第八十一話 クエスト前の新事実発覚(そんなに重要ではない)
へ、へへ。クッソギリギリなうえに短めだけどどうにか執筆できましたぜ······。
1600文字以上のレポート×2とか一月下旬のテストに向けた準備とかあるんでこれが限界でしたわ。
一月の更新は······レポートやテスト勉強の進み具合によるので今は何とも。勉強以外でもfgoとかグラブルなど色々スマホゲームに手を出してるので割と微妙ですね。特に元旦から始まるぷにぷにのホロライブコラボ第三弾に注力してそうです。
書く気はあります(断言)
「ねぇ、スノウ。私の流派、唯一の後継者になる気はない?」
《流派クエスト:刀術・カンナ流が発生しました。》
《クエスト発生条件:【熟練刀術】以上の刀術系統スキルの保有、全属性魔法スキルの保有、【魔力精密操作】以上の魔力操作系スキルの保有》
属性魔法全種とは鬼畜にも程があるんじゃないかなぁ············。ヌルの起動条件にもあったけど流行ってるの?
まぁ、とりあえず受けようか。断る理由ないし。
「ボクでいいのなら喜んで」
「ん、早速」
余程嬉しいのか満面の笑みでボクに刀を渡すカンナ。······ってオリハルコンじゃんこれぇ!?
「······ナニコレ」
「練習用」
いや、あの······もう少し説明ちょうだい?
「それに魔力を流して」
「こう?」
「違う。込めるんじゃなくて流す。血みたいに」
血液みたいに流すというと······
「え、魔力循環のこと?回路を仕込んでない武器でやるのは非効率じゃない?······まぁやってみるけど。」
エクストラアーツ〈魔力循環〉。体内の魔力を意識的に循環させることで、ボクがよく使う『魔纏』をはじめとした身体強化系の魔術やスキルの効果を上昇させ消費MPを軽減するという地味な効果ながらかなり有用なアーツだ。消費MPも少ないので習得してからは割と常用していたりする。
【魔力操作】系統のアーツではあるのだが、ただスキルレベルを上げただけでは習得できず、アーツを習得している者から教わる必要がある。ちなみにボクはリオンから教わった。
自分の身体を対象としたアーツなのでもちろん武器には適用されない。リオンには「武器は自分の身体より遥かに魔力が通りにくいから、魔法剣とかは意味ないよー。むしろ普通に魔法剣発動するより燃費悪いぐらい」と言われている。
ただ、魔法剣以外で〈魔力循環〉を武器に使うこともあったりする。
それが魔導機械。魔導機械の内部には魔力回路が仕込まれており、そこに魔力を流すことで搭載された兵装を起動している。兵装の使用には逐一魔力を流す必要があるのだが、〈魔力循環〉の発動中であればノータイムで兵装の使用が可能なのだ。
とまぁ、〈魔力循環〉は基本的に自分の肉体でしか使わず、例外は魔導機械のように内部に魔力回路を仕込んだものくらいである。
······というのがボクの認識だったのだが。
他にも使い方があったんだね。
「············難しくない?」
めっちゃ詰まるんだけど。魔力を循環させるどころか、流すのすら一苦労だよこれ。
「ん。スノウでも数日かかるはず」
「もしかして、実戦でちゃんと使えるように練習で難易度高くしてるってパターン?」
オリハルコンは人が扱う金属の中では一二を争う魔力伝導性のはず。イスファから聞いたの覚えてるよ。
それにしては魔力の通りが悪い。何か細工してるんじゃないの?
「······?」
あ、違うわこれ。金属の中では一二を争う魔力伝導性(そもそも金属は魔力伝導性ゴミだけどオリハルコンは比較的マシだよ)ってこと?
でも、「魔法剣を発動するなら魔力の通しやすい魔鉄以上がおすすめ」なんて情報は掲示板にも書いてあるしこの世界の常識として普通に知られていることである。
それに、鍛冶やエンチャントの練習で鉄や魔鉄で武器打った時はこれより魔力通しやすかったんだよね。
やっぱりこのオリハルコンの刀がおかしいんだよ。
「オリハルコンの割に魔力伝導性低いんだねー」
「言うほどか?ちょっと貸してみ」
「はい」
「······普通の刀のはず」
ボクから刀を受け取って色んな方向から眺めたり指で小突いたりと見分するイスファ。
「オレがかなり昔に打ったやつか。······切れ味や耐久性はちと低いが、魔力の通りは悪くないはずだぞ?少なくとも、お前がそんな表情する程通しにくくはない」
「えー?」
ちょっとどころじゃなくめちゃくちゃ通しにくいんだけど。
【魔力制御】まで進化してるボクの魔力操作が下手なんてことはないよねー?
