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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第三章「中年サヴァイヴァーと徒然デイズ」
32/175

『授業参観』

前回のあらすじ

中年、事案(二回目)

 ①


「まぁそりゃ、育てられた覚えがありませんからねぇ。僕、師匠から拳法以外全く教えて貰えませんでしたし」


 尾方は闖入してきた替々にも動じることなくサラっと返答する。


「あら冷たいなー尾方は。姫子ちゃんもそう思うだろう?」


 替々は尾方から姫子へ回答者を素早く変える。


「おっしゃる通りじゃ! 尾方は冷たい!」


 地雷を踏み抜かれた姫子は尾方にトゲトゲしくあたる。


「あらら、二対一か。旗色白くしないとこりゃ」


 尾方は旗色が悪くなるとすぐ白に塗りつぶす男である。


「まぁ、贔屓目に見ても今回は尾方が悪いね。君自分の過去は一切語りたがらない癖に人にはお構いなしなんだもんなー」


 替々は追撃の手を緩めることはしない。


 姫子もそうじゃそうじゃと替々の影にすっかり隠れてしまった。


「いや、別に過去を詮索するつもりは...ていうか先に聞いて来たのはヒメだったような...?」


「ま、そんな話はどうでも良いんだがネ! さ、尾方、修行の時間だよ」


 尾方がマゴマゴしているとそれをスパッと切って替々は本題を通す。


「な! 大叔父様! まだ少し姫子の時間が残っておるのじゃ!」


 大叔父様の影に隠れていた姫子が慌てて出てくる。


 替々は悪い笑顔で言う。


「まぁまぁ、このまま時間を延ばしても喧嘩するだけかもだしぃ。今日はいいんじゃないかなぁ?」


「だ、駄目じゃ駄目じゃ! 仲直りする! 尾方とワシはまだまだ話せる!」


 姫子は慌てて尾方に駆け寄り握手をすると、それをブンブンと強く縦に振り回す。


 尾方はされるがままに肩から振り回される。


「まぁまぁ、今回は特別に私達の修行見学してもいいからさぁ」


「本当ですか!? それなら話は別じゃ!」


 替々が代案を出すと姫子はそれに飛びつく。


 すると逆に今度は尾方が渋い顔をして言う。


「えぇ、師匠勝手に決めないでくださいよ。気乗りしませんよ僕ぁ」


「そこじゃ! なぜ尾方は頑なに修行の様子を見せてくれないのか!」


 そう、実は尾方、この一週間、初日から姫子に修行の様子を見たいとせがまれていたが、


 様々な理由を付けてはそれを断り続けていた。


 尾方は頭を掻きながらいう。


「おじさんとお爺さんの修行なんて見てて楽しいモノでもないでしょう。それに、おじさん集中力ないから気が散って修行にならないかもだし」


「誰がお爺さんだ誰が」


 尾方は連日の通り今日も様々な理由を付けて見学を拒もうとする。


「戦闘員の能力把握もボスの仕事じゃろう! 大叔父様からも何か言ってやってくれ!」


 姫子が替々に助け舟を要請する。


 すると替々は尾方の方を見る。


「尾方も本当の事を言ったらいいのに。そうしたら納得してくれるかも知れないよ」


 替々が促すが、尾方は渋い顔をする。


「簡単に言いますけどね師匠。僕には結構重要な所なんですよ」


「まぁ、気持ちは分かるけどねぇ」


 替々もふむっと考え込んでしまう。


 置いてけぼりの姫子は不満顔である。


「なんじゃ尾方! なにを隠したいのじゃ! なんでワシには言えんのじゃあ!」


 姫子がごねると。


 替々がポンッと手を叩いて言う。


「そうだ。じゃあこうしよう尾方。今日は別のメニューにしよう」


「別のメニュー?」


 尾方が予想外の提案に怪訝そうな顔をする。


 替々が続ける。


「そう、別メニュー。姫子ちゃんに手伝ってもらって初めて出来る特別メニュー。いいよね? 姫子ちゃん?」


「無論じゃ! 是非手伝わせてくれ!」


 姫子がはしゃぐ。


「ちょ、ちょっと待って頂戴よ。まだおじさんは良いって一言も...」


 尾方の言葉を途中で替々が遮る。


「大丈夫、今日やるのは隻腕の君に体の使い方を叩き込む訓練だ。いつもみたいに、()()()()()()()ても済むようにするさ」


 最後のほうの言葉を姫子に聴こえないように小声で言う替々。


 それを聞いて、尾方は渋々同意する。


「少しでも僕が危ないと思ったらヒメにはやめて貰いますからね」


 そういうと姫子を促して庭に向かう。


 少し遅れて替々がその後を追う際、


「危ないって言うのは、修行内容がかな? それともキミがかな?」


 と意味ありげににやけ顔で呟いた。



『授業参観』END

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