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Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~  作者: 姫河ハヅキ


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第五十七話 邪神討伐編⑦

祝!ブックマーク1400突破!

この作品を読んでくださる方々のおかげです!ありがとうございます!

m(_ _)m

これからも頑張って更新していきたいと思います!

······テスト前やテスト期間は投稿できませんけどご了承ください。

「抜かせ!刀一本で我が触手を全て迎撃できると思うな!」


「···くっ」


 ニャルラトホテプは先程のように触手を一纏めにして突き出してくるのではなく、いくつかの塊に分けて触手を放ってくる。いくらカンナが強くても刀は一本。自分に向かってきたならともかく、他人に向けられた、分散している攻撃全てを迎撃するのはさすがに厳しい。


「でもね、これだけ散らばってたらボクでも止められるよ?」


「ぬう···」


 さすがにさっきみたいなドーン!って感じのを受け止めるのは無理だけど、今みたいにバラけてくれるなら特に問題はない。むしろHPやMPを回復してくれるいいカモである。


「皆、今の内に攻撃して!」


「よしきた!」


「分かったわ!」


「了解!」


「ん」


「舐めるなァ!貴様に魔力を吸われていようとも······」


 ニャルラトホテプの怒号と同時に現れ、ニャルラトホテプに攻撃しようとしている父さん達を貫こうとした数十本の触手を、それ以上の数の触手で押さえつける。


「そっちこそ舐めないでね。触手を出せるのはあんただけじゃないんだよ」


 ボクに触手をほとんど抑えられながらも父さん達の猛攻を難なく防ぐニャルラトホテプ。それどころか、ボクに話しかける余裕まである。


「そう強がりを言っているが、貴様、いつ瘴気に呑まれてもおかしくないぞ?」


 ······ちっ。バレちゃったか·········。皆はニャルラトホテプの方を向いてるからバレないと思ったんだけどな。心配させたくないし。


「 !···スノウ······」


 ニャルラトホテプの言葉を聞いて、何かに思い至った様子のカンナがボクを見て息を呑む。当然だ。それ程までにボクの姿は変わってしまっているのだから。

 ボクのアバターには至る所に黒い紋様が刻まれており、その全てから濃密な瘴気を漂わせている。ツインテールに結んで肩の少し下くらいだった銀髪は腰を越えるほどにまで伸び、その半分以上が黒く染まってしまっていた。カンナの視線から察するに、目も片方か両方かは分からないが変貌してしまっているようだ。


「大丈夫。理性は全然残ってるし、ほとんど異常はないよ」


 実は瘴気による状態異常の影響で今もHPがゴリゴリ減ってるんだけどね!「瘴毒」って毒の字が入ってるのに【世界樹の加護】を貫通してきてるんだよなぁ!おかげでさっき習得した【瘴気耐性】のスキルレベルがもう60いったけど!ってもう70いったぁ!!

 でも魔力や霊力と一緒に瘴気を吸収するとHPが回復する。わけわからん!


「ほんと?」


「ほんとほんと」


 うん。ほとんど、ね。······心の中で引っかかる、ドロドロとしたナニカがあるのは些細なことだ。いくらこのゲームがリアルだとはいえ、さすがに精神にまで干渉はしてこないはずだ。多分、悪い予感だとか、不安だとかが膨れ上がってるだけだと思う。

 今はボス戦だ。集中しよう。


「いつまでその空元気が続くか見物だな?」

 

「はっ、こっちには頼もしい味方が多くてね。ボクの限界が来るより先に味方があんたを倒すだろうよ」

 

「やれるものならやってみせろぉ!」 


 吼えるニャルラトホテプに、父さん達が対抗するように啖呵を切る。


「上等!息子にそこまで言われて、かっこいい所見せないわけにはいかないだろ!」


「私達が頼れるってことを見せつけるわよ!」


 何かのスキルによるものなのか急に父さんのスピードが増し、ニャルラトホテプの守りをすり抜けて、バールで殴りつける。

 ······戦闘中のはずなのにバールのせいで緊張感が行方不明だなぁ。え、バールで気が抜けるのボクだけ?違うよね?ほら、あの作品ラブクラフトコメディだから·········。


