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Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~  作者: 姫河ハヅキ


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第五十一話 邪神討伐編①

「全くもう。私達だって戦えるのよ?」


「おかーさんはリル達を何だと思ってるのー!」


 愛娘······ですかねぇ·········。


「···明らかに戦闘要員だとは思っていない顔。断固抗議する」


「そうなのです!」


 船から降りて人魚の里に向かう道中。ネプちゃんの術によって海中に潜れるようになった船の上でのんびりと話すボク達。

 海底では邪神が出現しているというのに、危機感が全く感じられない雰囲気である。


「何が起こるか分かんないし、できればリル達には戦ってほしくないんだよ。特に、ボクから離れた所ではね」


「心配しすぎではないかのう。邪神が相手ならばともかく、こやつらの相手は雑魚じゃからな」


「それはそうなんだけどね」


「大丈夫です、お嬢様。リル様、ヴァルナ様、イナバ様、ユリア様は私が命に代えても守ります」


 段々と、赤面芸とテンパり芸が板についてきたアルフは、そうボクを元気づけてくれるが素直に喜べない。

 う〜ん······その気持ちは嬉しいけど、アルフにも死んでほしくないからね。命を張るのは、プレイヤーであるボクの役目だよ。


「アルフも死んじゃダメだよ?ボクにとっては、アルフも大切なんだから」


「はっ、はい!」


 なんでアルフは、ボクが近づく度にテンパってるんだろう·········?



◇◆◇保護者side◇◆◇


 スノウがアルフレッドを近くで見上げるような姿勢になり、スノウとの顔の近さと、巫女服から見えてしまった谷間によってアルフレッドがワタワタしている様子を、パンツァーやアイリスを筆頭とした保護者組が眺めていた。

 このような保護者会議はアイリス達と会う前からパンツァー、エメロア、リオン、アルマの四人で度々行っているのだが、雪は気づいていない。


「スノウちゃんって〜、いつから男殺しなのかしら〜?」


「いつからか、というのは私達にも分からなくて、気がついたらああなってたんですよね」


 幼い頃から雪は小柄であり、そこにちょこまかした動きや少し抜けている所、おどおどした仕草に不安げな表情などが加わり、雪は男女問わず他人の庇護欲をかなりくすぐる存在となっている。雪や雫乃、柊和が通っている高校では、雪本人は知らないが、雪は守ってあげたくなる生徒ナンバーワンの称号を持っていたりする程だ。

 もっとも、それを本人が聞けば頬を膨らませて「もう!ボクだって自衛くらいはできるんだから子供扱いしないでほしいな!可愛いとか嬉しくないし!」と怒るだろう。

 そういう所が可愛いと言われていることに気づかないのが雪である。頬を膨らませて怒る男子高校生など、ほとんどいないという点に思い至らない故に雪は雪なのだ。


「いや、スノウは元からあんな感じだったぞ?最初から一人称が『ボク』だったのには驚いたが、多分喋り方や仕草は昔とほとんど変わってないはず······。胸が付いたせいで、さらに悪化はしてるかもだが」


 厳密に言うと、おどおどした仕草や不安げな表情は幼い頃より多少はマシになっている。ラノベやアニメ、ソシャゲにのめり込み、おどおどしたり不安がったりする暇が無くなったと言うべきかもしれないが、とりあえずマシにはなっているのだ。


「あの小動物っぽい動きは元からなんだねー」


「母としては、息子があんな可愛らしい動きをするのはどうかと思うんですけどねぇ。まあ、可愛いからいいんですけど」


「いいのか······?」


 まぁ、どれだけ一人称や喋り方、仕草を変えようとも、100人に聞けばほぼ全員が美少女と答えるであろう美貌を持っているので、可愛いと言われるのは避けられないと思われる。雪はもういっそ、可愛いの方向に突き進んでしまう方が楽ではないのだろうか。

 雪と似た美貌を持つ菖蒲は既に諦めている。星宮家の男の運命なのである。


「息子?」


「「「「「「あっ」」」」」」


 スノウの事情を知らないカンナが首をかしげる。カンナが合流したのはつい先程のことであり、彼女がスノウの事情を知る暇はなかったため、知っているはずがない。

 この場で話し合っている面々だとカンナ以外の全員がスノウの事情を知っているが、もはや当たり前のことだと認識しているので、全員がカンナに説明するのを忘れていたのだ。

 この後にカンナにスノウの事情が説明されたのだが、説明を受けた後もカンナのスノウへの印象は「ごはんがおいしいメイド」のままだったという。

 


◇◆◇その他side◇◆◇


 スノウのようにリル達とじゃれ合うのではなく、アイリスやパンツァーのようにスノウ達を見守るのでもなく、イスファ、ミネルヴァ、ネプテューヌは少々真面目な話をしている。


