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Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~  作者: 姫河ハヅキ


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第四十八話 船上の修羅、海上の竜

最近執筆時間があまり取れなくて投稿が少し遅れ気味(ヽ´ω`)

度々投稿が遅くなって大変申し訳ないです。でも、テスト前、テスト期間以外は週一投稿頑張るので待っていただけると嬉しいですm(_ _)m

「ふぅ。食った食った」


「こんなに食べたの、リアルでもこっちでも久しぶりだよね」 


 昼食を終え、現在は食休み中。父さんとボクは二人揃ってお腹をさすりながら、消化が終わって満足に動けるようになるまで休憩している。

 このゲームには、満足感や味覚は十分に再現されているのだが、わざとなのか満腹感は実装されていない。ゲーム内ではいくらでも食べることができるうえに、どれだけ食べてもリアルの自分は全く太らないので、このゲームをプレイする目的がグルメの人もいるらしい、とは食事中に父さんから聞いた情報だ。


「二人共、結構食べるのね〜」


「えぇ。うちの二人、見た目に反してかなり食べるんですよ」


「そうなのね〜。あと、さっきから思ってたのだけど〜、わざわざ敬語を使わなくてもいいのよ〜?」


「私はこの口調が素なんですよ。気にしないでください」


「分かったわ〜」


 ボク達ってそんなに食いしん坊だっけ?リル達三人娘の方がかなり食いしん坊だと思うんだけどなぁ。現に、三人揃ってお腹がぽっこりしてるし。 

 さすがに食べ過ぎじゃないかな·········。


「ちょっと苦しいの···」


「···げふ、満腹」


「しばらくは動けないのですー」


 まぁ、あれだけ食べてたらしばらくは動けないよね。少なくとも、一人あたりお寿司三十貫、海鮮丼2杯は食べてたし······。一体どこにそれだけの量が入るの?


『三人共、魔獣か精霊獣だからね。姿は変わっても胃袋の容量は変わらないんじゃない?』

 おぉ、ユリアが『念話』してきた。さっきまでは全くしてこなかったのに。


『家族団欒の邪魔をする趣味は私には無いからね』


 気遣いどうも。

 でもさ、ユリアの予想が合ってるとすると、イナバの食べてる量がリルやヴァルナとあんまり変わってないのはおかしくない?


『······言われてみれば』


 ヴァルナの食べた量がリルよりも少し多いのは体格だからかな?ってなるけど、イナバの食べる理由が説明できない。

 あの子ウサギだよ?


『·········』


 ······これ以上考えるのはやめておこうか。


『そうね······』


 うん、三人共食いしん坊って思っておこう。世の中には考えても分からないことなんていっぱいあるんだから、そういうものだと認識するのがいいんだ。

 と、ここで父さんがポツリと呟く。


「そういやさぁ、俺らイベントに参加してなくないか?」


「それもそうねぇ」


 ·········参加してないどころか、イベントの内容ろくに知らないなぁ。


「父さん、イベントってどんな内容なの?」


 ボクの言葉を聞いた父さんが、呆れたような目でボクを見つめてくる。


「お前なぁ。メニュー開いてお知らせ見ればいいじゃんか。というか、一週間くらい前にシステムメッセージ来なかったっけ?」


「あっ」


 そんなのが来てたような来てなかったような············来てたな。元々、夏イベントに興味があったからこの街に来たんだっけ。

 早速イベント内容をチェック。


「なになに······ふむ」


 これ、ボクが参加するメリットあんまり無いイベントだ。

 イベントは三日間開催され、一日目は運動会っぽいのと、コンテストが行われるらしい。運動会の方はビーチバレーやビーチフラッグなどの砂浜中心での競技もあれば、遠泳や競泳みたいな海中心での競技もある。身体を動かす競技だと魔術師系のプレイヤーが不利だと思うかもしれないが、競技中でも魔術の使用が可能なため、意外と差は無いらしい。

 コンテストの方は、鍛冶部門、魔法薬部門(調合と錬金術がこれに含まれる)、魔道具部門(付与、魔法陣学、刻印術など)の三部門に分かれて開催される。

 そして、どちらも優勝商品は何らかのエクストラスキルが得られる技能書。

 他人に極力水着を見られたくないボクには、水着姿を見られるデメリットが報酬に釣り合わない。エクストラスキルはもう間に合ってるし、スルーかなぁ。

 まぁ、まず優勝できるとは思えないけど。

 二日目は特殊フィールドでのサバイバル。時間の流れる速さが数倍化した、運営お手製の無人島で密度の高い数日を送ることになっている。モンスターの討伐数や希少なアイテムの発見など色々な事柄を点数としてカウントするので、戦闘職プレイヤーと生産プレイヤーのどちらにも優勝のチャンスはある。優勝商品は、超高火力の攻撃用アイテムとまだ材料すら判明していない程の高位ポーションのどちらかを選ぶことができる。

