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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
139/175

『神と神』

前回のあらすじ

シリアスに三十路の誕生日会を挟むロックスタイル


道化師は閉演まで笑う(カーニバルエンド)


 それは技でも技術でもなんでもない。


 死による権能の強制解除に伴う搦手の所有物の大解放。


 いままで搦手が蒐集した物体の無差別射出。


 結果、おびただしいまでの無機物の群れは、善の神によって割れた空をさらに割る様に搦手の遺体より射出された。


 一体どれほどのビルを塔を橋を、貯めこんでいたのか。


 単純な物量がスタジアムの空を覆う。


 迫りくるビル群を光の屈折の様に捻じ曲げて善の神は微笑む。


『――――素晴らしい』

 

 恍惚とも言って良い神の表情は、その言葉に飾りがないことを表していた。


「ほう、善の神も悪魔を評価するのだな」


 これまた迫り来るビルを腕力で捻じ曲げて足場とした筋頭が言う。


「――――天使であれ、悪魔であれ。まず、等しく人だと、私はそう思います」


「それについては同感だのうッ!!!」


 腕力で無理矢理束ねたビルの束を片手に、筋頭は神の間合いに堂々と突撃した。

 

 「――――そう、等しい」


 迫り来る筋頭を映す神のその瞳の色は。


 どこまでも深く、蒼く澄んでいた。


 「――――貴方を尊敬しています」


 割れた空のカケラを片手で軽く掬い上げた善の神は、その一欠片を筋頭に向かって撫ぜる様に放った。


 ②


「退こう」


ところ変わってスタジアム内、搦手の遺体の傍らで暫く沈黙していた尾方が突然顔を上げて言った。


搦手が最期に放った大解放により偶然にも天使と悪魔が分断される形となった結果の判断である。


 無論、正しい。


 しかし、


「いいのかな?」


 違和感を感じた替々が確認を入れる。


「ほかにないでしょう?」


 そう、他にない。


 手段がない方法がない術がない。


 選択肢がない。


 故にではなく。


 だからこそ迷う筈の尾方が、誰よりも早く決断した。


 その意味を、その真意を、師でさえ計りかねていた。


「まぁ、ここから大天使軍団を相手に特攻かけるわけにもいかんしな。癪じゃが賛成じゃ」


 電信柱を押し除けながら国門が言う。


 替々は少し考えたが、直ぐに向き直って言う。


「……そうだね、そうと決まれば早く行こうか」


「はい。でもその前に師匠、一ついいですか?」


 尾方に呼び止められ、替々は足を止める。


「……なにかな?」


「いやなに、搦手さんの事ですよ。ほら、筋頭さんと言い、なにか計画立ってるなぁって」


 違和感の正体に、替々は既に気付いていた。


 そう、尾方を直視出来ないのである。


 それは罪悪感ではない。


 それは後ろめたさではない。


 それは申し訳なさではない。


 それは———


 『ーーーー知ってます?』


 得体の知れないものを前にした際の人間の根源的恐怖であった。


『神と神』END

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