表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~  作者: 姫河ハヅキ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/110

第八十八話 第二回イベント⑤

あまり描写しない現実の方のスペックはどれだけ盛っても良い。うちの主人公たる雪ちゃん、現実では身体スペックはクソ雑魚ナメクジですがそれ以外はつよつよです。

「この国の姫様が行方不明なんだっけか」


「情報断片見た感じだと最終日にやるらしい儀式が怪しいよねー」


「この手の話では、儀式が本来は危険だけど国民にはそれを伏せていて、お姫様に無理やりやらせてるっていうのがお決まりですよね」


 イベント三日目。初日と二日目で集めた情報によるとこの国のお姫様が街のどこかに潜伏しているらしいので昨日のパーティで路地を探索中である。あの人数が一塊で探索するのは非効率の極みなため、ボク達身内組とそれ以外の二手で分かれている。

 また、こちらには仕事を終えた母さんも合流している。


「お前よくオフ取れたよなー。仕事あったんだろ?」


「元々イベントの初日からオフだったのに連絡ミスで仕事が入ってきたのよー!幸い写真撮影だったから急いで終わらせたんだけど!」


「断ればよかったじゃないですか」


「私の方から無理を言うこともあるから断るのは気が引けるんですよ。それに、ゲームしたいからなんて理由で仕事断ると仕事減っちゃいますし······」


「············?(仕事なんてどんな理由だろうとどれだけ断ろうとも来るものでは?、という顔)」


「心底分かってない顔だ······」


「というか母さんはもう仕事いくつか断っても大丈夫でしょ。なんならモデル業やめて女優一本でも十分じゃないの?」


「売れてない頃に仕事もらった恩があるのよねー。モデル業が嫌いってわけでもないし。それに副業のこというならスノウちゃんもでしょ。学生に配信者にコスプレイヤーに、で二足の草鞋どころか三足じゃない」


「配信頻度は少ない方だし、コスプレイヤーとしての仕事の頻度はさらに少ないんだよねー。忙しさだけなら高校通いながらでも余裕だよ」


 実はボクは、「十六夜セツナ」以外にも顔がある。

 株式会社アストレアのモデル部門、その中でもコスプレイヤーに特化した事務所「ロウリア」に所属する一人「露木ハナ」だ。

 元は一人のコスプレイヤーに過ぎなかったのだが、コミケは毎回出ており、その度にファンから「写真集などのグッズは出さないのか」「本格的にコスプレイヤーとして活動しないのか」とせっつかれることが多かったため、アストレアの社長に相談したところ「じゃあ新しく事務所作るか」と瞬く間にロウリアが設立され、そこに所属することになったのだ。

 ボクとしては写真集などグッズの制作を少し手伝ってほしいなー程度だったんだけどね。即決で事務所設立は予想外過ぎた。

 公式に事務所に所属したことでイベントへの出演依頼などが来るようになったが、そんな高頻度で来るものではないし、事務所の他の子に回したりもしているので長期休暇以外はそこまで忙しくなかったりする。

 とはいえ、どちらの仕事も平日朝からの仕事は断らざるをえないのが現状だ。コラボ企画では他のメンバーに予定を合わせてもらうことも少なくない。高校やめたらあっさり解決するけど、せっかく入った高校を中退するのもなんだかねぇ。

 社長は「先走って事務所作ったのは俺だから学校優先しろ」って言ってたっけ。行動力高すぎて先走ることもよくあるけど、人柄は良くて商才はピカイチだから好かれてるんだよねあの人。


