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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『メメント・モリvs人形』

前回のあらすじ


雑に半壊


「あえてこの状況についての糾弾はいたしません。理由はお分かりですね?」


見上は目を瞑ってツラツラと言う。


「時間が惜しいのだろう? 本題どうぞ」


替々はそ知らぬ顔で言う。


「...どうすればいいかは知っているな? 業腹ですが協力しませんか」


「断る理由はないね。現に我々は尋常じゃない被害を出してる訳だし」


「天使側もですよ。どうしてくれんですか?」


「ふむ。公平に時間をかけてゆっくり話し合うかね?」


「...流石はアイツの師匠だと言った所ですかね」


「聴いてるよ。親友だってね」


「ここでみんな共々死んでもいいんですよ」


「こわっ。一瞬で怒り通り越して無気力になってるじゃん...」


「冗談ですよ」


「人は冗談であんな無色な瞳の色になれないんだよね」


「さて、協力内容はお互いへの不干渉で。問題ないですかね?」


「それは協力と言えないのではないかね?」


「いえ、努めて邪魔をしないで頂ければそれで結構です。こっちでなんとかしますので」


「ふむ」


替々は少し考えると浅く頷いた。


「結構。無論不可抗力はお咎めなしで頼むよ」


「ええ、お互いご健闘を」


そこまで言うと見上は空間跳躍でするりと消えた。


「......」


さっきまで見上が居た場所をチラリと見た替々はポツリと呟いた。


「似てネー」



「という訳だから。お互い勝手にやろうねー」


取り合えず近くにいた味方陣営の國門と筋頭を集めた替々は事も無しに言う。


「あいわかった!!」


「おじき? 本当にどんな事態か分かってます? この爺さんとんでもない事してくれたんですよ?」


快活に笑う筋頭の横で國門が頭を抱えている。


「あ、そっかー君達元天使サイド組だものね。説明の手間が省けて助かるよ」


暢気に笑う替々を國門は睨みつける。


「あえてこの状況になった理由は聴かん! 理由はわかるな?」


「あ、それさっき見上君にも言われた」


「ぶっっっっッッッッ殺すぞ!!!」


「あ、ごめん」


今まで見たことがない形相の國門に替々は引き気味である。


「こほん、時間もない。率直に聴こう。我々で『あれ』に触れられるかね?」


「「無理だ」」


元天使二人は示し合わせるまでもなく二つ返事で言う。


「ふむ、やっぱり?」


替々は苦笑いである。


その時。


「ッ!」


淡い光が全員の視界の端に映る。


瞬間、國門は反射的に替々を押しのけ、その光の前に立つ。


そして、地面が無くなる。


そこに居る三人ともが全く反応できなかったが。


攻撃は既に放たれていた。


結果から言うと右ストレート。


淡い人の形を持ったその人形は。


拳の一振りを持って國門の足元の大地を消滅させた。


「がぁッ!」


落下前に人形に対して蹴りを繰り出す國門。


それが当たるか当たらないかの瀬戸際。


「ぬぅん!!!」


空を斬る勢いで射出された筋頭のタックルが、人形を吹き飛ばした。


「半端な攻撃はするな國門!! わしが止めなんだ今両足無くなっとるぞ!!」


「すまねぇおじき! 恩にきる!!」


体勢を崩しながらも着地した國門はドッと冷や汗をかく。


立ち上がるまでもなく立っている人形は、無いはずの瞳で三人を視る。


――――。


耳の奥に響く不可思議な音が、少し高い音に変わる。


その瞬間。


破裂音の後に重い重い土嚢同士がぶつかる様な鈍く鋭い音が辺りに響き渡った。


「ぬんッッ!!!」


衝撃で軽く転がった替々と地面にヒビが入った國門が見たのは。


淡い光と手四つで張り合う筋頭の姿だった。


ひび割れた地面を更に抉り押し合う二つの影。


近づくだけで弾き飛ばされされそうな力比べ。


人形の様相は分からないが、筋頭は指の先々まで筋が走っている。


「ぬぅぅぅぅぅぅぅ!!」


鬼気迫る筋頭に、人形は無機質に拮抗する。


その時。


「失礼」


ポンッと人形の肩に手を置く替々。


「筋頭殿」


「応さ!!」


人形の腕を振り払う筋頭。


人形の姿勢が崩れる。


それを逃さず、筋頭は右ストレートを、替々は肩を掴んだまま回し蹴りをクリーンヒットさせる。


――――。


低い耳鳴り。


きりもみながら飛んだ人形は壁に激突する。


「ふむ、また私の権能でひっくり返しきれなかったね」


グーパーと手を開け閉めする替々に。


またも踏み込みナシに光は再度迫る。


「グッッ!!」


人形に蹴られたのは國門。


示し合わせていたわけではない。


しかし、この中で狙われて最も困るのは誰であるか考え。


國門は常に替々と位置を変えられる場所に陣取っていた。


またも地面が崩れ空に浮いた國門は、銃を素早く取り出し引き金を引いた。


狙いは反動による間合いの確保。


この人形相手に間合いが合ってない様なものなのは重々承知であるが。


標的をズラすほどの距離は稼げる。


人形の動きはシンプル。


常に一番近く。


こうなると替々を狙う。


そう考える。


三人もそう考えた。


パァンッ!!!


またも破裂音。


だがこれは。


「ふむ、まだ倒れないかね」


替々が放った蹴りが人形の顎を捉えた音であった。


勿論、並の人間がこの人形に触れるとひとたまりもない。


だが、今の替々の片手は筋頭が掴んでいた。


「ぬん!!」


パッと替々の手を離した筋頭のボディブローが人形に入る。


堪らず反撃した人形の右拳を。


「ほい」


筋頭の肩を掴んだ替々をいなし、カウンターを叩き込む。


更に連携の間の攻撃は國門が割って入り防ぐ。


神速の連撃は休み無く続き。


「むぅん!!!」


隙をみて人形に触れた替々と渾身の力を込めた筋頭のダブルラリアットが決まり。


淡い光の人形は。


音も無くアッサリと消え去った。


「.........」


肩で息をする三人。


戦いの凄まじさは割れた地面とクレーターの様な壁が物語っている。


「.........」


「という訳で。神の目はね。神が見聞し創造した『究極の人』その模造品との戦いになります。これを掻い潜って球体に触れましょう。ちなみにこれ。無限沸きね」


「.........」


眼前に広がる数十人の模造品を眺めながら。


替々は静かに呟いた。


「困ったぞ」

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