「んー······バールじゃちと軽いな。やっぱいつものにするか」


 結局あの長柄武器に戻すのね······。

 父さんは和風メイド服のスキルである【瞬間装備】で斧と大槌をくっつけたような例の長柄武器に換装し、すぐさま斧部分で斬りつける。


「どっせい!」


「バカめ!その動きは隙が多いと分からぬか!」


 父さんが長柄武器を振り切った隙を突いて触手を繰り出すが、その隙はカンナがカバーする。


「馬鹿。こっち、五人」


「ちいっ。厄介な奴らだ」


 父さんとカンナは、まるで長年一緒に戦ってきた歴戦のコンビかのように、間断なく連続攻撃をニャルラトホテプに叩き込む。

 父さんが薙ぎ、カンナが斬る。カンナが斬り、父さんが薙ぐ。舞うように華麗なコンビネーションで瞬く間にニャルラトホテプの傷が増えていく。


「まだまだいくぞ!おらぁっ!」


「んっ」


「ほいさ!」


「てっ」


「おらよっ!」


「ぬっ」


「うぐ。小癪なぁ···!」


 ん?リュミナだけニャルラトホテプに斬りかからないと思ったら魔法陣を展開してる?


「聖騎士王、リュミナ·セイリアの名において、誓約と断罪を司りし女神の権能の顕現を希う。誓うは混沌の邪神の討滅、願うは汝の加護。我が魂を対価に奇跡を此処に。これ僕の奥の手だからね······『聖域展開』!」


 リュミナが祝詞を唱え終わり剣を地面に突き立てると、リュミナの足元から光り輝く魔法陣がどんどんと広がっていく。地面に魔法陣が広がると同時に清浄な魔力で満たされた空間が広がり、この戦いの場を全て包み込む。その空間に触れた触手は尽く浄化され、塵となって消えていく。

 ······って熱ぅ!?ヤバ、ボクもダメージ受けてるんだけど!?焦げる!焦げる!

 結構な量の瘴気を吸ったとはいえ、邪神などではないボクがダメージを受けたのだ。邪神であるニャルラトホテプはボクよりダメージが深刻らしく、父さんとカンナによって付けられた傷の再生速度が著しく下がり、本体以外の、魔法陣から出した触手は出した端から浄化されて消えていく。

ニャルラトホテプにとっては絶対絶命の状況かと思われたが、まだニャルラトホテプの瘴気は活性化し、何やら圧縮をしている。まだ何か手があるよう。

 父さんとカンナはそれに気づかず、追い打ちをかけようと瞬時にニャルラトホテプへと迫る。

 よし!ついさっき【瘴気耐性】がカンストして【瘴気適応】に進化したからもう吸収はしなくていい!いざという時の二人のフォローに回ろう!

 【瘴気適応】と同時に習得した【呪力操作】の情報が頭に流れ込んでくる。これは、霊力と瘴気を混ぜることによって発生する呪力というものを操作するらしい。瘴気とか呪力を体外に放出すると、リュミナの『聖域展開』でボクまでダメージ受けちゃうから呪力操作は体内に留めて、呪力による身体強化を自らに施してから父さん達の元へと駆ける。


「聖炎に続いて聖域だと!?かくなるうえは···!」


「遅い!」


「とどめ」


「·········ふっ」


 肉体がサラサラと消えていくニャルラトホテプに父さんとカンナがとどめを刺そうとした瞬間、ニャルラトホテプの巨体が突然縮んで二人の大振りの一撃が空を切る。

 飛びかかった二人は空中におり、ニャルラトホテプが何かやろうとしていることに勘付きつつも、足場が無く移動や回避ができない。


「うぇ!?」


「っ!」


「かかったな!」


 ニャルラトホテプが先程から圧縮していた瘴気が形を成し、極太の黒い大杭を形作る。二本の大杭は高速で回転をしながら二人に風穴を開けんと射出される。

 くぅっ。こういうこともあるかと予想はしてたけど、予想より大杭が速い。元々の距離が離れていたことがあって間に合うかどうかが怪しい。アーツを使えば間に合うだろうが、その場合は大杭どちらか一つしか相殺できそうにない。

 カンナは十二英傑の一人で、刀使いなのでAGIはかなり高そうだが、さすがに足場がないとその素早さを発揮できないだろう。

 父さんにしても、海面を走ったことがあるとは本人から聞いたが、空中を蹴ったというのはまだ聞いていない。父さんも回避は厳しいはず。

 さて、どっちを助けるべきか。家族として父さんを助けたい気持ちはあるけども、戦力を考えるとカンナ。そのうえ、プレイヤーである父さんは死んでも多少のデスペナと一緒にリスポーンするだけだが、現地人のカンナは一度死んだらそれで終わりだ。