「ズブの素人なら『お前の魔力操作が下手なんだよ。はい解散』で終わりなんだが、スノウの魔力操作精度はよく知ってるからなぁ。他に原因があるんだろうよ。つっても武器におかしな所は無ぇからあとはスノウの肉体ぐらいしか············あ」
「あ」って何。
「そんなことあんのか············?いや、決めつける前に確かめるか。スノウ、これに魔力通してくれ」
「めっちゃ通しやすい」
これもしかしなくても世界樹では?未加工の枝の状態なのに魔力たっぷり籠ってるよ。
「次これ」
「んー······さっきのには劣るけどなかなか通しやすいね」
魔力量は遜色ないけど魔力の通しやすさはそこそこ差あるから············トレント系の最上位、エンシェントトレントかな?木材系の素材としては世界樹の次くらいの代物だし。
にしてもなぜ木刀。
「ほい」
「ん?お······普通?」
魔力の質的に·········アダマンタイト?
さっきオリハルコンがめちゃ通しにくかったけどこれは何故か大丈夫だ。
「じゃあ最後」
「······今までで一番通しにくい」
さっきのオリハルコンよりも通しにくいよ、これ。パッと見ミスリルだけど、何したらこうなるの。
「大体分かった。お前難儀な体質してんなー············」
「え、もう分かったの?」
「ヒヒイロカネに比べたら可愛いもんだ」
イスファが語る、ボクがオリハルコンの刀に魔力を通しづらかった原因は大きく二つ。
それはボクの魔力と肉体の性質だ。
まずは肉体について。
そこらの素材を鼻で笑い、それより上となると世界樹やヒヒイロカネなど数える程しかないという、ボクの血の魔力伝導性。一般的な生物の血液は魔力伝導性が低いらしく、具体的に言うと鉄ぐらい。
人が「これは魔力を通しやすいな」と感じるのは、その物質の魔力伝導性が己の肉体より高いからであり、己の肉体より低い場合はもちろん「通しにくいな」と感じる。
魔力の通しやすさの基準となる己の肉体の魔力伝導性。それが異様に高いボクは世界樹やオレイカルコスのようなごく一部以外は魔力を通しにくいと感じるのである。
また、普通の生物にとって自分の身体に魔力を継続的に流して強化するというのは割と魔力を消費するうえに難易度高めらしく、ボクがリオンとの一戦で何気なく使っていた〈魔力身体強化〉は実は使用者が低ランク冒険者にはほとんどいない。中堅たるCランク辺りでもとどめの一撃を放つ際に瞬間的に発動するだけで、戦闘中に持続的に発動するのはBの上澄みが最低ラインとのこと。
ボクの場合は血液の魔力伝導性が異様に高いから難易度の面でも魔力消費の面でも常用できるのだ。消費した魔力の量に対する身体強化の効率も普通の生物と比べて段違いである。
ちなみに、イスファやミネルヴァなど十二英傑と比べてもボクの方が血液の魔力伝導性が圧倒的に高かったりする。神化した際に大幅に向上したものの、それでも個人差はあれど全員ミスリル程度だったらしい。
次に魔力について。
エンチャントにおいて、触媒に使えば【全属性強化】や【全属性耐性】が付与され、エンチャントの対象に処理を施せば相性関係なくエンチャントを付与できるというボクの血液と同じように、ボクの魔力は他のものとの親和性が非常に高い。特に全く異なる複数の性質を混ぜ合わせることに長けており、ラーニング系のスキルも無しにいくつもの【混成魔法】を保有しているのも、かつての邪神との戦いで【混成魔法】同士の〈複合魔法〉を発動できたのもこの魔力の性質によるものなのではないか、とエメロアやミネルヴァが推測している。
しかし、他のものとの親和性が高いというのがメリットでもありデメリットでもある。
ボクの魔力が他者の魔力と合わさると、その性質は他者のものと非常に似ているものに変質し、合わさった魔力は、二者の魔力が混ざり合っているというよりボクの魔力が他者の魔力に溶け込んでいるという方が近い状態となる。
