第三十一話 二次試験(前編)
最近、話のタイトルが簡素になっちゃってますね···。申し訳ないです。
あ、第二十三話の最後を少し変更いたしました。
そして翌日。今日は二次試験がある。現実で朝ごはんや家事、宿題を済ませてログインし、現在は二次試験の受験会場にいる。いるんだけど······。
「おい、あいつが昨日大暴れしたっていう竜人か?」
「竜人なのに遠距離魔法を使ったっていう噂の?」
「見た目は可愛いのにおっかないわね」
「機嫌を損ねると魔法で焼かれるか爪で斬られるかするらしいぞ」
「さすが殲滅竜姫。その名に恥じない残虐っぷり」
そんな会話がそこら中でされていて、ボクの周りだけぽっかりと人がいなくなっている。人に目を向けると露骨に逸らされ、ボクが歩くと皆が道を空ける。
ねえ?陰口って本人に聞こえないように言うから陰口なんだよ?ボクに聞こえたらただの悪口だよ?
あと······なんで根も葉もない噂がここまで広まってるの!?ボクめっちゃ怖がられてるんだけど!?殲滅竜姫って何!?
『良かったじゃない。有名人よ』
『悪い意味で有名になってるけどね!』
「アンタ、すごいあからさまに避けられてるわね。おかげで分かりやすかったわよ」
落ち込んでるボクを見たロネがすっごいニヤニヤしながら近付いてくるが、
「あ、蹂躙猫姫も来てるぞ」
「こっちは魔法と槍で殺られるらしいわね」
「闇と影の魔法を主に使うから、殲滅竜姫よりも邪悪だよな」
「なっ!?」
ロネも周りから集中砲火を受ける。
ざまぁ。君も畏怖の対象だよ〜。······でも自分も怖がられてるのは変わらない。はぁ、悪目立ちはしたくないのになぁ。
「やあ、二人共。少し落ち込んでいるようだが、どうかしたのかい?」
いつの間にかヘリオス達も到着していたみたい。
「あ、ヘリオスとミオナとフィロとメルとその他」
「俺だけその他!?」
うん、今日もフレイのツッコミはキレがあるね。あまり面白くはないけども。
『スノウはフレイをイジるのが好きなのね』
『フレイみたいな、打てば響く系の人はボケを必ず拾ってくれるから好き』
「ところで、スノウとロネの周りがこうなってるのはどうしてなんだい?」
「「うっ······」」
自分達が怖がられているから、なんて気軽には言えず、つい黙ってしまうボクとロネ。
「んー······周りの人の話を聞いた感じ、この二人が恐れられてるみたいだねー」
今は関係ないけど、フィロとリオンの口調って結構似てるよね。······って、なんでバラしちゃうの!?
「殲滅竜姫とか蹂躙猫姫って言葉が聞こえるねー。多分、この二人の二つ名かなー?」
フィロの解説を聞いた四人は、四者四様?いや、四者三様の反応をしている。ヘリオスは顔を隠して肩を震わせ、フレイはどこか納得したような表情でこちらを見ている。ミオナとメルは二人揃って目を輝かせてボク達を見ている。
······なぜちっこいの二人は目が輝いてるんだろう······。まさか二つ名が羨ましいのかな?誇らしさなんてないし、恥ずかしいだけだよ?
「プフッ······だめだ、我慢できない······HAHAHAHA!いいじゃないか二人とーーー」
ヘリオスが堪え切れずに笑ったがすぐに黙る。なぜなら。
「······ぶっ飛ばすよ?」
「笑って死ぬか、今笑うのをやめて半殺しか、選ばせてあげるわ」
「すみませんでした許してください」
ボクとロネで全力の威圧をぶつけたからね。ロネもボクも発動寸前の魔法を待機させてるのがヘリオスにわかったんだろう。すぐさま土下座し、謝った。リュミナを彷彿とさせる代わり身の速さだね。
ま、これくらいで許してあげよっか。
『······スノウはまだ気付いていないようね』
『何のこと?』
『分かってないならいいわ』
思わせぶりな発言だね······。ユリアは何を知ってるのかな?