 ······二日目もそこまでうまみが無いな·········。大半の攻撃用アイテムはあまり威力が高くないけど自前の生産スキルで作ってるし、ユリアは【魔力自動回復】と【霊力自動回復】を、ヴァルナは【生命力自動回復】を、ボクは【生命力自動回復】以外の二つを持っていて、さらにはリルとイナバは回避主体の戦闘スタイルなので、うちのパーティーはポーションの使用頻度が結構低い。リルは小盾を持ってはいるが、基本的に受け流し用なのでダメージを食らったとしても普通のポーションで事足りる。

 今言った理由もあるけど、何より、無人島で競争するよりも今みたいにおじさんやリル達とのんびりする方が性に合うし、二日目もスルーかなぁ。

 三日目は昼間にイベントは開催されない。ただ、夜間限定の特殊イベントが開催される。夜間というだけで見当がつく人もいるだろうが一応言っておこう。夏祭りだ。 

 いかにも夏祭りの会場だと言わんばかりのデザインをした、運営お手製の特殊フィールド内で開催されるイベントで、時間の速さは数倍化されないが、イベント限定オブジェクトとして櫓や屋台が設置される。

 櫓で何らかのパフォーマンスをしたいプレイヤーや屋台で食べ物を売り出したいプレイヤーは事前に運営に申請しておくと、櫓、もしくは屋台を使わせて貰えるらしい。あと、屋台を出すのはプレイヤーだけではなく、運営も金魚すくいや射的(魔法)などの、プレイヤーではまだ再現が難しい、夏祭り定番の屋台を開くそう。

 さらに、夏祭り終盤では特設ステージが設置され、あるコンテスト的な催し物があるので是非最後まで参加してほしい·········要約するとこんな所か。


「チェックは終わったか?」


「あぁ、うん。ただ、一日目と二日目は特に興味を惹かれなかったからスルーで、三日目も別の理由でスルーかな」


 現実で色々あって夏祭りだとかお祭り系のイベントは苦手なのだ。

 ただしハロウィンは例外。メイクやら仮面やらで素顔を隠せばナンパもされないので割と楽しめる。


「そりゃそうか。お前、夏祭りは苦手だもんな」


「···おかーさん、夏祭りって何?食べ物、ある?」


 やっぱりヴァルナが最初に聞くのはそれなのか······。


「ありはするけど、今の食材系アイテムの状況的に、本物を再現はできないんじゃないかなぁ」


 プレイヤーの腕前は十分にあるけど、食材が足りなくてリアルでの料理が再現できないってシユ姉が嘆いてたからなぁ。


「じゃあいい」


 興味無くすの早っ!さすが三人娘一の食いしん坊。


「えらい食欲に忠実だなこのちびっ娘」


「···ちびっ娘じゃない、ヴァルナ」


「そうか。俺はスノウの父のアイリスだ。よろしくな」


 父さんの自己紹介を聞いたヴァルナが、数秒考えこむような仕草をした後、首を傾けてこう言った。


「···おじーちゃん?でも、見た目はおばーちゃん?」


「······なるほど」


 ボクを母として考えると、そりゃ父さんはおじいちゃん扱いになるよね。

 でも、父さんの見た目が女性でしかないから混乱してるな·········。


「え、俺三十代で孫できたの!?」


「じゃあ私はおばあちゃんかしら?ほ〜ら、おばあちゃんよ〜」


「おばーちゃんなの!」


「···おばーちゃーん」


「おばーちゃんができて嬉しいのです!」


 母さんは特に気にせずに自然体でおばあちゃんとして接してるな······適応が非常に早い·········。おまけに、三人娘が母さんを受け入れるのも早い······。


「あれ?俺、悩みすぎ?」


「父さんがまともだから。安心して」


 普通の女性は年齢を結構気にする人が多いのに、うちの母さんはそういうの全く気にしないからねぇ。「可愛い孫ができたわー!」くらいにしか思ってないんじゃない?


◇◆◇現地人side◇◆◇ 


 星宮家と三人娘の団欒を見たパンツァーが一言。その言葉に続いて他の十二英傑も好き勝手に感想を述べている。


「·········全員女にしか見えねぇな」


「全くもって同感だねー」


「あの中に男がいると言って、信じる奴はおるかのう?」


「いないんじゃないかしら〜。それより、着せ替え甲斐のありそうな娘がたくさんいるわねハァハァ」


「やめい!」


「へぶぅ!」


 あたかも汚泥の如く濁った目をし、半開きになった口からは涎を溢れさせ、指をワキワキと触手より気持ち悪く蠢かすアルマ。彼女が星宮家の団欒に突撃しようとした所で、パンツァーが周りに被害が出ない範囲での全力でアルマを殴りつける。