 うん、ここは父さんには悪いけどカンナを·········。

 そんなボクの心を読んだのか、カンナがボクに向かって叫ぶ。


「スノウ、アイリス!」


 名前を呼ぶだけだったが、瞬時にカンナの意図を察したボクは父さんに向かう大杭に右腕を向けて照準を合わせる。

 強弓を引絞るイメージで右腕に力を溜め、消費は重いが【混成魔法】で金炎を腕に纏わせる。

 STRが許す全力での踏み込みに加えて、火属性の『魔砲』とほぼパターン化したいつものコンボで何重にも加速し、これまたいつものアーツを発動させる。

 呪力による身体強化とメイド服の補正でいつもより速いよっ!


「〈アサルト·スティング〉っ!」


 迸る一条の金炎。以前の数倍の速度で放った、ボクが習得している中で最速を誇る突進系アーツを発動すると、すぐに父さん達の所まで辿り着き、父さんに向かっていた大杭をバキィン、という破砕音と共に破壊する。


「助かった!」


「カンナに言われなかったら父さんを見捨ててたから礼はいらないよ!」


「だよな!俺だってそうするからな!」


 で、カンナは·········やっぱり無事か。

 振り切った刀をどうにか引き戻して大杭を受け流したようだが、刀という武器の性質上、耐久性に難があり、今の受け流しで刃こぼれしてしまっている。

 それにしても、ニャルラトホテプ。大きい時は明らかにタコだったのに、小さくなったらイカになってない?RPG的に言えば、クラーケンナイト?まぁ、ニャルラトホテプだからそこまで疑問にはならないけど。


「勘がいいな、小娘」


「勘がいいというより、瘴気を視てるからだけどね」


 最初の内はただの黒い靄にしか見えなかったけど、瘴気を宿したモンスターと戦ったり、ニャルラトホテプの瘴気を吸収していたりしたらいつの間にか細かく見えるようになってたんだよねぇ。


「え、瘴気も視えるとかエメロアからも聴いてないんだけど」


 エメロアにも言ってないからね。というか、言う暇無かったし。


「でさ、ニャルラトホテプ。もう諦めたら?このメンツに勝てる自信あるの?」


 ボクはない。微塵もない。


「ぬう······だが、諦めてなるものかああああああああああああ!!!」


 うわっ。今度は触手の生成や再生が間に合うくらいのサイズまで巨大化しようとしてる。めんどくさいなぁ。

 戦闘前に聞いた話によると、いつもは邪神核っていう、モンスターにおける魔核的な部位を破壊して倒してるらしいけど·········もしかして、ニャルラトホテプの体内を絶えず動き回っているあの丸いのかな?あれ破壊するのダルそうなんだけど?

 さっきみたいに父さんとカンナが華麗な連続攻撃を繰り出してもすぐに回復するし、マジでめんどくさいなこいつ·········。どうやって倒そう。

 そうやって悩んでいたボクの脳に、誰かの声がいきなり響いてくる。


『あぁ妬ましい妬ましい妬ましい!まだ目覚めてもいないのにあの方からの寵愛をいただけるなんて!』


 ちょ、誰!?いきなり人の脳内でホラー展開するのやめてくれる!?


『でもこいつを助けろってのがあの方の命令だし·········。よし、私が力を貸すから貴方がやりなさい』


 脳内の声がボクの心の叫びを無視して言うと、ボクにいくつかのスキルの情報が流れ込む。

 今回使うスキルは······これか。この声の主に会ったことも会った記憶もないが、何故か分かる。この相手は信用できる、と。

 そう感じる己の心を信じて、脳内の声と同時にスキル名を叫ぶ。


「『【羨望の呪鎖】』!」


 ニャルラトホテプから吸収していた瘴気をごっそりと減らしてどす黒い鎖が出現し、瞬く間にニャルラトホテプに巻き付いて拘束する。途端に触手の生成と再生が止まり、動きまで鈍くなる。

 【羨望の呪鎖】。これ、主な効果はスキル封印っぽい?あと副次的効果としてバインド系のデバフ?

