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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
162/175

『善と悪』

前回のあらすじ

 再会

 ①

 

 私は自分の顔を軽く足でリフティングすると目が回る前に首にくっ付けた。


 「――――――――――」


 「おいおい、無言は傷付くな。久々の再会に一言ぐらいないの?」


 予測通りとはいえ、無言は流石に味気ないので私は彼に言葉を促す。


「――――――何故顕現を?」


 するとなんとも味気ない言葉が返って来た。


「それ、往年の想い人へ向ける再会の言葉?」


「――――――――」


 柔らかな無機質な翼を僅かに軋ませながら、善の神は顔を上げる。


 それは朗らかな笑顔だった。


「――――――失礼しました、照れてしまいまして」


「神に成ってもその辺りは変わらんのね?」


「――――――はい。しかしまた何故その姿で? 最近は私の姿を模した姿見を使って顕現してませんでしたか?」


「んー? 挑発?」


 そう、私は今回の顕現の姿見に生前の私を模した姿を選択していた。


 即ち『大怪僧【往生仏陀】の終さん』だ。


 驚いた?


 え? 知らない?


 八面玲瓏(はちめんれいろう)の名を欲しいままにした。赤髪長身流し目美女の『三千世界大僧正』をご存じない?


 トレードマークのこの大量の数珠と溢れんばかりの十字架を見てもご存知ない?


 ご存じない。


 そう。


「――――――師匠は聡い人だ。その挑発が自分に対して悪しく転じると分からない訳ではないでしょう?」


「うん、そだねー。正直怒りに任せて君が暴れ出したら私には対処の仕様がないよ」


「――――――では何故?」


「気に食わないからだけど?」


 その悟った様な様相が。


 その解った様な表情が。


 その理解した様な立ち振る舞いが。


 心底気に食わない。


 だから敵わなくても、叶わなくても、思想をぶつける。


 別に、それだけの話だけれども。


「――――――貴女は、聡い人間だった」


「そうかも? 努めてはなかったけれどもね」


「――――――なぜ貴女が夜にそこまで顕現出来たかは分かりました。此処が終わった世界だからですね?」


「そだねー、此処は私達が定義した世界じゃない。だから彼方の世界に在りながら此方にも顕現出来る」


「――――――それは解りました。では、改めてなぜ顕現を? この人達は、貴女が全てを賭けるに値する価値があるのですか?」


 …………


 こいつ、ツマンネー話しかしないな。


 マジでつまらん。


 どうでも良いじゃんそんなん。


 気まぐれとはいえ今まさにあの私が目の前に居るんだぞ?


 愛の告白の一つでも出来ないのか?


 なんか腹立って来たな。


 もういいや。


 話題変えるか。


 あ、そうだ。


「――――――貴女は」

 

「お前ってまだ童貞なん?」


 

 ピシリ。

 

 空が。


 宙が。


 ソラが。


 硝子の様に割れた。

『善と悪』END

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