「あれ?そういやオレらって、海上で船を守っておく予定じゃなかったっけか?」


「た、確かに···。まだメンテナンスできてないからしまえないですし、他にこの船を置いておくスペースが無いですもんね」


 収納スペースはあるにはあるのだが、一度使っているのにメンテナンスをせずに収納するなど、イスファとミネルヴァの職人としての矜持が許さない。かといって海上に放置するのも論外だ。二人は船と共に海上に残るつもりだったのだが、いつの間にか自分達も海底に向かっていることに今更ながら気付く。


「あぁ、船は私の神殿の中で預かっておくから、君達も防衛に加わってほしいんだ」


 ネプテューヌの言葉を聞いて、目を丸くして驚く二人。


「お前が人工物を自分の神殿の中に入れるなんて珍しいな。そんなに切羽詰まってる状況でもなかろうに」


 神が自分の神官や自分への供物以外を神殿の中に受け入れることなど滅多にない。よっぽどの事情がないと、ネプテューヌ程に人に対してフレンドリーな神でも、神殿の中に部外者、もしくは自分に無関係な品など入れないのだ。


「なんだか胸騒ぎがするから、できる備えは十分にしておこうと思ってね。この船にはもう私の祝福をかけてあるから、水圧による損傷、水に浸かっているせいでの劣化の心配はないよ」


「それは助かります。私も対水圧、耐腐食のエンチャントをかけていますが、さすがに海底はあまり自信が無いので」


「君達が作ったんなら私の祝福が無くても大丈夫だとは思うけど、一応ね」


 実はネプテューヌの祝福が無くても耐えられなくはないのだが、メンテナンスが面倒になるので、祝福の効果は一応ある。


「あ、そうだ。ネプテューヌ、アイリス、セナ、スノウ、リル、ヴァルナ、イナバ、あとユリアにも祝福しといてくれ。水中戦闘ではお前の祝福がありがたい」


「言われなくてもしてあるよ。こちらから頼んでいるのだから、そのくらいのサービスは当然だ」


 海神の祝福。この祝福を受けた者はありとあらゆる水の影響を無効化するとまではいかないが、溺死や水圧による圧死など、水災で死ぬことがなくなる。また、水属性魔法全般で受けるダメージが半減し、自身が水属性魔法を使用する時は威力が五割程度増加する。それと、水中での呼吸が可能となる。

 ネプテューヌによってしれっと凄まじい物を授かっているスノウ達一行。全プレイヤーの中で最速で神の祝福を受けたことに気付くのは、まだまだ先のことである。


「お、そろそろ到着しそうだ」


 船の前方には、光る珊瑚で造られた色とりどりの建造物がきらめき、いかにも華美荘厳という言葉が似合う派手な街があった。


「······ここに来ると毎回思うんだが、派手すぎねぇか?」


「眩しい、です」


「んー···人魚達に任せてたら、いつの間にかこうなったんだよ。ところで、人型に戻っていいかな?いつも人型だから竜状態だと違和感あるし、人型の方が過ごしやすいんだ」


「勝手に戻ったらスノウが文句言いそうだけどな。あと、リルとかヴァルナとかイナバとか、人化してる奴ら多いからお前はそのままでいとけ。需要がある」


「どこに!?」


 イスファによく分からない理由で止められ、納得はしていないが渋々竜のままでいることにしたネプテューヌであった。



◇◆◇スノウside◇◆◇


 海底にあるとは思えないくらい明るい街。それを包むような半透明のドーム状の結界らしきものを通り抜け、海底の里へと降りる。

 初めて降り立った土地に感激するボク達だったが、第一印象としては、感激とはかなり離れていた。


「眩しいなぁ······」


「······水棲の魔物に襲われないのかしら」


「眩しいのー」


「···目が痛い」


「もうちょっと暗くできないのです?」


 言い方に差はあるが、満場一致の「眩しい」である。それ以外の印象が抱けない程の明るさだからしょうがないね。


「日傘あるか?」


「あーちゃん、ここはゲームだから大丈夫よ」


 父さんと母さんは、つい現実と同じやり取りをしてしまっている。父さんは色素欠乏症だから、外出する時は日傘が必須だもんねぇ。

 それなのに、父さんは外出時に鞄を持っていないから、小さめの鞄を持ち運んでいる母さんに日傘を預けるので、結構高い頻度でこのやり取りが行われていた。最近は離れて暮らしてるからあんまり見てないけど。

 そして今の「あーちゃん」呼び。これは現実でも人目が多い所ではあまり使わない。いつもは身内がいる時にしか使わないのだが、父さんが現実と同じやり取りを始めたので、つられてしまったようだ。ちなみに、ボクは「ゆーちゃん」、雫乃は「しーちゃん」、柊和姉は「ひーちゃん」呼びである。