 お!この鎖経由でも魔力と霊力のドレインは可能なのね。ニャルラトホテプを弱体化させるためにやっておこう。


「なんだそれ?」


「ボクも知らん!とりあえず動きやらスキルやら封じたからお願い!」


「任された!」


 ボクに応えてニャルラトホテプにとどめをさそうと走り出したのはリュミナ。あれ、神域展開中でも動けるんだ?さっきまで全く動いてなかったから、てっきり発動中は移動不可だと思ってたよ。

 ボクの金炎とは比べ物にならない量の聖属性の魔力を振りかぶったリュミナは、大上段から思いっきり聖剣を振り下ろす。


「〈闇討ち祓う破邪の聖剣(エクスカリバー)〉!」 


 目を開けていられないほどに眩しい光の奔流がニャルラトホテプに直撃する。いくら邪神とはいえ、再生を封じられた状態でこの一撃を耐えられるとは思わなかったのだが·········。


「ま、まだだ。まだ我は死ねぬうううう」


 その肉体の半分以上を失い、残った半身も段々と消えていくなか、ニャルラトホテプはまだ生きていた。見るからにいつ消えてもおかしくないのだが、何故かこのまま放置するだけでは死にそうとは到底思えなかった。


「嘘だろう!?」


「我はまだ美少女に触手プレイをしておらぬ!せめて美少女の下着をこの目で見るまでは死ねぬううううううううううううう!」


 変態もここまでくると立派だね!?どこからその情熱が出てくるの!?

 ······あ。若干忘れてたけど、【羨望の呪鎖】も瘴気を含んでいるから、リュミナの一撃で消えかけてる。呪力を注いで維持させようとするも、術式の根幹的な部分が破壊されたようで、スキルの再起動は無理そう。あと少しスキルの発動を維持するのが精々だ。

 この鎖が消えると、せっかく封印していたニャルラトホテプのスキルが再び使えるようになってしまう。鎖を介して魔力、霊力、瘴気を吸収しているから全回復はしないだろうが、ボク一人では吸収速度のたかが知れている。このままだとかなり回復されてしまう。


「ボクのデバフ解けそう!」


「マジか!?つっても俺、そんな高火力の聖属性のスキルとか持ってないんだがな········」


「私もよー」


「私がやる」


「カンナ?」


 カンナからは、聖属性魔法を使えはするが、邪神を倒す威力が出せる程の適性は無いと聞いている。そんなカンナがどうやって·········あ、邪神核か。邪神核はニャルラトホテプの体内を常に動き回っているため捉えにくいが、カンナの速さならそれを斬るのは難しくないだろう。

 居合の姿勢に入ったカンナから大量の魔力が溢れ出してくる。これは······雷属性か。風属性や雷属性の魔法にはAGIバフがかかるやつがあるらしいし、そういうのかな?

 次の瞬間、カンナの身に起きた変化はボクの想像を絶するものだった。


「『転魔:雷鳴』」


 っ!?身体全てが雷になってる!?

 身体中から雷を弾けさせるカンナがニャルラトホテプを見据え、目にも留まらぬ速度で抜刀術を繰り出す。


「〈雷速一閃·武御雷(タケミカヅチ)〉」


 気付けば、カンナは刀を振り切っていた。いつ走り出したのかも、いつニャルラトホテプを斬ったのかも、いつ抜刀術が終わったのかも、何もかもが速すぎて認識できなかった。

 これで十割のステータスじゃないってんだから恐ろしいよ·········。

 邪神核を身体ごと真っ二つに斬られ、半身どころか四分の一しかもう残っていないニャルラトホテプだったが、それでも、まだ生きていた。全身を雷と化した魔法を解除し、元の身体に戻ったカンナが目を見開いて驚いている。


「邪神核は斬ったのに······!?」


 ボクの眼で視ても、確かに邪神核はカンナによって斬られてる。なのに、ニャルラトホテプはまだ倒れない。


「オオオオオオ!美少女!!触手プレイ!!!下着イイイイイイイイイ!!!!」


 あれ程の技を二発も受けてまだ死なないとか、マジでどんな執念してんの!?


