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Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~  作者: 姫河ハヅキ


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第八十六話 第二回イベント③

今回も月を跨ぐ前に更新できましたよいぇーい。

この調子でいきたいです。

 風竜の突撃をもこもこさんが真正面から受け止めて勢いを殺し、その隙を突いて他のメンバーが重い思いに攻撃を仕掛けて少しずつ風竜のHPを削っていく。

 こちらのメンバーの火力は高いはずだが、単純に風竜のHPが多いのと、常に風の防壁を身に纏っているのとで、全員で攻撃を仕掛けても微々たるダメージにしかならないので時間は割とかかりそうだ。

 ちなみに今一番風竜のHPを削っているのはボク達空爆組だったりする。ヒバナさんの爆属性魔法で風の装甲を散らした箇所(主に背中)にボクが火属性ベースの混成魔法で『魔槍』を雨のように降らせることで効率的にダメージを与えているのだ。風竜も負けじとばかりにこちらに風属性魔法を放ってきているが、父さん達が気を引いてくれているのでこちらに飛んでくる数はそう多くなく、余裕をもって回避している。

 また、背中以外にも爆属性魔法を当てて前衛のDPSを上げることも考えたのだが、風の防壁の修復速度が速く、その速度に合わせたタイミングで爆属性魔法を撃つと事故が発生しそうなのでやめたのである。

 事故と言っても魔法を味方に誤射するとかではない。爆属性魔法全般が持つノックバックが曲者なのだ。ノックバックの影響を受けず、かつ風の防壁がまだ修復されていないタイミングをうまく前衛の攻撃に合わせるのが非常に難しい。一瞬ズレれば味方の体勢を崩してしまい、そこを風竜に攻撃されてしまうかもしれない。

 よく一緒に戦闘を行っている父さんやリル達なら割と余裕で合わせられるのだが、初対面の相手は無理である。

 このペースじゃ厳しい気がするからどうにかしたいんだけどねー。


「火属性耐性下がってて、アタッカーほぼ全員に混成魔法付与しているのに全然削れませんね」


「レイド推奨ならまぁ······むしろ早い方だろ」


「え、これでですか」


「さてはアンタ、レイドボスは初めてだろ。レイドボスってのはどのステータスも同種のモンスターより高いし、特にHPとMPは比べ物にならない差だ。なにせ数十人で戦う想定なんだからな」


「······確かに初めてですね」


 初日に出くわした地竜、その気色悪さを隠しもしなかった変態邪神、そしてつい最近のボスゴーレム、と強力なモンスターとは何回も戦ってきたがレイド戦に参加するのは初めてだ。

あ、でも、ソシャゲのマルチバトルのボスってソロバトルの時より報酬良い代わりにHP多かったな。それと大体同じだよね。

よく考えずとも分かったはずなのに気付けなかったのは少し恥ずかしい。


「ステータス以外の大体は普通のモンスターと変わらんから当然ヘイトはこっちに来るはずなんだが······そこでタンクを筆頭とした前衛の出番だ。【ウォークライ】みたいな自身のヘイトを増やすアーツだとかダメージ与えてヘイト稼ぐかして私ら後衛にモンスターが行かないようにするのが前衛の役割だ」


 これもしかしなくとも初心者へのレクチャーだよね?


「あのー······」


「どうした?」


「ボク、ゲーム自体はよくやるので基本的なことは知ってますよ」


「え?ゲームやってるならレイドボス知ってるんじゃ」


「MMOみたいな大人数は今まで経験なくって」


「あ、そっか」


 ヒバナさん根っからの陽キャだぁ············。

 本気で「ゲームは大人数でワイワイやるもの」って考えてたよね。ソシャゲは基本的にソロプレイだし、そもそもマルチプレイ機能がないのもあるんだけど。


「それにしても、MPリジェネとは珍しいスキル持ってんな。サラとマタタビ以外で見たことないぞ。こっちもいくつかエクストラスキルの習得条件話すから、習得条件教えてくれないか?」