「結局、なんで路地裏探索してるの?」


「情報断片集め終わったらイベントクエストで『セレネ姫を探せ』と出たんだよ。場所の情報無かったからとりあえず路地裏探すかーって」


「この街かなり広いですし、場所固定は恐らくないでしょうね。常に移動してるか、曲がり角を曲がる度にランダム生成とか?」


「いつまで経っても見つけられない可能性あるわよね······」


「だからボク達も二手に分かれてるわけだしー。情報断片集めきったプレイヤーが後から捜索に加わるだろうからいずれ見つかるでしょ」


「スノウちゃんの引き強いですから割と早々に見つかる気がします」


「雪は引き強いが、振れ幅もエグイからなぁ。姫さん見つけると同時に激強NPCに襲われても驚かんぞ」


「いやいや、そんなすぐに見つかるわけ······誰だあの子」


 兎獣人の少年に······精霊の少女?いや、違うな。精霊に限りなく近いけど普人だ。

 外套で服装はよく見えないけど、ワンチャンお姫様?


「知ってた」


「フラグを立てる前に回収するとはさすがね」


「······怖っ」


 さっき散々言ってたくせにいざ引き当てたときにそのリアクションは酷くない?


「どう声掛けようか」


「そもそもあの子がお姫様かどうか確定してましたっけ」


「あー······そういや件の姫さんの顔知らねぇな。まさかイベントストーリーとは全く関係ないNPCである可能性が微レ存······?」


「何の関係もない子がこんな路地裏にいるとは思えないけどねぇ。月の魔力が随分濃いから、セレネ姫本人じゃなくともイベント上の重要人物だとは思うよ」


「あぁ、あれ月の魔力なんですね。そういえば月光草もあんな感じだったような······?」


「あ、あの子達こっちに来たわよ」


 ボク達からあの子達見えてるんだから、当然向こうも気付くよね。


『父さんお願ーい』


「は?いやいいけどよ······。どうしたn「『精神衝撃』」······ッ!?」


 少女がいきなり魔術を撃ってきたかと思えば、二つ目の魔術も既に用意されていてーーー


「『魅惑の月光』。······行くわよ、ユウリ」


「姫様「セレネ」······セレネ、この人たちはどうするの?」


「そりゃ置いていくわよ。あいつらの私兵かもしれないけど、私兵じゃないかもしれない。なら下手に干渉せず放置でしょ」


「た、多分違うんじゃないかな。種族がごちゃ混ぜだから外からの人だと思う。それにこの竜人の子······もしかしたらバルドさんより強いかもしれない」


 ふむ、このイベントのボスはバルドって人の可能性ありそうだね。


「はぁ!?バルドよりって······嘘でしょ!?」


「も、もしかしたらだよ。竜人の子と獣人の子が飛びぬけて強くて、はっきり分かるだけでもバルドさん以外には勝てると思う。でもこの二人には僕の目でもよく分からないモノがあって、竜人の子のがとても大きいんだ。······『アレ』を発動したバルドさんに勝てるかもしれないくらい」


「いやいやいや············あの状態のバルド倒しかねないとか、それもう神か邪神よ」


 え、まさかこの子解析系のエクストラスキル持ち?会話の内容的に詳細は分かってないっぽいけど、スペリオルスキルとかカラミティスキルの存在自体はバレてるよね。

 エメロアお墨付きたる隠者の腕輪の隠蔽効果貫通するとか尋常じゃないよ。

 目の前の女の子が件のセレネ姫なのは確定したし、声かけようか。


「どうもセレネさん。お話、聞かせてくれない?」


「な、なんで······!?」


「一身上の都合で、魅了はほぼ効かないんだ」 


 【淫乱竜】のおかげで魅了だけは弾くんだよねー。

 まぁ魅了以外の精神干渉は弾けないし、MNDクソ高い母さんをあっさりぶち抜く出力が相手じゃMND初期値のボクは魅了以外なら普通にくらってたよ。


「······竜人じゃなくて淫魔············?」


「竜人でもあるし淫魔でもあるって感じかなー。おまけに鬼でもあるよ」


「何よこいつ······!ユウリ、やっぱり放置が安牌だったんじゃない?」


 ······この場面で神気か瘴気出したら面白いことになりそうだね。いっそ両方出すか。

 演技の経験を思い出して、可能な限り妖しく見えるように笑顔を作る。


「さっきの会話、聞いたよ。もう少し詳しく事情を説明してくれたら味方になるかもだけど············どうする?」


「「············」」


「どうするかは君達の自由だ。後悔しないように、ね?」


 悩んでる悩んでる。声だけじゃなく表情や仕草も使って演技するのは割と久々だから自信なかったけど、うまく騙せているみたいだね。

 無警告で精神系魔術ブッパされたのでこのくらいの意趣返しはいいだろう。······いいよね?


