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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
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尾方巻彦の誕生日(2日目)

閑話休題


本編に関係ありそうでないそこはかとある幕間


「『誕生日おめでとう』は? ヒメ?」


「お主の誕生日は10月14日じゃろうが尾方」


「ああ、それは『あっち』のおじさんの誕生日だよ、僕は今日なの」


「その話長くなる?」


「まだ始まってもいない話題に飽きるのやめてね?」


「まぁ、お主が今日を誕生日だと言うなら祝うのもやぶさかではないが、今じゃないと駄目なのかの?」


「誕生日は当日に祝ってなんぼでしょ?」


「いや、違う違う、ワシが言う今って言うのは本編のタイミングの話じゃよ。少し考えたらこのタイミングでワシと尾方が居間で100%寛ぎながら中身もなく駄弁る絵面って本編の流れを遮ってないか? 大丈夫なのかの?」


「僕の誕生日の話題が中身がないだって?」


「キレるなや」


「まぁ、いいんじゃない?」


「じゃあよいか」


「37歳だってさ」


「長澤まさみと同い年じゃな」


「おじさんのおじさん営業を妨害しようとしてる?」


「冷静に考えてそんなにおじさんかのう37歳」


「あー、いいのかな? 回したよ敵に。全ての37歳を」


「おじさんに見られたい派は少数派じゃろ」


「代わりに少数精鋭だから我々は」


「おじさん扱いされたいプロフェッショナルが集まっておるのじゃな」


「誇りを持っているからね」


「叩けばじゃんじゃん出るわけじゃな」


「埃の話してる?」


 

「「次回」」

第八章「月白(げっぱく)エンジェルと鈍色(にびいろ)フール」


 

「いまもしかして適当に話を切る為だけに次回予告流した?」


「うむ、だが真摯にやった。嘘偽りはないぞ」


「ネタバレしたってこと?」


「そんな事よりも誕生日おめでとう尾方! めでたいのう!」


「ありがとうヒメ! 無難に嬉しいなぁ!」


「ズバリ37歳の抱負をどうぞ」


「更新を三か月空けないことかな」


「作者はいまこの文章どんな気持ちで書いてるの?」


「自戒の念にまみれてるよ」


「「次回」」


「自戒ね?」


「誕生日プレゼントをやろう尾方」


「おお、なにかな?」


「朝は四本、昼は二本、夜は三本なーんじゃ?」


「エナジードリンクじゃん」


「正解は人じゃ」


「いらないよ?」


「これこれ、遠慮するな」


「配慮だよ?」


「なんじゃ要らぬのか」


「参考までに聞いていい? 誰?」


「誰がいい?」


「あ、受注生産なんだ……」


「しかも産地直送じゃ」


「人が畑から産まれてくると思っているタイプの子?」


「コウノトリが運んで来るのじゃろう?」


「うんうん、そうだよ」


「尾方のコウノトリは誰かの?」


「ホラー演出やめてね」


 


「しっかし誰も来んのう。折角尾方の誕生日だと言うのに。脊髄で会話するのも疲れたんじゃが」


「適当の極致みたいな会話だったもんね。結局誕生日プレゼントくれないし」


「では、買いに行くか尾方。ついでに外で皆を集めようぞ」


「煙草でいいよヒメ。近くのコンビニで買おう」


「駄目じゃ駄目じゃ! 健康に悪い!」


「へーい、へい」


 

 


 外だ。

 

 みんみんと、蝉がせわしなく鳴いている。


 意味もなく急かす様に。


 意義もなく急かす様に。

 

 

 尾方は昼下がりの逆光に目を細め。


 徐々に慣れて来た眼を開ける。

 


 そこに悪道姫子の姿は無く。


 幾何学模様の箱を持った陽炎の様な影が。


 日陰にも関わらず漂っていた。

 


 「……はぁ、誕生日ね」


 尾方は悟ったように言うと、ゆっくりと煙草に火を点けた。


 煙草の煙が不自然に揺れる。


 『あの日』とは違う。


 たった一人の男は零す様に呟いた。


 「ただの1回、僕の人生に」


 陽炎が静かに揺れ、空気を揺らした気がした。


 

 おめでとう。


 


 『尾方巻彦の誕生日(修正済み)(n日目)』




本編へ続く

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