それと似た現象が武器に魔力を通した際にも起こるのだ。
鍛冶師が打った武器には鍛冶師の魔力が籠っている。ボクが他者によって打たれた武器に魔力を流すと、ボクの魔力の性質は鍛冶師のものに近くなり、その武器全体に拡散し、溶け込んで馴染んでしまう。
武器はボクの魔力によって強化されるが、今回は武器を強化するのが目的ではない。自身の肉体と刀に絶えず魔力を循環させたいのだ。
また、ボク自身が打った武器に魔力を流した場合は魔力の拡散は起こらない。それどころかしれっとその金属の魔力伝導性を強化して、他の鍛冶師が同じ金属で打った武器より魔力を流しやすくなっていたりする。もちろん普通に魔力を流すことが可能である。
簡単にまとめると、
・他者が打った刀では〈魔力循環〉を刀に適用するのがほぼ不可能。刀は自身で打つ必要がある。
・ボク自身が打った刀はその金属本来より魔力伝導性が強化されるのであまり高位の金属を使う必要はない。
このぐらいだろうか。
「つまりは刀を自分で打つ所から始めろと」
「だな。刀の打ち方はちと特殊だしまだ教えてないから、カンナの流派の練習を始めるのには数日かかるな」
「······今日は?」
「無理だ。さすがのスノウでも刀を打てるようになるのに一日必要だろ」
理解と慣れと本番とで三日くらいは欲しいんですけど?
「······むぅ」
『ほっほっほ。それなら儂に任せてくだされ』
突如、地面から声が響いた。
「「「!?」」」
ここ屋敷の敷地内だから無断で入るの無理なはずなんだけど!?
しかもカンナも気付いてなかったってことは相当な手練れじゃん!
って、あ。この声は······。
『驚かせてしまい、すみませんの。おひいさまが困っているようでしたので、我慢できずに来てしまいました』
やっぱりヴォーロスか。確かに霊体なら地面をすり抜けることも可能だろうけど、出てきたタイミング的に近くにいたよね。
「話聞いてたよね······?」
『お会いしたのでが久々でしたのでつい············』
色々プレゼント貰ったのは感謝してるけど、盗み聞きは感心しないなー?
『まぁ本当に久しぶりなのよねー。1000年くらいは経ってるはず』
は!?
『あの爺馬鹿がアタシ達と1000年以上も会ってなかったってのを考えると、話をこっそり聞いてたぐらいならまだマシな方ね。ちゃんと助けになる方法は準備してるようだし?』
ボクとヘレナの念話は聞こえていないはずなのに、ヘレナの言葉にぴったりのタイミングでヴォーロスが地面からアイテムボックスを取り出した。
『こちらをどうぞ、おひいさま。中に入っておるヒヒイロカネと儂の鱗で刀を打ってくだされ』
「いや、ヒヒイロカネを扱うにはボクのスキルレベル足りないし、そもそも刀の打ち方覚えてないし」
『一度打ってみてくだされ。あ、ドワーフのお嬢さん。鍛冶場は何処ですかな?』
「お、お嬢さん?」
『まだ1000年も生きておらんでしょう?老いぼれからすればお嬢さんですな』
「これでも数百年生きてんだけどなー······。あ、鍛冶場はこっちだ。付いて来てくれ」
そうしてヴォーロスに言われるがままにヒヒイロカネとヴォーロスの鱗を打ったのだが············
「お、おおおおぉぉ············」
「眼前の光景が不自然過ぎて鳥肌立ってるんだが」
『儂の領分たる鉱石と他ならぬ儂の鱗ですからな。この程度は朝飯前ですぞ』
本来ならボクでは加工できないはずのヒヒイロカネやヴォーロスの鱗が、魔力を込めた鍛冶用ハンマーを打ち付けるだけで勝手に混ざって勝手に刀の形に変化していくという、何とも言えない気持ち悪さに襲われるボクとイスファであった。
Tips:ラーニング系のスキル
条件を満たした対象のスキルを自身の適性に関係なく習得する。ただし出力は自身の適性に応じて上下する