「やり過ぎだ」


「いてっ。······あれ、一番精神干渉に耐性ないのに起きるの早いね」


「例のスキルでリンクあるからな。お前が神気なり瘴気を活性化させると多少こっちにも来るんだよ」


「もう二人も自力で撥ね退けてる······!?」


「あー······まぁ俺達は例外だ。エルフとか精霊にちゃんと通ってるから安心してくれ。それより、お前さんらは俺達の力を借りるかどうか決めるべきじゃないか?追われてるんだろ?」


「············どうしようかしら。ユウリはどう思う?」


「僕は······僕は、この人たちの力を借りるべきだと思う。バルドさんに勝てそうな人は初めて見たんだ。このタイミングで会えたのは運命としか言いようがないよ」


「······そうよね、丁度私たちが行動に移したタイミングでバルドに匹敵する強者に出会うだなんて、これ以上ない奇跡だもの。どうせ他に当てなんて無いんだから、オールインしてやるわ」


「腹は決まったみたいだね」


「えぇ」


 セレネから彼女たちの境遇と願いを聞いた。


「こんな感じね。ところで一つ、いいかしら?」


「どうぞー」


「正直に言うけど、私は貴方たちに差し出せるものは何もない。私の目的を達成することができたとしても、貴方たちが得るものはないわ。それでも力を貸してくれると言うの?」


「「うん(あぁ)」」


「その願いが今の人々の生活を壊すものだとしても、それは決して悪じゃない。自由に生きたいという願いが、縛られたくないという願いが悪だなんて、ボクが言わせない」


「俺は儀式の真実を知っていながらなおも儀式をさせ続ける王族と貴族の奴らが気に食わない。テメェの生活と利益のために子供の命を資源として扱うクソ共に一泡吹かせられれば報酬なんざいらねぇよ」


「そう。······ありがとう」


「まだ成功どころか始まってすらないのにお礼を言うのは早いよ。あ、今の話を他の人にしてもいいかな?話を聞けばボク達に協力してくれそうな人がいるんだ」


「勿論いいわよ。戦力はあるだけいいもの」


 よし、パーティチャットでヒバナさんたちに説明しようか。事情を知ればこっち側に付いてくれるはず。あとセイネイさんと母さんも起こそう。

 シユ姉たちは······どうしようか。あの四人は味方になってくれそうだけど、クランメンバーが読めないんだよねぇ。敵に回る人もいるかもだし、現時点ではやめとこうか。


「俺からも質問いいか?」


「何?」


「今回のゴールをどうするかだ。単にお前さんらを逃がすだけでも構わんが、専用の道具だか施設だか儀式に必要不可欠なものを壊せば後の奴らも儀式の贄にされなくなるかもしれん。それが修復、もしくは再生産できないものなら儀式を永遠に止めることも可能だろうな」


「······!儀式に使われるのは昔からこの国の王城に存在する、古代文明産の魔導機械です。メンテナンスは自動化されていて経年劣化による破損は期待できませんが、壊すことさえできればなんとかなるかもしれません!ただ、大きく破損したところを見たことがないので機械に修復機能があるかどうかは不明です······」


「んー、まぁ修復機能があろうと動力炉を粉々にするなり消し飛ばせば修復不可能だろ。で、どっちにする?お前ら二人を逃がすだけでいいのか、儀式に必要な機械をぶっ壊すかだ。さすがにこの国から逃がした後のことまでは責任取れないから、個人的には後者をおすすめする。機械ぶっ壊れたらお前ら探す余裕もないだろうしな」