「現地人から貰った技能書による習得なので······。しかもクエスト報酬じゃなくてある日ポンとくれたので条件はさっぱりですね」


「なるほど。ところで一ついいか?」


「······?構いませんが、急に改まってどうしたんです?」


「いや、なんつーか······遠慮とか気遣いはいらないからな?あんまり話しかけられたくないなら自重するし、嫌なことは嫌と言ってくれ」


「はい。現状、特に不満はないので大丈夫です」


「それならいいんだが······。あと、口調は問題ないが無機質な表情と声は人によっちゃ馬鹿にされてるって勘違いするから気を付けた方がいいと思うぞ」


「そうですか。緊張してまともに喋れなくなったり、誰かの顰蹙を買うよりかはマシだと思ったのですが」


「ん?あー、アンタの態度はロールプレイか」


「緊張していても演技という体なら割と喋れますから。あと、素の口調や声色で喋っていたら人間関係のトラブルが起きたことがあるので、急に話しかけられた場合や親しい人が相手の場合を除いてですが、基本的には意識してこんな感じで喋っています」


「『男と仲いいからって調子のんな』みたいなこと言われて女子に嫌われてそうだが······まぁ詮索はしない。このパーティ全員女子で恋愛絡みのトラブルは起こるはずないから、もしそのトラブルが恋愛系でも気にせず素で話してくれていい、とだけ言っておくぞ」


 ドンピシャなんだが。

 まさか知り合いだったりしない?


「心遣い感謝します。念のため他のメンバーにも確認してから口調をこのままにするか元に戻すか決めますね。······ところで、このペースだと間に合いそうにないですよね」


「やっぱ前衛連中の攻撃をまともに当てないことには厳しいか。となると······私たちは空爆やめて背中以外の防壁を剥がすのに注力した方がよさそうだな」


「そうですね」


 風の防壁が剥がれた場所に父さん達が攻撃をした際のダメージが高いのはこれまでの戦闘で既に分かっている。それも、混成魔法を何度も当てたダメージを父さん達の攻撃一発が上回っているくらいだ。

 MNDが高めなのか、単なる混成魔法より混成魔法で強化された武器による近接攻撃の方が効果的なのだ。


「降りてサポートを始めるにしても、どのペアに守ってもらうか決めないといけませんし、先にパーティチャットで確認取りますか」



スノウ『魔術より武器の方がダメージ高いようなので、降りて前衛の攻撃に合わせて防壁を剥がそうと思っているのですが、私とヒバナさんはどのペアに合流するべきですかね』


もこもこ『タゲ維持キツかったから正直助かる。何度ヤツが空飛ぼうとしたか······』


スノウ『ヘイト稼ぎ過ぎましたか。すいません』


アイリス『俺以外のプレイヤーとほぼ組まないからヘイト管理教えるの忘れてたわ。すまん』


もこもこ『いやいや、遠距離攻撃が大体スノウちゃんの方に流れてたからそこは助かってたよ』


マタタビ『正面とか頭部は防壁薄いからアチシ達以外に合流してほしいニャー』


アイリス『じゃあスノウが俺達のペア、ヒバナがあるとりあンとこのペアだ』


スノウ『了解しました。ヒバナさんを届けた後にペアに合流します』


ヒバナ『護衛頼むぞあるとりあ』


あるとりあ『私盾持ってないので無理です』


ヒバナ『断るなよ』


スノウ『リルが風属性ですし盾持ちですから······』



「よし、決まりましたね」


「あいつ騎士の恰好してんのに後衛守る気ないんだよな」


「まぁ元のキャラがアレですからね······」


 というわけで配達&合流。


「やっほー」


「···来た」


「お、来たか。サポート期待して······ってマズいぞこれ。完全にヘイトが俺ら向いてる」


「えっ」


 ······なんで風竜がこっち向いてブレス溜めてるのかなー?

 もこもこさーん?


もこもこ『私の手持ちで一番ヘイト稼ぐスキル使ってるのに見向きもされないとか初めてなんだけど。スノウちゃんダメージ稼ぎすぎで草』


スノウ『なにわろてんねん』


アイリス『なにわろてんねん』


あるとりあ『こちらでも高火力アーツ叩き込んでみますが、あまり期待はしないでください。今も私たちガン無視でブレス溜めてますし』


ヒバナ『スノウとアイリスがいれば防げるだろ、知らんけど』


マタタビ『二人が気を引いてくれている隙に大技ぶち込むニャー』



「パーティメンバーが薄情過ぎる」


「実際あのブレス防げるかお前」


「気は進まないけどまぁ······」


「···やっぱりお母さんはおかしい」


「お金と魔力のゴリ押しだけどねー」


 アルマさんで荒稼ぎしているボクだからこそ取れる方法である。


「GORUAAAAAAAAA!!!!!」


「【封術石】四重起動・『精霊砲:豪炎』!」


 風竜から放たれた巨大な竜巻とボクが放った四本の火柱が真正面からぶつかり合う。

 数の差こそあれどそれ以上に出力差が激しく、じりじりと押されていく。


「ダメだわこれ」


「あちこち逃げてあいつらにもブレス当てるか」


「FFが意図的過ぎる」


 それ実行したら確実にケンカだよね?


