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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『来い!!!!!』

前回のあらすじ


ムカチャッカファイア



時は少し戻り.


ここはメメント・モリのアジト。


スタジアム中央では大天使と悪魔達が対峙していた。


グロッキーな尾方を後ろに、メメント・モリの面々は臨戦態勢を取る。


「動かんくなった尾方はどうするがじゃ?」


油断なく構えた國門が言う。


「いや、ああなったら本当に動けないからね尾方は...放置するしかないネ」


替々は筋頭の傍に控える。


「ワシとの戦いの時もなったのうあれ。難儀なやっちゃ」


正面に複数の大天使を見据えて笑う筋頭は姿勢を深く構える。


大天使達は戻って来た瑠花と江見塚を加え、堂々と姿勢を正す。


離脱していた二人が戻って来た際、軽く情報共有があったが特段糾弾等はなく全員滑らかに戦闘態勢に入った。


結果、数的有利さえも天使に傾いた。


頼みの尾方も動けない悪魔側は絶望的な状況であった。


ともすれば同情さえもしてしまいそうな状況で大天使はそれでも無慈悲に油断なく展開する。


今まさに必死の戦線が幕を開けようとしていた。


誰もが引き絞った弓のように体に力を送る。


今の今。


誰か駆け出す瞬間が来るまでの数瞬。



轟音と共にスタジアムの一角が弾け飛んだ。


瓦礫と共に雪崩れ込んで来た影が二つ。


隻腕の搦手と傷だらけの写楽が悪魔達の傍に着地する。


搦手を見た替々が声をかける。


「搦手君!? その腕!」


「腕は大丈夫じゃないけど大丈夫! あと大問題が一つ!」


砕けたスタジアムの一角に白い羽が舞う。


そこには瓦礫の残骸を蹴っ飛ばしぶっきらぼうに入場する色無 染の姿があった。


ざわつく両陣営。


「あれは...?」


警戒しその天使から目を離さずに替々が言う。


「詳しくは知らないけどヤバイ天使。尾方ちゃんに聴いたら?」


替々が手の平を後ろに向ける。


そこには立ち尽くす尾方の姿。


搦手は一瞥すると大股でツカツカと歩み寄る。


「さっきの通信聴いたんでしょ! なにやってるの?」


搦手の言葉に尾方は微かに焦点を取り戻す。


「搦手さん...? 腕は...?」


「アンタの後輩にやられただけよ。気にしなくていいわ」


「...後輩?」


尾方はスタジアム端の色無 染の姿をみる。


「...ゼン...ちゃん...!」


尾方の目線が再度ブレだす。


しかし、それでも尾方は踏み出す。


「僕が、なんとかしないと...」


僕が。


その時。


パシッ


搦手が尾方の手を取る。。


その衝撃と暖かさに、尾方は戸惑って振り返る。


そこには、今にも倒れそうな顔色の。


しかし力強い眼をした搦手が立っていた。


「ここは任せろ」


大きな声ではなかった。


しかし、芯に響く声。


唯でなくてもどうしようもない大天使の数は増え。


更に謎の天使が強襲してきたこの状況を持って。


搦手は言い放った。


「お前が帰ってくるまでこの場は必ず持たせる。約束する」


だから。


行け。


行って守れ。


こんどこそ。


搦手は言葉の最後にウィンクすると、一度尾方の腕を強く握って離した。


歩いていく搦手の姿を、尾方は真っ直ぐみる。


その瞳は、もう震えてはいなかった。


プルルル。


プルルル。


緊張感走るスタジアムに、実にニュートラルな電話音が響く。


すると、ペコリと一礼した正端 清が携帯を取り出して応答した。


そして一言話すと、動揺した雰囲気で通話のスピーカーボタンを押す。


そして。


『尾方!!!! 来い!!!!』


悪道姫子の言葉が、スタジアムに響き渡ると。


尾方巻彦は一切の迷いなく。


己の手刀で己の心臓を貫いた。


このとき。


メメント・モリの一同は皆。


笑顔で前を見据えていた。

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