「······この国をぶっ壊してもらってもいいかしら」


「おうよ。スノウもそれでいいよな?」


「もち。ちなみにヒバナさんたちも破壊に賛成だってー」


「私もです。直接戦闘でこそ役立たずですが、援護は任せてください」


「楽しくなりそうね!」


~合流&作戦会議~


 会議を終えたボク達は路地裏を抜け、街の中心から少し離れた人気の少ない通りに出ている。


「作戦の大体は決めたが、不確定要素は大量だ。各々臨機応変にな」


「「「「「「「了解」」」」」」」


「リル達もお願いねー」


「やってやるの!」


「···腕が鳴る」


「修行の成果を見せるのです!」


「スノウがあっと驚くような活躍をしてやるんだから」


「よっしゃスノウ。開戦の合図をいっちょかましてやれ」


「行くよ、ヌル」


「当機の久々の出番ですネ!」


 ヌルの兵装を一部展開し腕に装着、銃でいう弾倉的な場所にエンチャントした短槍をセットして狙いを定める。

 狙うはこの街にいくつも設置された魔道具。侵入者や逃亡する犯罪者の位置捕捉・城に存在する兵器で狙撃するための演算用マーカーなどいくつもの機能が搭載されている厄介な代物だ。

 防衛の要であるため相応の防御がなされているが、こちらも負けてはいない。

 魔術にしろ生産品にしろ、ボクの出せる火力は十二英傑のお墨付きだ。そんなボクが、イスファやミネルヴァに「これ以上の兵器は神器くらいしかない」とまで太鼓判を押すヌルを使うのだ。大国でもない国の最上位でもない防御機構を突破できないわけがない。


「ぶち抜け······!」


 黄金と真紅。二色の雷で強化された槍はあっさりと魔道具を粉々にする。

 偶然出くわしたNPCやプレイヤーが驚愕の声を上げるが気にせず行動を開始する。

 引っ搔き回すよー!

Tips:雪の収入

 登録者130万人以上のバーチャルYoutuberとSNSフォロワー数80万人近いコスプレイヤーとしての活動により、とっくに扶養から外れている。普通に食べていけるし、東京の一等地で一人暮らししながら推しに散財しまくっても割と大丈夫なくらいには稼いでいる。

 バーチャルYoutuberを始めた当時は就職で困らないようにコミュ障を治すという目的だったが、十二分な収入を得たことにより雪がこれ幸いとコミュ障を治す努力をしなくなったので菖蒲と晴夏は少し複雑な気分になった。まぁ仕事の関係でスタッフと会話するのも最初は覚束なかったので、その頃に比べたらコミュ障は割と改善されていたりする。

 なお、柊和と雫乃は雪にある程度の収入があることは察しているが、具体的にどれくらいかは知らない。


Tips:名前の由来

 バーチャルYoutuberとしての「十六夜セツナ」、コスプレイヤーとしての「露木ハナ」。両方に実は由来がある。

 まず、雪の誕生日は8月16日。真夏真っ只中にも関わらず雪が生まれる日に雪が降った(ちなみに夏に雪が降ることをそのまま「夏雪」と呼ぶ)ため「雪」と名付けられた。

 生まれたのが16日のため「十六夜」、夏雪をひっくり返して読みを少し変えて「セツナ」で「十六夜セツナ」。

 八月生まれなので葉(葉月)、それを夏雪とアナグラムして「露木ハナ」。(は+なつゆき→つゆきはな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >偶然出くわしたNPCやプレイヤーが驚愕の声を上げるが気にせず行動を開始する。  こうなると大体次の話で一般プレイヤー達のスレでどうなってるのかとか、クエストの流れを読めるようにする…
[一言] リアルでも安全水準で色々やってるのか(ʘᗩʘ’) 成人する頃にはどんな人物になってるやら(٥↼_↼) ゲームの方でも一波乱ありそうだな(⌐■-■)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