「こいつ、ギミック解かないと倒せない系のボスだっけ!?」


「もしそうだとしたらどんなギミックしてんの!?」


 もしこいつがギミックボスだとしてもギミックのヒントなんて·········もしや。


「あることを試してもいい?」


「構わないよ。僕もカンナも大技を放った後だからさらなる追撃は難しい。可能性があるのならなんでも試してくれ」


「何か分かったのか?」


「分かったといえばいいのか、元から分かってたと言うべきなのか······」


 ボクの予想が当たってたら、さすがに分かり易すぎると思うんだけどなぁ·········。


「ふんはぁ!」


 所々千切れているようにも見える鎖を力一杯引っ張ってニャルラトホテプを手繰り寄せる。大迫力で吼えてはいるけど、小さくなってさらに四等分されてるのでかなり軽い。片手でいけた。


「ぬうおおお!?」


 ニャルラトホテプが接近してくるのに合わせて霊力と瘴気を混ぜ混ぜして呪力身体強化。【混成魔法】で火属性と聖属性を混ぜ混ぜしながら、同時に魔力と霊力も混ぜ混ぜして仙力を練り上げる。

 あっこれ制御めちゃムズい。並列処理に不慣れなせいでせっかく吸収した各種リソースがエグい勢いで減ってくぅうううううううう!!

 えぇい男は度胸!というかここまでやったのに制御放棄したら爆発しそう!

 【混成魔法】と【仙闘術】を同時発動させて金炎を右足に込める。ニャルラトホテプが蹴りやすい位置に来るようにタイミングを合わせて左足を少し前に出し、左足を軸足にして右後ろ回し蹴りっ!


「 !小娘、貴様黒······」


「〈黄金桜〉ぁ!」


 ニャルラトホテプの邪神核を完膚なきまでに粉砕し、炸裂させた黄金の炎が綺麗な桜の花を咲かせる。

 これでようやく本当にとどめを刺せたのだろう。ニャルラトホテプが心なしか安らかそうな雰囲気でサラサラと消えていく。


「···最後に戦えたのが······貴様でよかったと心から思う」


「こっちからしたら、始めて戦う邪神があんたで、ちょっと邪神が苦手になったかな······」


「安心しろ。我以上の変態は、ほぼおらん」


「ほぼ···?」


 むしろあんた以上がいると聞いて不安になったわ。

 

「···最後に、一つ言わせてくれ」


「なに?」


「···貴様に黒はまだ似合わぬ。今は背伸びなどせず、もう少し育ってから、子を孕みたいと思った奴の前でのみ黒を着けよ······」


「最期の一言それ!?」


 ボクは男だし余計なお世話だよ!

 ニャルラトホテプはその一言を最期に、完全に塵になって消えていった·········。

 ············複雑な気分だ···············。


「最後、何話してたんだ?」


「聞かないで······」


「お、おう」


 父さんはボクの心境をある程度察して、そこで追及をやめてくれた。


「じゃ、じゃあニャルラトホテプのギミックはなんだったんだ?」


「······下着見せてから攻撃したらあっさり撃破できたよ·········」


「そうか······」


「あらー······」


「変態······」


「うん······」


「「「「「·········」」」」」


 邪神討伐の達成感を感じる暇もなく、何とも言えない空気になるボク達。その静寂をズズン···、という地響きが打ち破る。それも、人魚の里の方角から地響きは聞こえた。


「今のは!?」


「嫌な予感が的中したか······」


「リュミナ、何か心当たりが?」


「人魚達が言うには、今回出没したのは下級の使役型らしいじゃないか。でも、ニャルラトホテプは違う。あいつの異能と性格は多少特殊だが、あれでもれっきとした単騎戦闘型だ。それに、異能の特殊性が高いせいで戦闘力は中級クラスだが、分類としては上級だ」


 だから、ニャルラトホテプが出てきた時にリュミナはあんなに慌てていたのか。今になってやっと納得したよ。


「ってことは······」


「この戦いはまだ終わっていない。人魚の里にも邪神が攻め込んでいる可能性がある」


 ニャルラトホテプの討伐で終わったと思われた邪神騒動。どうやらまだ続くようだ。

 ニャルラトホテプ以上の変態が出てこないようにと切に願う·········。




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― 新着の感想 ―
[一言] 神話生物でこれ以上の変態? …………ショゴスかな? あいつは必要になれば、自身の体をいろいろ変えて“変態”できるから。 つまり奴は変態の申し子(目逸らし)
[一言] コイツだけでも色々なことあったが前哨戦かい Σ(゜Д゜ υ) スノウもドレイン系の技は解るが下手に取り込み過ぎると進化した時にとんでもない進化を辿ることに成るぞ(。-ω-) これ以上エッチィ…
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