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残党シャングリラ  作者: タビヌコ
第六章「当て馬リベンジャーと結び目ワールド」
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『神の目』

前回のあらすじ


顕現


久しぶりに彼を視た。


正確には『その一部を』だが。


随分変わったというか。


換わった。


恐らくその芯は変わらないのだろうけれど。


寂しくも思う。


私にまだそんな感情があるとは思わなかったけれど。


寂しいと確かに思った。


責任感の強い君だもの。


素直で真面目な君だもの。


私の為に泣ける君だもの。


きっと。


沢山悩んだのだろう。


きっと。


沢山選んだのだろう。


きっと。


...。


やめようか。


柄じゃないし。



さぁ、とりあえず。


残党シャングリラ初のレイドイベント。


善の神の『目』討伐戦だ。


敵味方無く必死に抗おう諸君。


あの目は私の。


三倍ぐらい強いんだからさ。



直感で分かる。


分からなくても理解る。


面前の敵どころではない。


今ここで。


自分の命を脅かす存在がなにであるか。


五感ではなく直感で理解できる。


前触れも無く現れた淡い光に包まれた無機質な球体を『生命の敵』であることを。


この場の誰もが理解出来た。


「...ッ!」


大天使の誰もが絶句する。


知っているからこそ。


なぜこの状況になったのかは理解できない。


なぜ。


「(なんで悪魔が善の神との取り決めを知っているんです!?)」


見上はとりあえず近くにいた國門に率直な疑問を投げる。


よほど急いでいたのか正装を使って伝えたという結果を投げる。


「なんじゃ頭んなかにボソボソ鬱陶しい。俺が知るかあの爺さんの事なんか」


こっちが聞きたいと眉間に皺を寄せる國門を他所に見上は八の近くに正装で空間跳躍する。


必然近くにいた替々を目が合うが。


老人は静かに口角を三日月に曲げる。


「(八さん。軽く状況説明をお願いします)」


正装を使ってハチと会話する見上。


見上の正装『銀無垢』は、会話の結果を拾う事も出来る。


その際、会話が出来るかは考慮されないため。


言葉が話せない相手との意思疎通も可能なのである。


状況を聴いた見上は深く溜息を吐いて替々を一瞥する。


「これだから悪道一族は...!」


吐き捨てる様に言った見上は右手を上げて指を弾く。


すると。瞬きの間にその場の大天使三躯が集合する。


「正端さん。一旦正義モード解除でお願いします。怖いので」


「いえ、さっき何故か治りました。神様のご加護ですかね?」


「ワンッ!」


「はい、状況が変わりました。作戦の一時中断を余儀なくされています」


「ええ、なぜ神の『お目通り』が? 誰か唱えました?」


「敵の悪道信司、いや今は替々でしたっけ? 彼が唱えたらしいです」


「なんで知っているのか...はもういいですが」


「はい、どうするかですね」


見上は今だ沈黙している無視質な球体を一瞥する。


「なんでこんな時に江見塚先生も瑠花さんもいないんですかね...」


「呼んできます? そんな遠くにいないでしょうし」


「いや、状況的にあれは『目』です。この三躯中一人欠けたら誰か死にます」


「ワンッ!!」


「やめてくださいハチさん。こんな所で貴方が命を投げ打つ必要は無い」


そう。


投げ打つなら最適な命がある。


「ご相談があります」


空間跳躍で替々の傍に出た見上は口を開く。


「奇遇だね。私からもあるんだよ」


待っていたかのように替々はニッと笑った。



『お目通り』


大天使には、善の神に意見することが許されている。


ただし。


自分の存在が神に意見するに相応しい人間であることを認めさせ。


初めて人は神に言葉を告げる権利を得るのだ。


その条件は極めて単純。


神の一部に触れること。


この一点を持って。


その言葉を意味を持つ。


価値無き命に意味は無く。


その言葉もまた。


空気を揺らす振動でしかないだ。


この目も。


視た。見た。視た知識で人を司る。


知見のみで造った淡い光の極地たる模造人間は。


一瞬で悪魔の軍勢の半数を惨殺した。

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