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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
141/175

『弟子と師』

前回のあらすじ

創って遊ぼう


「すまなかった。私の独断だ」


 陳謝。

 

 素直に謝る。

 

 それが命に手をかけられたと判断した悪道替々が選択した答えだった。


「……搦手さんが死を是としたからですか?」


 ゆらりと影が揺れる錯覚に囚われるほどの怒気を纏った尾方が無機質に質問する。


 替々はこの質問の意味を、尾方の是非を素早く判断する。


 何に対し怒りを表し、どう返答すべきか。


 それを出来るだけ早く、正確に演算する。


 そして導き出した答えをなぞる様に口を開く。

 

「いや、私の企みは善の神を誘き出す部分と筋頭をぶつける部分だ。彼女には立会人になって貰ったにすぎない」


「……つまり搦手さんの件はその作戦とは無関係だと?」


「そう、君の責任だ」

 

 息の詰まる様な緊張が場を支配する。

 

 しかし悪道替々は視線をズラさず尾方を見据えて答えてみせた。


  弟子が、尾方巻彦が昔のままなら、自分がどうなるか分かっているその答えを、それでも替々は言ってみせた。


「…………」


 尾方は暫く沈黙を保ったが。


「……違いない」


 覇気のない顔で諦めた様に言った。


 すると見る見るうちに尾方の怒気が小さくなる。


「すみません、責任転嫁でした。撤退を判断しなかったのは私なのに」


 そして今度は逆に尾方がバツが悪そうに素直に謝った。


「いや、いいよ。私はキミの成長を喜ばしく思う」


 後から滲み出てきた冷や汗をハンカチで拭きながら替々は安堵の表情で言う。


「駄目ですね僕は、昔の感覚に引っ張られて真剣になればなんでも出来る気でいる」


「責任者として君はまだ初心者だ。失敗だってするだろうよ」


 ただし責任者の失敗には、多くの負債を伴う。


 その言葉を替々は言わなかったが、尾方の心には深く深く感覚として刻み込まれた。


 だから手放したのだと思ったが。


 もう手放さないとも思った。


 「さて副総統殿、次の選択をハッキリと頼むよ。とどのつまり人生とは選択とその結果の連続体なのだから」


 替々から差し伸べられた手を見た尾方は一瞬躊躇ったが、直ぐにその手を力強く取った。




 ついでだが尾方は替々に一回投げ飛ばされた。


『弟子と師』END

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