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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
171/175

『一家団欒』

前回のあらすじ

 家電は殴ると直るらしい。


 ①


 バチッと稲妻を纏った右腕を悪道総師が横に薙ぐ。


 すると其処に無機質な巨大な壁が出現し、迫り来る尾方の波を塞き止めた。


「ぐッッッ!」


 構わず死した自分を踏み台に跳躍しようとした尾方の身体を。


 巨大な棘が貫き殺す。


 棘は巨大な壁から一瞬で生成されていた。


 六回。


 そこから生き返った尾方が微動だに出来ず刺殺された回数。


 たまらず尾方は一旦離れた場所に蘇る。


「よう」


 しかしその目の前には悪道総師が立っており、反射的に繰り出した尾方の拳をいなし。


 返す手で尾方の首を掴むと軽々と持ち上げる。


 そして一瞬尾方に電流を流して筋肉を弛緩させると、四肢の腱を雷電で焼き切った。


 咄嗟に舌を噛み切ろうとした尾方を悪道総師は電圧で制する。


「おいおい、いつの間にお前はその一線を越えたんだ?」


「親の……見ぬ間に成長するのが……子供ってものですよ」


「自死を躊躇なくする様になる事が成長なものかよ」


 余りにも鮮やかに尾方を制した悪道総師は無表情で言う。


 尾方の視線が一瞬揺れる。


 すると追撃もせず悪道総師は溜息混じりに首を横に曲げた。


 そこを鋭利な手刀が勢い良く通り抜ける。


「総次、変わらんなお前は」


 手刀を放ったのは『転覆の悪魔』悪道替々。


 本名を悪道総次(あくどう そうじ)と言った。


 その左手は尾方巻彦を掴み、権能『引かれ者の小唄(アンダードッグ)』で己が手に天使の膂力を宿していた。


 しかし。


「相性悪いってお前と儂じゃ」


 悪道総師が尾方巻彦に流した電気が悪道替々を駆け巡る。


「ッッッ……!」


 替々は歯を食いしばり、感電したまま悪道総師を蹴り付ける。


 すると悪道総師はあっさりと尾方から手を離し、下駄の音を鳴らしながら二、三歩下がりこれを躱した。


「おいおい、お前もらしくないじゃないか総次」


 替々は尾方を後ろに隠しながら息を整える。


「……弟子の影響かもネ」


「ほお、興味深いな」


 替々は油断なく半身に構えながら尾方をがっちりと掴む。


 そして身体で隠した右手でハンドサインを送ると國門が悪道総師の死角に周るように動いた。


 しかし次の瞬間。


 ドガァしゃぁぁぁぁぁ!!


 國門の足元に瞬時に巨大なクレーターが出来た。


 見ると國門の肩の部分に巨大な銃弾がきりもみしている。


「……やっぱりか」


 替々は恨めしそうに遠方のビルの屋上に光るスコープの反射光に目をやる。


「初めからグルだったんだネ。宗吾兄も」


 狙撃と言えば記憶に新しい。


 やはりその主は戒位第七躯、『悪魔の天使』、悪道宗吾で間違いなかった。


 替々は吐き捨てる様に言う。


 「また私だけ仲間外れか」


 「誘えば乗るのか?」


 「いやだね」


 替々の返答に悪道総師は苦笑しながら片手を薙ぐ。


 「ししょ――」


 瞬間尾方が口を開いたが同時に替々は尾方を前方に放り投げる。


 バチッッッッ!!


 飛来する強烈な光源に負けない破裂音の様な音が響き、投げ出された尾方が一瞬で炭化する。


 響いた音がビルに反射されて帰ってくる頃、尾方は不満そうな顔で替々の後ろからスッと姿を現した


 「なにか言おうとしたかな尾方?」


 「……自分を盾にしてくれって言おうとしました」


 「私にそんなこと出来ないよ」


 「しっかり出来てましたよ?」


 二人は二言交わすと悪道総師に向き直る。


 悪道総師はまたため息を一つ漏らした。


 「儂と宗吾相手に満身創痍の悪魔集団、状況は詰みに近いと思うが?」


 尾方と替々は一瞬顔を見合わせて言う。


 「すんません、師匠から諦め方は習って無くて」


 「うん、教えてないネ」


 悪道総師は肺の空気を吐き切る様なため息をもう一度吐く。


 すると加えて尾方が一言。


 「親父にも習ってませんし」


 悪道総師はピクリと眉を顰めると、目頭を抑えて言った。


 「今から教える」


 悪道総師は身動き一つしていなかったが、空気がばちりと震えた。


『一家団欒』END

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