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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
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『十 終』

前回のあらすじ

 アンブッシュ


「――――――こんにちは」


 それはなんの前触れもなく顕れた。


 無機質な鋼の翼で柔らかく空気を撫ぜながら顕れた『それ』は、和かな笑顔で周囲を一瞥した。


 それの銘は九 一(いちじく はじめ)


 世界を支える二柱が一柱、善の神である。

 


 誰よりも先に動いたのは尾方巻彦。


 善の神と姫子の間に割って入る様に位置取りする。


 そして時点で動いた國門が姫子の傍に備えたのを耳で確認すると善の神に向かって突撃した。


 そして尾方の軽撃に反応して残りの悪魔達も波状のタイミングで地面を蹴った。


 その刹那。


「――――――『八咫鏡』、九 一の銘を以て想起する」

 

 空が。


 宙が。


 ソラが。


 硝子の様に割れた。

 

 参劫正装『八咫鏡(やたのかがみ)


 行動の過程を霞がかかるまで引き延ばし、結果を霧散させる空間を創造する善の神が正装。


 それは世界を上書く無心の規則。


 二度目の語りになるが、それは言葉通り。


 終わりを創る正装である。



 尾方巻彦は八咫鏡の効果範囲から逃れる為に瞬時に参劫正装を展開しようとした。


 しかし、純白の翼は舞わなかった。


 顕現限界。


 既に天使ではない尾方巻彦はかつて自分が司っていた正装の残滓を無理矢理遣っているに過ぎない。


 故に、1日の顕現時間に限界があるのだ。


 そしてここにはもう、色無染は居ない。


 つまり。


 終わりを回避出来る人間が居ない。


 最悪を想像したその想像そのまま。


 無心の空間は悪魔達を瞬時に呑み込んだ。


 ②


「――――――――――――」


 何も出来ない。


 出来るはずがない。


 此処は既に今まで存在した世界ではない。


 終わりの規則に則った世界の虚空。


 その中に存在する生命は概念的には死と変わりない。


 しかし、死とは生の過程に起因する結果だ。


 そう言う意味では、まだ死の方が有情だと言える。


 此処には何もない。


 存在だけがあり、結果は存在しない世界。


 とどのつまり。


 ここが行き止まり。


 意志に起因しない個々人の世界の終わりである。


 「――――――――」


 そんな場所で、善の神はほうっと柔らかく息を吐く。


 「――――――ごめんなさい、『もしも』がありますから」


 そして善の神は尾方巻彦に近づき、翼をばさりと羽ばたかせた。


 その翼は柔らかな質感のまま、鋭利な先端を創造する。


 断頭台の刃の様になったそれは、尾方巻彦の首に振り落とされた。


 此処では、生の終わりが死に結びつかない。


 つまり、尾方巻彦の『七転八起(トライアンドエラー)』が発現しない。


 尾方巻彦は、人の様に死を迎える。


 飛んだ首は、大きな放物線を描き、返り血で善の神を濡らした。




 「――――――――」


 違和感を感じたらしい。


 九 一(いちじく はじめ)は血に濡れた頬をぬるりと撫ぜた。


 相変わらず想定外には弱い様だ。


 彼は一瞬固まった後、逆さまになった私の顔と目を合わせた。


 「――――――十 終(つなし ついな)


 「今は悪の神の方が通りが良いんだよ九 一(いちじく はじめ)


 ふわりと柔らかな無機質な翼が大きく開かれ、それを遮る様に不格好な鉄の塊の様な翼が激しい金属音を鳴らして広がった。

『十 終』END

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