで教えてくれたんだい?」


葉加瀬は二人を見据える。


「一つは、誠意ッス。ここに置いて貰ってる事への少なからずの誠意。そしてもう一つは、必要だったからッス。話を戻すッスけど、おっさんの義手の完成にこの能力が必要不可欠なんス」


葉加瀬は義手を前に掲げる。


「私さんの権能【遊戯脳(メガドライブ)】の能力は、【電子世界に()()()()()()さんが存在している】能力ッス。電子世界の私さんは、こちらに来る事は出来ないッスが、電気を通じてこちらの世界に干渉する事は可能ッス。つまり...」


葉加瀬が義手をテレビに近づけると、バチッ!と音がして電流がテレビから義手へ走った。


「この義手を、内側から操る事が出来るんスよ。あー、分かりやすく言うとポケ○ンのロ○ムッス」


葉加瀬の手に持たれた義手が動き出し、ピースの形を取る。


それを見た姫子は興奮を抑えずに言う。


「すごい! すごいぞハカセ! 並外れた技術力だけでなくこんな事も出来るとは! ハカセが協力者で本当に頼もしいぞ!」


葉加瀬は義手で自分の頭を掻きながら照れる。


「いえいえ、それほどでもないッスよぉ。偶然持ってた権能ッスからぁ」


そしてチラッと尾方の方を見る。


尾方はなにか考え事をしている様子だったが、その視線に気づくとニッと笑い。


「本当だね。頼もしい事この上ないよ。教えてくれてありがとうメメカちゃん。おじさんもその誠意に応えられるように頑張るよ」


と言うので、葉加瀬はますます照れた。


そして尾方はこう続ける。


「ただ、その能力の事はもう誰にも教えないようにね。悪の神に付与されていない権能なんて、物珍しがる輩も多いだろうからさ」


尾方は虚空とジッと睨み付ける。


ああ、はいはい、私の事ですね。


わかったわかった手出ししないよ。用心深い奴だなもう。


「了解ッス。そも得体の知れない権能ッスからね。私さんも慎重を期すに越した事はないと思うッス」


うんうんと義手も頷く。


「うむ、ワシも誰にも言わないと誓おう。誠意には誠意じゃ」


姫子もハイ!っと手を上げて宣誓する。


「ありがとうございますッス姫子さん。では、早速これをおっさんにドッキングするッスかね。ほらおっさん、左手出して」


尾方は促されるままに左手の付け根を出す。


「ほい、ではドッキン! 後は任せたッスよ私さん」


義手は尾方の腕の付け根にがっちりホールドされ、電子音と光が義手全体に広がった。


「ええっと、おじさんこれどうすればいいのかな? 勝手に動いてくれるの?」


尾方は接続部を恐る恐る見ている。


「いえ、おっさんが動かしたい様に動かしてOKッス。おっさんの脳の電子拾ってその通りに私さんが動かすので」


尾方はおっかなびっくりに腕に力を入れてみる。


すると、尾方が動かそうと思った通りに義手は拳を作った。


「えええ...? 本当に動いたんだけど? 凄過ぎない?」


それを見て葉加瀬は満足そうに頷く。


「多少のラグはあるんで今までの腕の感覚で使うと危ないッスけどね。あと一応、対天使でもある程度耐えられるぐらいの耐久度で作ってあるッスけど、基本戦闘では使わないでくださいね。壊れたら修理が大変ッスから」


尾方は再度腕に力を何度か入れると答える。


「うん、確かにこれは戦闘用じゃなさそうだ。でも大いに助かるよメメカちゃん。本当にありがとう」


尾方は義手を使って親指を立てて見せる。


それを受け、葉加瀬は笑顔で応える。


「いえいえ、お役に立てた様でなによりッス。あとは...ハイこれもッス。義手の材料の余りで作ったありあわせッスが」


葉加瀬の手には、丸みを帯びた鉄のプレートの様なものがあった。


「うん? メメカちゃんこれは?」


尾方は受け取り、それを観察しながら質問する。


「...肘の防護プロテクターッスよ。天使相手だと青痣じゃすまないッスからね。しっかり防護するッス」


尾方は肘に貼られたシップの事を思い出しフフッと微笑んだ。


「ほんと、気づくって大変だねメメカちゃん。ありがとう甘やかせて貰って」


「全くッスよ。今度からは自分で気づいて依頼するッスよ。自分の身体なんスから」


葉加瀬はそっぽを向いてそう応えた。


二人の様子を見ていた姫子はうんうんと頷く。


「さて、葉加瀬そろそろかのう」


頃合を見計らったかのように姫子が口を開く。


「そうッスね...私さんの装備はこれで全部ッス...あとは...」


ゆらりと葉加瀬が立ち上がる。


尾方は嫌な予感がしたので、この場から颯爽と離れる事にした。


「じゃ、じゃあ、おじさんは急用を思い出したので失礼しま――」


尾方が挨拶もそこそこ部屋から出ようとしたその時、


ガッ! と義手が部屋の入り口の角を掴んで放さなくなった。


「な!? 義手!? 裏切るの!?」


「裏切るも何もその義手は私さんでありますから...」


尾方の背後に葉加瀬が現れる。


その手には、様々な男物のスーツやズボンが掛けられていた。


横に並ぶ姫子も同じである。


「ヒメ? メメカちゃん? その服は君達には似合わないんじゃないかな? 男物だし...」


尾方が恐る恐る言う、


「尾方には似合うかもしれないじゃろ!!」


「観念して着せ替え人形になるッス!!」


「パージ! 義手! パージ!!」



元応接室は、それから暫く、中年の悲鳴と少女の喜ぶ声が響いた。



『ここで装備して行くかい?』END

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