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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『結び目ワールド』

前回のあらすじ


凶弾


世界の節目。


結び目には。


度々とある凶器が登場する。


銃。


人類が作り出した人類を殺すための武器。


この道具は本来遠かった他人の命までの距離と過程を大幅に縮めた。


例えば殺すための力。


例えば殺すまでの葛藤。


例えば殺すまでの距離。


例えば殺すまでの時間。


この道具がなければ為し得なかった殺人の数は、恐らくこの武器が救った命より多い。


覚悟なき小心者も。


覚悟した暗殺者も。


等しく引き金を引く権利があり、結果がある。


文明を築く生命体が、等しくどこかでこの武器に辿り着いてしまうのだとすれば。


これは文明発達の蓋なのだろう。


まぁつまりなにが言いたいかと言うと。


今回も例に漏れず。


銃のトリガーが世界の行く末を動かしたと言う話である。


大げさだって?


そうでもないさ。


悪道姫子は尾方巻彦の楔だ。


封印と言ってもいい。


旧メメント・モリの事件を追う尾方が出した天使、悪魔への被害は数える事も出来ない。


『返り血』の通り名は伊達ではなく。


正体不明のこの名が跋扈する一年間。


両陣営、被害回復に人員を充てるしか出来ず。


大きな動きが出来なかったのである。


世界を停滞させる執念の化身。


悪道姫子に出会わなければ、今頃メメント・モリ事件の真実に辿り着いていただろう。


無論、屍の山を築いてだが。


諦めないと言うのは聴こえは良いが。


様は歯止めが利かないのである。


ここまでが無く。


どこまでも行く。


性質が悪いことに、尾方は感覚が麻痺している訳ではなく。


しっかり罪悪感を抱きながらこれをやってのける。


乾かない血が乾くまでずっと。


尾方巻彦は謝り続ける。


悔やみ続ける。


しかし、立ち止まる事はない。


枯れた涙が蘇り、また枯れても尚。


足だけは止まらない。


心に決めた目的を。


完遂するまで。


失礼、また話が反れたね。


端的に言おう。


世界は御終いだ。


今日は魔王の誕生日さ。


じゃ、飛び火の可能性があるので私は逃げるね。


グッバイ!



私は動けなかった。


起こった事態を目で追うのが精一杯だった。


私の横に居たはずの姫子さんは突然尾方のおっさんの方へ駆け出し。


尾方のおっさんを突き飛ばした。


私は動けなかった。


私は動かなかった。


私は助ける事は出来なかった。


あくまで救われる側に徹底した。


私が尾方巻彦を救うなんて。


考えもしなかった。


死んでも甦るなんて考えたくも無かった癖に。


それに縋っていた事に気付いた。


姫子さんは。


悪道姫子は、尾方巻彦を救った。


死んでも甦る人を。


死から救った。


少しでも理性的に考えれば分かる。


そんな事をしても―――


考えてしまう。


私は考えてしまう。


私は。


「...ッ!」


とても言葉に出来ないことが。


言葉になる前に私は唇を噛んだ。


これ以上私が惨めにならないように。


精一杯の力で切り返す。


「おっさん!!!」


それは助けを請うにも似た叫び。


とても自分では処理しきれない感情の共有相手の捜索。


しかし、返事はこない。


突き飛ばされた尾方はその場に尻餅を突いた状態で動かない。


しかし、震える瞳に何かが宿っていた。


それは何かが乗り移る瞬間。


執念の始まり。


求めるでなく求められるでもなく。


感情によって焼き付く。


外付けの最終目標。


飛んで来る三発目の弾丸を。


尾方は一瞥もする事もなく。


捉え、握り潰した。


これは私が認知しているおっさんの正装では不可能な芸当だ。


もしかしてこの人はまだ...


煙立つ腕を払うことも無く纏ったおっさんは。


狙撃手の方角へぬるりと視線を這わせた。


そして手で手遊びの銃を作ると。


小さく呟いた。


バンッ


すると、数百メートル離れたビルの屋上が爆発。


ビルは倒壊した。


尾方は腕を振るって煙を払う。


そして。


数秒の間、自分の手の平を眺めると。


こちらを振り向いた。


私は言葉も無く。


首を必死に横に振ることしか出来なかった。


おっさんはそれを受けて。


ふぅっと軽く一息を吐いた。


「もういいか」


それは。


余りに軽く。


しかし。


重い言葉。


おっさん、いや。


尾方巻彦が尾方巻彦として残す。


最期の言葉だった。

「「次回予告!!」」


「のう尾方ー、話が違うんじゃがー、章の終わりは毎回尾方が死ぬという話ではー?」


「死んでるじゃない。尾方巻彦はこれでお終いなわけだし」


「詐欺なんじゃがー」


「まぁたまには逆もいいじゃない。気分はどう?」


「ふわふわじゃな」


「そんな近所のポメラニアン触ったみたいな感想でいいのかなぁ」


「良いんじゃよ死なんて死んだやつにしか描写出来ないんじゃから。つまりお主にしか書けぬと言う訳じゃ。感想、どうぞー」


「え、ええ...なんだろう。こうフワッと」


「手作りホットケーキランクじゃな」


「よし、次回予告行こうか」


「わし等! リベンジ!」


「フワッとしてるね」


「ホットケーキ焼くかの」


「いいね、ハチミツかける?」


「バターもじゃ」


「豪勢に往こう」


第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」END

第七章「二度咲きルーザーと廻天カンパニー」へ続く


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