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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」
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『【いってらっしゃい】と【さようなら】』

前回のあらすじ


事案(何回目か忘れた)


「...どういう意味ですか?」


尾方の提案にあからさまに怪訝そうな顔をする小廻。


「そのまんまの意味だよ。メメント・モリに入らない?って意味」


尾方は事も無げに言う。


その瞳から真意を読み取る事は難しい。


「冗談、ではなさそうですね?」


「もちろん、大歓迎の構えさ」


両手を広げた中年は、クルリと背中を向ける。


「...元とはいえ、大天使ですよ? 受け入れられますか?」


「元々が残党の寄せ集めの集団だからね。誰も文句は言えないさ」


「......」


小廻は一瞬深く考えようとしたが、スッと顔を上げる。


そして開こうとした口を。


「正端清は君に生きろと言っている」


尾方巻彦が制した。


「...ッ」


言葉に詰まった小廻は静かに目を伏せる。


数刻の沈黙が二人の間に流れる。


そして。


「即決は出来ません」


「うん」


「...この場は預けます」


「うん、大丈夫」


「...」


私は、結局また独りですか。


そんな言葉が脳裏をよぎる。


その時。


「いってらっしゃい」


小廻はハッと顔を上げる。


そこには朗らかに微笑む尾方の姿があった。


「...ん」


否定でも肯定でもない自分でもよく分からない返事をして小廻は踵を返し、地面を蹴った。


それは無論決別の一歩であった。


しかし、その足取りは驚くほど軽かった。




ところ変わってここはスタジアム中央。


大天使とメメント・モリが対峙する中、番外天使の色無が乱入して事態は混沌を極めていた。


大天使達が色無染について知っていることは一つ。


神の代行者。


ごく稀に善の神から重要な任務を承り、その悉くを完全に遂行する神の現世への介入機構。


『ソレ』が、神の目を睨みつけていた。


「(な、なな、なんでこんなに人がいるんだ!?)」


違う、別に睨みつけてはなかった。


視線を反らしてるだけだった。


尾方のお願いに高揚して意気揚々とスタジアムに乗り込んだ色無だったが、神の目の事しか頭に無く。


この騒動の中心地がどこに位置しているかを全く計算から度外視していた。


説明するまでもないがコミュ障は人ごみが大の苦手なのだ。


故に視線を比較的安全な無機物(神の目)に持っていくしか手段が無いだけだった。


しかし悲しいかな当然ながら視線は色無に集まる。


「(なんでみんな静かなん...? そっちはそっちで勝手にやって...!)」


色無の無言の主張は、謎の圧となって周囲を無意味に威圧する。


「あれがまさか...大天使番外...」


「知っているのか國門君!」


「聴いた事がある。神の代行者...とかなんとか」


「あ、良く知らないってことネ」


「し、仕方がなかろうが! 噂程度の存在だったんだ!」


「大天使並に強いってことかしら?」


「神の代理任されるぐらいなんだからそれより強いんじゃない?」


悪魔陣営は相変わらず危機感が足りてない。


しかしその好奇の目はその天使に効果抜群だ。


「(な、なんでみんなこっち観るんだよう...! なになになになになに?? わかんないわかんない??)」


混乱した色無は目を瞑り、首を左右に揺る。


その真っ白になった色無の頭に、一瞬だけ尾方のシルエットが浮かんだ。


「尾方...先輩!」


隈を蓄えた両の目がギラリと周囲を一瞥する。


「お前ら...邪魔......すんな!!」


色無は両耳を塞ぎ叫ぶ。


その声に呼応するように頭の輪は光り、翼は広がり、周囲はどす黒く黒ずむ。


色無の威圧感に、神の目の人形達は一斉に色無に対して臨戦態勢を取った。


ダランと両腕を垂らした色無は、ぐるりと顔を上げる。


「神よ、お許しください」


囁くように、しかし確かにその場の皆にその声は通った。


「その光を奪うことを」


シンとした一瞬の静寂の中。


色無の黒ずんだ右の腕が、神の目を貫いた。


「さようなら」


それは機械よりも無機質な、そんな声だった。

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