「防げないなら逃げるしかないぞ」


「いや、まぁ······足りないなら追加すればいいんだけどね。もってけドロボー!【封術石】起動・『魔砲:深緋流炎』!」


 新たに出現した溶岩の濁流が火柱を巻き込みながら突き進んで瞬く間に竜巻を押し返していき、遂に風竜のもとまで到達した溶岩がその甲殻を焼き融かす。


「GYAAAAAAAAA!?」


「お、特殊ダウン」


「ナイスぅ!」


「···ガンガンいこうぜ」


「飛ばれたらめんどいから翼膜破壊しよっか」



スノウ『翼膜集中攻撃して破壊しましょう』


ヒバナ『了解。ちなみに今の砲撃ってもいっちょいける?』


スノウ『可能ですが170万吹っ飛んだので嫌です』


あるとりあ『ひゃっ、な!?』


マタタビ『とりあえず翼破壊するニャ』


 意識してタイミングを見計らってはいないが、もこもこさんを除いた全員が一斉にそれぞれの大技を翼膜に叩き込む。


「『我流術式・焦熱円刃』!」


「〈黒桜〉ニャ!」


「「〈双斧嵐舞〉」」


「『氷刃雨』なのです!」


「〈アイソレーション・ブレイドダンス〉」


「〈ブリッツ・ファング〉なの!」


「〈バーバリック・ラッシュ〉」


 おぉ、もう翼膜が両方破壊された。

 ブレスに魔力を集中させた影響で防壁がなくなったのも大きいのだろうが、何よりこのメンバーの火力が高い。父さんが保証するだけはある。


「GU······GUGOROOOOO············」


 翼を破壊した後もダウンは終わっていなかったのでそのまま攻撃を続け、風竜のHPがついに半分を下回る。


「制限時間的に······ギリギリかこれ」


「まだ防壁張り直されてないからボクとヒバナさんも全力攻撃だね」



アイリス『各自、死なない程度に特攻。背水系持ってる奴はHP一割切るまで回復無しな』


マタタビ『ニャ!?アチシはアイリスと違ってHPもVITも低いのニャ!』


アイリス『もこもこに口塞いでもらえば他はいけるだろ。ヘイト二番目はスノウだろうから魔法もそっちにはほぼ流れないはず』


もこもこ『······スノウちゃん170万ブッパしてくれたんだし、私も頑張るかー』


スノウ『ボクが勝手に使ったので構いませんよ······?』


もこもこ『これは気持ちの問題よ。年下が頑張ってくれたのに大人が頑張らないとか、矜持が廃るってもんよ』


マタタビ『年齢を引き合いにされたらアチシの立つ瀬がないんだけどニャー?』


あるとりあ『まぁ······頑張りましょう。残り時間的にギリギリ討伐できるかどうかですし』




 そうして風竜のHPが一割ほど、残り時間は五分未満となる。



アイリス『······怪しいな?』


あるとりあ『時間切れ濃厚では······?』


スノウ『さっきみたいに全員で大技叩き込めばどうにか、ですかね』


ヒバナ『んー······切り札使えばたぶん削り切れるが、反動で今日一日は使い物にならんぞ私』


マタタビ『頼むニャ』


あるとりあ『頼みます』


ヒバナ『いや、今日はもう一つクエスト挑むんだろ?そっちはどうすんだよ』


アイリス『このクエスト失敗したらもう一個挑むも何もないだろうから頼むわ』


ヒバナ『おっけー』



「ヒバナさんの切り札かぁ······ッ!?」


「どうした?」


「いやいや······神気とか嘘でしょ?」


 切り札とやらの準備を始めたヒバナさんの方から神気を感じる。

 神気と魔力がごちゃ混ぜになっていることから察するに神から授けられたスキルか魔術なのだろう。


「···でかい」


「これがあいつの切り札、『墜ちる太陽』だ。範囲外に出りゃノーダメだが、範囲内だとプレイヤーで一番魔法防御高いもこもこでも一瞬で融けるくらいの馬鹿げた火力してんだよなー」


