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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
152/175

『挑戦者と失踪者』

前回のあらすじ

 真っすぐ行ってぶっ飛ばす



 「――――――――」


 善の神は筋頭崇を見る。


 天使を慈しむ様に。


 敵対者を睨みつける様に。


 人を見定める様に。


 隣人を見つめる様に。

 

 見て、観て、視て、看る。


 筋頭崇は善の神を見る。


 見る。


 ただただ見る。


 その行為にそれ以上の意味はなかったが、どこまでも結果が完結していた。


 ただ。


 ただただ。


 殴りつける。


 本来『殴る』は過程であり、結果を導く過程であるのだが、いま筋頭崇にはそれが結果で問題はなかった。


 そしてその有用性を善の神も理解していた。


 「――――――素晴らしい、貴方は私の理想そのものです」


 先に動いたのは善の神。


 機械仕掛けの柔らかな翼をはためかせた善の神は音も無く音を超える。


 音速に至った善の神の体躯は、衝撃を纏って筋頭に迫った。


 しかし。


「だっしゃああああああ!!!!」


 筋頭崇の巨大な腕もまた音速を超え、善の神を迎撃した。


 反撃を予期していた善の神だったが、筋頭の右拳はまたも神の予想を上回っていた。


 『八咫鏡』影響下にて、結果が遜色ない。


 『普段』の全力を神にぶつける。


 再び瓦礫の山に叩きつけられた善の神は、そこで認めるしかなかった。


 ここに来て初めて、善の神の声音に敵意が宿る。


「――――――貴方の罪を許します」


 その言葉が届いているのかいないのか。


 しかし。


 普段通りに、筋頭崇は構えた。


 一度上げたバーベルを上げる様に。


 一度こなした回数を流すように。


 一度耐えた時間を超える様に。


 構える。


 一度打ち据えた神を、何度でも殴り飛ばせる様に。


 「――――――来なさい」


 神はそれを『挑戦』と呼んだ。


 ②


 「さて先輩。それでは死んでください」


 ところ変わってここはスタジアムの外。


 タクシー待ちのロータリーのそばで尾方と色無が相対していた。


「あらら、凄い切り替えだねゼンちゃん。流石にチグハグ過ぎない?さっきまでみたいに仲良くしようよ」


 尾方は壊れた義手を外しながら苦笑いで言う。


「私が先輩と手を組むとしたらそれは世界滅亡の危機の時ぐらいです」


「つまりさっき迄ってことかな」


「はい、ですので、私は貴方を殺します」


 言葉通り色無が前傾姿勢に移った。


 しかし。


「……はぁ」


 色無はため息を吐きながら姿勢を正す。


 一見思い直した様にも見えるこの行動の意味は、直ぐに明らかになった。


 ザンッ!!


 色無の首が先ほどまであった場所に鋭い斬撃が刻まれる。


 流し目で色無が見つめる先には、身の丈ほどの大太刀を携えた正しき天使の姿があった。


「……また貴方ですか。いま取込み中なのですが」


 振り向きながら開いた色無の口がその姿を見た時にピタリと止まる。


「…………」


 正義の天使『正端清』。


 その目は虚であり、虚空を見つめた瞳からは意志が感じられない。


「……貴方……ああ、さっきは気付きませんでしたが」


 清に改めて向き直った色無はジトっとその姿を見て言う。


()()()()()()()()清望(きよみ)さん。背格好が随分違うから気付くのが遅れましたよ。()()()姿()になってまで何をしてるんです?」


 色無 染はさも当たり前の様に。


 とある名を口にする。


 正端清の虚空な瞳に、微かな揺らぎが広がった。


『挑戦者と失踪者』END

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