 エメロアが遮音結界を張っているためスノウ達に聞こえてはいないが、十二英傑の面々にはドゴォオン!と凄まじい音が聞こえている。


「痛いわね〜」


 周りに被害が出ない範囲での全力なのだが······割と平然としている変態(着せ替えマニア)。無駄に頑丈である。

 余談ではあるが、こういう時にパンツァーがいない場合は他の誰かがアルマの凶行を実力行使で止めているため、ここ数十年は被害は出ていない。


「なんでお前ケロッとしてんだよ······」


「何千回も叩かれてれば、さすがに耐性は得るし、衝撃を逃がすくらいはできるようになるわよ〜」


 変態が進化を遂げていた。彼女の能力値はAGI、DEX重視なので防御力はそこまで高くないのだが、何千回も叩かれて、パンツァーの拳をある程度は耐えられようになっていたようだ。それに加え、あまり防御面での技術は高くはなかったのに、徒手空拳は多少捌けるようになったらしい。


「次からはリオンにやってもらうか」


「アタシの拳はそう簡単に受け流しはできないからねー?」


 捌くのが巧くなったとはいえ、まだ格闘家最高クラスの実力を持つリオンのを捌ける程ではない。しばらくは痛みで悶えることになるだろう。


「酷いわよ〜」


 100%自業自得である。


「わ、私も頑張ります!」


 いつの間にか大槌を取り出して気合いを入れているミネルヴァ。彼女はパンツァーの次にアルマを制裁する回数が多いため、頑張らねばと意気込む。

 ただ······大槌は少々過激である。


「······さすがにその大槌はヤバくないかしら〜?」


「別にいいじゃろう。武技でも使わん限り、アルマじゃ死にそうにないからのう」


「こいつもリュミナと同じで無駄にしぶといからなぁ」


 反対意見は出そうにない。日頃の行いが物を言うのだ。

 そしてリュミナは、未だに意識が戻っていない。スノウは気付いていないが、スノウが彼に投げた『赤の滅亡』は試作品であり、威力が過剰であり、常人ならば確実に失明する代物である。スノウは試作品ではない、威力を調整した物を投げたつもりである。まぁ、スノウがリュミナの股間に叩き込んだ空間歪曲効果付きの一撃も、リュミナの意識が戻らない原因の一つではあるのだが。


◇◆◇スノウside◇◆◇ 


 母さんと戯れているリル達。

 この瞬間までほのぼのしていたのだが、ヴァルナが投下した爆弾のせいでここが戦場一歩手前の空気になる。


「···おかーさんの方がおっぱいある」


ピシッ


 何かヒビが入るような音がボクと父さんの耳に入った。それと同時に禍々しいオーラが漂い始め、ボク達は怖くてオーラの源と思わしき方向を見ることができない。


「ねえ·········スノウちゃん。ちょっといいかしら?」 


 嫌だよ!?絶対ロクなことにならないじゃん!というかなんでボクが怒られるの!?


「父さん······」

 

 父さん、母さんを止めて!お願いだから!

 そんな願いを込めて父さんを見つめるも、その思いは届かなかった。


「······グッ(非常にいい笑顔でのサムズアップ)」


 見捨てられた!?


「スノウちゃーん?怒らないからこっちに来てちょうだい?」


 そう言って怒らなかった人をボクは知らないよ!

 ジリジリと近寄ってくる母さんに恐怖が抑えられないボク。後退っていたら船のデッキの手すりに身体がぶつかってしまう。 

 ヤバい!もう逃げ場が······。

 絶体絶命かと思ったボクに救いの手が差し伸べられる。


ズズゥン·········


 何かの生き物が船にぶつかり、船が結構揺れた。


「今、何にぶつかった?」


「なんだろうね!」


 イスファと一緒に船の下を覗き込む。

 頼む、この空気をどうにかできる存在が現れてくれ·········!


「あ、水竜の群れと、海竜がいやがる」


「(父さん、今だ!)」


「(この機会を逃す選択肢はない!)」


 一秒もかからずにアイコンタクトで意思疎通したボク達は急いで行動に移す。


「よぉーし!父さん行くよ!」


「おうともよ!」


「おじさん、リル達のことお願いしていい?」


「お、おう······」


「頼んだよ!」


 それだけ言い残して船から飛び降りるボクと父さん。

 今の母さんを相手にするより、えげつないステータス補正のこのメイド服を着て竜と戦う方が何十倍もマシだよー!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] >スノウがリュミナの股間に叩き込んだ空間歪曲効果付きの一撃 この一撃をもってして、称号かスキルに【ナッツクラッシャー】って名前のナニカが生えていれば良かったのに(濁った目) さっきの…
[一言] VRMMO系の目玉とも言うイベントをアッサリスルーしてるがスノウ事態何処を目指してるんだる 今の所冒険に行くでもなく、強くなって天下を取るでもなく、戦闘職で生産職トップに立つでなく、やって来…
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