 え?「どうでもいい」って?だよね。


「なんでこんなに眩しいんだろう···」


「俺達が初めて来た時からこんなんだったからなぁ。ネプに聞いてみたらどうだ?」


「おじさん達は何回か来てるの?」


「ああ、ネプとは昔からの付き合いだからな。······っと、そろそろ来るな」


 ボクと世間話をしていたおじさんが突然身構える。別に嫌な視線とかは感じないけ·········何かの大群が来てるな。敵ではなさそうだが。


「おじさん、これから何が来るの?」


「なんつーか······刺激が強いから、嬢ちゃんは目を瞑っておく方がいいかもしれねぇ」


 その忠告は時既に遅く、かなりの勢いで近付いてきた大群が姿を見せる。

 姿を見せたのは人魚の大群。それも全員が上半身が裸の人魚達だ。人魚には当然男性もいるのだが女性の割合がかなり高く、おじさんがボクに、刺激が強いと言った理由がよく分かる。まぁ、ボクは別に女性の裸を見ても何とも思わないんだけどね。ボクの近くでうずくまっているアルフには刺激が強かったようだ。


「あ、父さんも大丈夫なんだ」


「不特定多数の女性の裸を見ても、なんてことないな。俺は晴夏一筋だ」


「あーちゃん·········!」


 アッハイ。両親のイチャイチャシーンとか息子にはキツいんで別の場所でお願いします。あと父さん、母さんの本名言っちゃってるよ。それに母さんもさっきから······いや?別に本名を言ってはいないな?現実での名前が菖蒲、ゲーム内ではアイリスだから、結局あーちゃん呼びなのに変わりはないのか。

 人魚達は初めて来たボクや父さん達に興味津々なのかキャアキャアと騒ぎながらこちらへとすごい速さで向かってくる。

 邪神が出現してるはずなのに、緊張感無いなこの人魚達。いや、ボク達が言えることでもないんだけど。


「パンツァーさん達と······誰?」


「お嬢ちゃん達どっから来たの?」


「可愛い女の子達が来たー!」


「ここは今危ないから来ちゃダメよ?」


「飴ちゃん食べる?」


 ちょ、一気に言われても聞き取れないって。

 というか、リル達をお菓子で餌付けしようとしている人魚もいるな。リル達三人娘はボクが作ったお菓子で舌が肥えているだろうから、そんな飴ちゃん一つだと餌付けは到底無理だね。


「君達、状況はどうだい?」


 ネプちゃんがそう聞いた瞬間に人魚達は静かになり、ネプちゃんの質問にはある一人の人魚が答える。


「はい。今は休憩と戦闘をローテーションしていてもどうにか防衛線を保ててはいますが、怪我人が少なくありません。これ以上長引くとなると、怪我人が増えてローテーションが崩壊し、休憩が取れなくなり、次第に戦線の維持が難しくなるかと」


 思っていた以上に状況が逼迫していた。おじさん達十二英傑からしたら、支援型が呼び出すモンスターは弱くても、人魚達からしたら油断できないくらいの強さはあるのかも?リル達が心配だなぁ。


「そんじゃ、さっさと討伐に行くか」


「そうね〜」


「うむ。······そういえば、イスファとミネルヴァは海上で船を守るのではなかったかの?」


「ネプに頼まれたから、船はネプに預けてオレらも防衛だ」


「あまり戦いは得意じゃないですが···頑張ります」


 防衛に二人も加わるなら安心か。本業は職人だと言っていたけど、十二英傑のメンバーなのだから、戦闘力は凄まじく高いだろう。


「イスファ、ミネルヴァ。リル達を頼んでもいいかな?」


「任しとけ。一緒に戦うんだし、守ってやるよ」


「わ、私にできる範囲で頑張ります···」


 さすがイスファにミネルヴァ。身長はボクより小さいはずなのに、なんだか背中が大きく見えるよ。


「······何か馬鹿にされたような気がする」


「······不愉快なことを言われた気がします」


 二人共鋭すぎない!?


「さぁ?気のせいじゃない?」


 馬鹿にはしてないから、一応褒めてるから。

 何食わぬ顔で結界の出入り口に向かう。


「行ってくるよ」


「一狩り行こうぜ!」


「一狩り行くわよ!」


「行ってきまーす!」


「うむ、行くかのう」


「行くわよ〜」


「出発」


「······この緊張感の無さ、どうにかならねぇのか?」


「頑張れパンツァー。ブレーキ役はお前だけだ」


「マジで!?」


 それぞれの言葉でバラバラに意気込むボク達。

 何やらおじさんが悩んでいるようだが、そんなことは気にせず、勢いよくモンスターの群れに突撃するボク達であった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >あ、そうだ。ネプテューヌ、アイリス、セナ、スノウ、リル、ヴァルナ、イナバ、あとユリアにも祝福しといてくれ。水中戦闘ではお前の祝福がありがたい 水上を理不尽に走る熊姐さん、水中でも動き回れ…
[一言] 今思ったのだがスノウ達でアイドル(ゲーム内限定)活動すればPRやイベント用コンパニオンとして運営が雇えばイベントでも変に活躍しなくてすむし今の強さなら運営側の人間として誤魔化せるだろ(#゜Д…
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