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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
154/175

『想起』

前回のあらすじ

 笑顔の意味


  

「はい、そこまで。皆さん注目してください」


 混沌とした場に現れたのは、見上天禄。


 彼はロータリーの中央の大時計に乗り、パンパンと手を叩いた。


「……貴方は八咫鏡から助け出してません。どうやって出て来たんですか?」


 色無は怪訝前回の顔で言う。


「生憎、私は一様直属の天使ですから。私の正装は元々は八咫鏡影響下でも問題なく行動する為のモノですので」


 見上の言葉の通り、正装『銀無垢』は過程を経ずに結果を反映させる正装。


 この原理は八咫鏡と逆であり、過程と結果の結びつきを強くする事で結果の起こりを無理矢理隆起させる正装。


 故に八咫鏡影響下でも問題なく行動が可能なのである。


 返答の内容が不服なものだったので、色無の機嫌が目に見えて悪くなる。


「それで、そんな善の神様お抱えの天使様がこんな所になんの用なんです? いま取り込んでるんですが」


「いやね、仲間割れは見逃せないんですよ。ほら、私って模範的な天使で売ってるじゃないですか?」


「天禄のは品切れ気味だけどね」


 尾方の茶々に見上の笑顔が一瞬固まる。


「えー、そこの悪魔さんのことはどうでも良いとして。貴女は聞き分けのある天使であられるでしょう?」


「…………」


 色無の反応は薄かったが、見上は正装を使い、色無を説得する言葉を休みなく送り続ける。


 貴女は、貴女が、貴女なら、貴女でも、貴女であれば、貴女であるから。


 「………………あー」


 ガンッ!!


 見上の居た時計が音を立ててひしゃげる。


 上に乗っていた見上は正装を使って地面に避難していた。


 色無はスイッチの切れた様に虚ろな瞳で呟いた。


 「今日、人と話すぎた……すごく、疲れた」


 それだけ言うと、色無は軽く尾方に手を振り、翼をはためかせ、ヨロヨロと飛び上がると、スタジアムの影に消えていった。


 その様子見届けた見上は、大きなため息を吐いて言う。


「はぁ、活動限界近くて助かった。大体なんで身内に苦労しないといけないんですか私が」


 するとその姿を見た尾方がにやけ顔で言う。


「流石は天禄、貸しでいいよ」


「やめてください悪魔と貸し借りなんて縁起でもない」


 心底嫌そうな顔をした天禄は正端清に歩み寄る。


「清さん。大丈夫ですか?」


 清は軽く頭を振って言う。


「ええ……大丈夫です。ご心配なく」


 まだ焦点の定まらない瞳で強がる清を、見上は心配そうに見つめる。


「あの番外天使に何を言われたかは知りませんが、気にしない方がいいですよ。ご存じの通り普通じゃないので彼女」


「分かってます……ただ」


 清の焦点が少しづつ定まりだす。


「見上さん、貴方は大天使の任に就いて長いですよね?」


「え? ええ、私は江見塚さん、瑠花さんに次いで3番目に長いですね」


「私の姉は……正端清望は、大天使でしたか?」


「…………あー、と」


 見上は気まずそうに目線を逸らす。


「なぜ私は願うでもなく天使になれたのですか? 何故新参者の私に()()()10躯ではなく3躯の席が用意されていたのですか?」


「いや、それは。貴女が、ほら、優秀ですから……」


「なぜ……不知火から。私の正装から、姉の声が聴こえるのですか?」


「……ッ」


 見上は一瞬躊躇った様な表情を見せたが、直ぐに目線を清に戻す。


 そして。


「戒位第5躯、見上天禄の銘を持って想起する」


 反射的に尾方が動いたが、見上はそれを正装を持って制した。


「正装の名を『不知火』」


 バチンッと空気が弾かれたような雰囲気が一瞬この場に流れ、清は糸が切れた人形の様にだらんとその場に力なく膝を付いた。


「清ちゃん!」


 血相を変えた尾方が清に駆け寄ろうとしたが。


 ヌルリと、踏み込む尾方の前に死の予感が充満した。


 反射的にバックステップをする尾方。


 項垂れた清の右手は、刀の柄に触れられていた。


 ザンッ!!


 尾方の足元に大きな刀傷が横たわる。


 寸での所で命を拾った尾方は、冷や汗を拭って前を見る。


「さて、二対一です。卑怯で申し訳ない」


 そこには大天使が二躯、ゆらりと佇んでいた。


「卑怯はこっちの専売特許なんだけどね」


 尾方の正装の稼働限界時間は、とうに過ぎていた。


『想起』END

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