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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
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『絶対を溶かす』

前回のあらすじ


天使退治


『先輩』


その人は私の尊敬。


その人は私の理解者。


その人は私の憧れ。


その人は。


その人は私の全て。



『どうして』ではなく。


その様に成ったから。


その様に出来上がったから。


私は私の絶対を否定したりしない。



でも。


私の絶対が。


あの人が。


【なんらか】の外的要因で。


変容したら?



あの人は。


不偏だ。


不変だ。


不偏だ。


不変だ。



私は遍く変容を否定する絶対。


あの人が、そう望んだ。


望んだ事を望まれたままに。


私の絶対は揺るがない。


あの人が揺らいでも。


あの人が。


あの人が。


あの人が。


あの人が。


あの人が。


白貫誠が。


私の愛したあの人が。


望んだ世界を。


神に代わっても。


私が叶える。


そうすれば。


きっと。


きっと。



あの女の事なんか忘れて。


元通りに。


...



そうだ。


そうだった。


あの女さえいなければ。


こんな事にはならなかったんだ。



神の反逆者。


唯一無二の瑕疵。


原初オリジンシャングリラ戦線大戦犯。


麻琴まこと すすむ



あいつは。


絶対を溶かした。


変容させた。


許されない。


許さない。


許さない。


融けて白貫先輩に纏わり付くその業を。


私が必ず解いてみせる。


私が。


色無染が。


貴方に貰った絶対を。


貴方に還す。


その他どんな犠牲を。


払ったとしても。




ドロリと空気を湿らせた色無はそれでも尚神々しい後光をはためかせフワリと宙に身を投げる。


たおやかなその瞳には、確かな殺意が宿っていた。


「副総統殿、作戦は?」


尾方の後ろに控えた替々が声をかける。


「強く当たって後は流れでお願いします」


尾方はあくまで朗らかに冗談で返す。


「言っとる場合かド阿呆、責任とって強く当たれよ尾方」


國門が溜息混じりに言う。


そして大天使達も皆がそれぞれ深く構える。


「清さん、作戦は?」


清の後ろに控えた見上が声をかける。


「必要ですか?」


刀の柄に触れるか触れないかギリギリに手を添えた清の目は既に据わっていた。


「それもそうですね」


満足そうな見上は一歩下がる。


そして全てを見下ろす天使がその瞳を伏せる。


瞬間、ピクリと動いた色無の手に反応した尾方が全速力で突撃した。


――――――――キィィィィィィイ


空気同士が摩擦するような高音が辺りに響き、二つの影が拮抗する。


一瞬の拮抗を煩わしく思った色無が頭の輪を回転させる。


すると尾方は自分の頭の光輪を掴むと色無の無機質な輪に向って投げる。


すると二つの輪は噛み合わない歯車のように突っかかりその回転を止める。


それを一瞥した色無は一瞬眉をひそめると尾方を片手で薙ぎ飛ばす。


飛ばされた尾方に代わる様に見上が色無の目の前に転移する。


そして無造作に伸ばされた両手を同時に二本蹴り飛ばす。


空いた色無の胴体に筋頭の右ストレートが突き刺さる。


本当に身体に穴が空きそうなほどの勢いのパンチを受けて、色無は数メートル下がる。


そこを上から瑠花が強襲し、色無を地面に叩きつける。


更に追撃しようとする瑠花。


すると、なぜか尾方が横から瑠花を突き飛ばす。


瞬間、尾方の上半身が弾け飛ぶ。


そこには地面から気だるそうに伸ばした色無の手があった。


「ッッ!」


瞬時に色無から距離をとる瑠花。


すると瑠花と色無の間に割って入るように國門が走りこんで来る。


そしてその瞬間、謎の衝撃が色無に入り、地面が一瞬で抉られる。


「なッ!?」


國門は地面を求めて足を伸ばすが、無慈悲にも色無の腕は狙いを定める様に伸ばされている。


「がッ!」


今度は國門を尾方が突き飛ばす。


「ッおまえは!!」


吹き飛ばされる尾方を見ながら國門が目を見開く。


更に腕を動かそうとした色無の隣に、スッと歩いてくる影が一つ。


色無が向き直ろうとした瞬間。


その身体に衝撃が走った。


「〆流『渦』」


江見塚が放った不可視の拳は、色無の身体に深々と刻まれる。


必殺の拳の殴打に一瞬ぐらりと揺れた色無は、それでも不気味に手を伸ばす。


「貴方は一体...!」


動揺した江見塚と色無の間にショルダータックルで尾方が突っ込んで来る。


「つ、強く当たるって大変...」


分かりやすく機嫌が悪そうな色無は姿勢を直す。


「...邪魔ですよ悪魔さん」


「天使の邪魔するのが商売なもんで」


変わらずにへら顔の尾方。


色無の顔が怒りで顕になる。


「その顔で!! 声で!!! そんな言葉を放つな!!!!」


渾身の色無の薙ぎ払い。


それを。


「そうですか?」


戒位第三躯が割り込んで斬り返す。


「いい声と...顔だと思いますけど?」


この戦いが始まって初めて色無に浅いが切り傷が入る。


ギロリと色無の目が清を捕らえる。


「...誰?」


いつの間にか刃を鞘に返した清は言う。


「正義」


触れていない刀の鞘が、カチリと音を鳴らした。

『絶対を溶かす』END

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