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『独白』
一瞥された。
ただそれだけだった。
ただそれだけで十分だった。
百年分の会話をした。
それに等しかった。
彼の者は善の神。
私と対を為す二柱が一柱。
しかし私とは違い、この世界を世界足らしめる真なる陽。
どこまで行っても世界の陰たる私とは対照的な存在。
無論これは卑下ではなく誇示であるのだが、この言葉がもし君に届いたらきっとあの頃の様に笑うだろう。
『らしくないです師匠』と。
『童の癖に大きな口を叩くものだ』と私もあの頃の様に笑うだろう。
しかし。
そんな未来は、世界はもう来ない。
彼の者は善の神。
旧世界の救世主。
夢見る求道者。
過去看る破壊者。
相容れない。
世界は、次の段階に進むべきなのだ。
次のお前が生まれぬように。
今のお前が終われるように。
驕り驕って神を名乗る私は。
『お主を助けて先へ進む』