「そりゃそうだろうねぇ。太陽神由来の疑似権能とか、太陽神と同格かそれより高位の神の関係者じゃないと普通は死ぬよ」


 ヒバナさんが神気の扱いに慣れてなくて「超高火力の魔術」止まりだけどねー。本来のスペック発揮してたら、この風竜もHP満タンの状態をワンパンできるよ。

 あ、ゲーム的にそれはないか。



《イベントクエスト:風竜討伐。達成。レイドメンバー全員を、リザルト確認用空間に転送します》



「よっしゃクリア!」


「お疲れ様です」


「ギリギリだったニャー」


「さっきので私はしばらくMP回復しないし魔法は使用不能だしで置き物と化したんだが、クエストはどうするんだ?私も報酬欲しいから置いてけぼりは断固抗議するが」


「掲示板で得た情報的にはヒバナ無しでも行けそうなのがあるから、付いてくるだけでいいぞ」


「ふむ。どれですか?」


「ヒュージトレント」


「おぉ······お?植物系とか一番ヒバナが必要なクエストじゃないのニャ?」


「トレント系に一番効くのは斧とか大剣みたいな微妙に打撃混じった斬撃属性なんだよなー。次点で斬撃。確かに植物系モンスターは火に弱いが、トレント系は外殻の耐火性能が高いからあんまり効かん」


「このメンバーなら斧持ちが二人いますもんね」


「あ、外殻壊した後なら火属性ガンガン通るからスノウはまた混成魔法のエンチャント頼むわ」


「了解しました」


 斧持ち二人に加え、他のアタッカーもほぼ全員が斬撃系のアタッカーだったのでヒュージトレントは割とあっさり討伐した。

 うん、風竜の方が何倍も難しかったね。

Tips:魔術&アーツ解説

・『我流術式・焦熱円刃』(使用者:ヒバナ)

:ヒバナが開発したオリジナル魔術。炎を圧縮したチャクラムで相手を燃やしつつ刻む殺意の塊。

・〈黒桜〉(使用者:マタタビ)

:『黒曜讐炎』で放つ〈閃華〉。【仙闘術】は魔力と霊力を混ぜて発動するスキルだが、属性は魔力のものが反映されるので混成魔法も適用される。また、混成魔法で放つ〈閃華〉は〈〇華〉ではなく桜や椿などの花の名前を冠する。

・〈双斧嵐舞〉(使用者:アイリス、ヴァルナ)

:【斧術・テンペスト流】を習得している者が二人がかりで放つアーツ。二人で回転しながら斧による攻撃を何度も行うため、斧をはじめとした重量武器にあるまじきヒット数を誇る。

・『氷刃雨』(使用者:イナバ)

:【氷結魔法】で習得する魔術。氷でできたナイフを大量に降らせる。

・〈アイソレーション・ブレイドダンス〉(使用者:あるとりあ・ぺんどるぁごん)

:【上級片手剣術】で習得する乱舞系アーツ。設定的には「魔力で身体を無理やり動かして普段は出せない速度で大量の斬撃を行う」というもので、武術系アーツとしてはトップクラスのMP消費量。片手剣で出せる火力としてもトップクラスだが、ある程度のVITがないと反動ダメージを受ける。

・〈ブリッツ・ファング〉

:【雷鳴片手剣術】で習得する突進&連撃系アーツ。相手に突進して抉り込むような刺突を放った後、その勢いのまま三、四度ほどの連撃を行う。

・〈バーバリック・ラッシュ〉

:【熟練爪術】で習得する乱舞系アーツ。アーツ発動時にSTRとAGIを強化するが、装備抜きのVITが半分になる。【爪術】を習得しているプレイヤーの大半は軽装でVITにLPを振ることで防御力を確保しているため、プレイヤー達からは使いどころが難しいピーキーなアーツとされているが、VITが初期値かつ防具で防御力を確保しているスノウは割と躊躇いなく使用する。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >なんで風竜がこっち向いてブレス溜めてるのかなー?  これでブレスを防ぐために力比べしないで、ブレス準備中の口に攻撃を集中して妨害する手段が王道だと思うけど、なぜその手段を取らなかっ…
[一言] 竜族のチャージ・ブレスに打ち勝つとは中々ない事するよな( ゜ロ゜) でも一回170万は普通なら泣く所だぞΣ(゜д゜lll)
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