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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
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『存在剥離』

前回のあらすじ


横恋慕さん


「...私の前で正義を語りますか」


斬られた頬の傷を指でなぞった色無は清を睨む。


「別に語りませんよ。そう見えますか?」


油断無く刀に手を添えた清はそつなく答える。


「...私、貴方のこと嫌いです」


「奇遇ですね。私もです」


バチバチと散る火花を、尾方は他人事の様に眉を細めて眩しそうにしていた。


しかしその尾方を二人はギラリと見る。


尾方は慌てて言う。


「え、ああ、おじさんは、二人とも好きだよ」


瞬間。


刀の柄とノイズ走った拳が尾方の顔面にメリ込み、吹き飛ばした。


「「さいてーです」」


思ったより二人は仲が良さそうだった。


「今のは君が悪いよ」


吹き飛んで来た尾方をフワリと回して着地させた替々が苦笑いで言う。


「...いつの世も博愛主義は煙たがられるという事ですね」


「違うけどまぁいいや。一つ聞いてもいいかな?」


「手短になら」


「君と彼女の三つ目の正装について詳しく」


数瞬尾方は迷ったような表情を見せたが、諦めたように語り出す。


「...【平導びょうどう】。端的に言うと触れた事実の遷移、万類の事実の吸収と再現が可能な腕です」


「成る程、例えば衝撃を吸収して自由に放出したり出来るわけか」


「吸収には直接腕で触れる必要があります。再現は直接腕からと座標を定めて遠距離の二パターンあります」


そこまで聞いて、替々は深く溜息を吐いて言う。


「しかし、なんで君はこんな便利な正装をいままで使わなかったのか問いただすつもりだったのだが」


尾方は無表情で番外の天使を控えめに指差す。


「だよね」


替々は尾方の苦労を思い眉をひそめる。


「あ、失礼!」


そこまで言うと尾方は地面を抉る踏み込みで一直線に飛び出す。


そして清の身体を抉る勢いの色無の右腕を弾く。


「...また邪魔を」


色無は返す右手で尾方の肩を深々と切り裂く。


しかし尾方はその腕を掴み、顔を上げる。


「も少し邪魔させてよ」


瞬間、筋頭と清と瑠花が色無へ背後から飛び掛る。


「...」


色無は無言で回転の詰まった平輪を一瞥すると、翼を羽ばたかせる。


そして、静かに尾方を一瞥した。


「【自幽じゆう】、存在剥離」


すると三人の攻撃が色無の身体をするりとすり抜け、浮力を失った色無はスタッと地面に降り立つ。


「しまった...! もう存在剥離使えたのか!?」


尾方が額の汗を飛ばしながら全力で叫ぶ。


「総員構えろ!!!」


尾方の言葉に反応して悪魔と天使は各々構えをとる。



そしてその構えをした全員の前に。


色無染は顕れた。




自幽は身体に課せられた制限を一時的に解き放つ正装。

(※尾方は仮顕現なので制限あり)


先ほどまでは重力から解き放たれ、悠然と宙を舞っていた。


では、次に彼女は自身をなにより解き放ったのか。


答えは簡単。


自身がそこに居る。


その事実。


その情報。


生物に常に課せられている原初の枷。


存在している以上個として単独で存在し続けなればいけないと言う制限。


そこからの解放。


そこからの独立。


今や彼女はどこにも居ず。


どこにでも居る。


それは存在の稀釈ではなく。


存在の証明である。



まぁそのなんだ、簡単に言うと。


無限且つ複数沸きの大ボスキャラが生まれましたと言う話だ。


葉加瀬あたりが聞いたらクソゲーと叫ぶところだろうが、ところがどっこいこれは現実だ。


修正もナーフもない。


向き合うしかない。


迎え撃つしかない。



さぁ尾方巻彦。


けっして君がこの天使を軽く見てたのではないのは知っている。


そしてこの天使を呼ぶ事でしかあの状況を打破できなかったのも知っている。


しかし、それでも。


君は過去に叛いた。


清算の時だ。


『存在剥離』END

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