ヘリオス達との世間話も終わり、今は二次試験の説明を聞いている。ちなみに、説明してるのは一次試験と同じ人。
説明を簡潔にまとめると、
1.二次試験は、学院が所有している土地で行われる。
2.一次試験で使った魔道具は使用しないため、命の危険がある。一定距離を空けて試験官が待機しているが、試験官に救援を求めると失格になる。
3.試験の順位によってクラスが決まり、その順位は狩猟した魔物の質と量で決まる。
4.パーティーに一つ魔道具が配布され、それが鳴ったら試験残り十五分の合図。そこから十五分以内に指定の場所に戻ってこないと失格。
5.収納鞄も配布するので、狩猟した魔物はそこに入れること。なお、集計後に狩猟した魔物は狩猟した者に所有権が存在する。売っても良し、武具の素材にするも良し。
6.自分の鞄に入るのであれば、薬草類の採取も可能とする。
こんな感じ。ボクとしては、五つ目と六つめが嬉しいな。新しい武具は今の所必要ないけど、金策にはなりそうだしね。学院は太っ腹だね。
ルールの把握が終わったので、二次試験での方針を相談するために、ロネに『念話』を繋げる。今は学院長らしきお爺さんの長話だから、聞き流しても問題は無い。多分。
『二次試験の方針、どうする?』
『······アンタ、学院長の話を聞く気が全く無いわね』
『え、ロネはあるの?』
『あるわけないじゃない』
だよねー······。
『で、二次試験ではどう動く?』
『そうね···。近場だと他の受験者も多いわよね?それなら遠くまで行った方がいいんじゃないの?』
『確かにね。でも、あまり遠くまで行き過ぎると戻るのが難しいよね······』
『それなら飛べばいいんじゃない?地上を走るより断然速いわよ』
『それだ!』
『······翼を持つアンタが先に提案すべきだと思うんだけど』
『·········』
ボクだって、翼を持ってから一週間くらいしか経ってないから、存在を忘れてても仕方ないと思うんだよ。
『それで、悪いけどアンタの翼で運んでもらえない?私に飛行手段はあるにはあるのだけれど、魔力消費が激しいのよ』
『おっけ。それで行こう』
見た所、ロネはそこまで重くなさそうだし、ボクでも運べるかな?ボクのSTRはそこそこあるから大丈夫なはず。
〘ーーーそれでは皆さん、頑張って下さい〙
あ、丁度長話も終わったね。やっと試験かぁ。
学院の教員さんによって試験会場へと案内されるボク達。案内されたのは······
「·········ここ全部が試験会場なの?」
「学院が所有している土地は広いって聞いたことがあったけど、さすがにここまでとは思って無かったわ······」
見渡す限りの森。木々の隙間からちらりと山も見えている。いくらでこの一帯を買ったんだろうね?
「ここまで広かったら、魔物がたくさん住んでても不思議じゃないのかな?」
「そうね。魔物の狩猟が試験だなんて、魔物を用意するのが大変なんじゃないかって思ったけど、自然に繁殖させてるならそこまで手間はかからないみたいね。狩り甲斐がありそうだわ」
何この娘······。クールな見た目に反して戦闘狂っぽいんですが······。
〘それでは二次試験を開始いたします!〙
「それじゃあ、手筈通りにやるわよ」
「おっけー」
〘3······〙
「二人共、今度は負けないよ」
「お前らには助けてもらったが、手抜きはしないぞ」
いつの間にかボク達の近くに来ていたヘリオス達から宣戦布告を受ける。
〘2······〙
「師匠には悪いけど、勝つ」
「負けないよー?」
「お、お互いに頑張りましょうっ!」
メルは恥ずかしがりやだけど、優しくて良い娘だねぇ。甲斐甲斐しい幼妻になりそうな気がする。メルみたいな娘が現実にいたら、迷い無くプロポーズする自信があるね、間違いない。
〘1······〙
「ボク達も負ける気はないからね」
「どっちが勝っても恨みっこなしよ?」
〘スタートッ!!!〙
「スノウ!」
「いぇっさー!」
試験開始の合図と同時に動き、ロネを抱えて空へと飛び立つ。
「それじゃあお先に〜♪」
「精々頑張りなさいな♪」
「なっ、そんな手が!」
「あー······これ、勝つの大分厳しいよね?」
「厳しいどころか、無理」
「無理じゃないですかね······」
「お前ら諦めるの早すぎないか!?」
走りながら言い争っているヘリオス率いる高天原。······あんな様子でモンスター狩りは大丈夫なのかな?ちゃんと連携できる?
『一次試験の時はばっちり連携してたし、大丈夫よ。多分あの様子が平常運転じゃない?』
そうなのかな?
「何ボーっとしてるのよ?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事しててさ」
「考え事は構わないけど、私を落としたりはしないでよ?下手すると怪我するから」
下手しなかったら無傷で済むんだ······。結構高さあるんだけどなぁ。
しばらく飛んでから、山の麓辺りで降下。ボク達はそこを中心に狩りをしているんだけど、あまり成果は出ていない。
鹿やら狼やら熊やら、アインスの近くの森で見たような弱っちい野生動物がほとんどで、稀にそれらが魔物化した個体が出現する程度だ。
薬草や魔癒草、様々なキノコを狩りの途中によく見かけるので【古代魔法·思念】を使ってこっそり回収していたりする。インベントリはプレイヤーにしかないから、ロネには気付かれないように、こっそりとね。
あと、昨日の夜ログアウトする前に、オプションを見つけたんだよ。そこには色々設定できる所があって、その中にはモンスター討伐時のドロップ方法っていうのがあった。自動で解体してインベントリに入るのと、自動解体は発動せずに死体がそのまま残る、と二種類あって、ボクは後者を選んだ。そんな訳で、ロネには怪しまれないでいる。
「せっかく奥の方に来たのに、あまり魔物は強くないね。こんな調子だと、高順位は望めないかな?」
「あまり魔物が強くなくても、量を狩れば問題ないんじゃない?」
「それもそっか」
このままだと全然歯応えが無いから、地竜くらいの強さの魔物が出ても全然いいんだよ?むしろ嬉々として一狩りするよ?
「そんなに物足りないなら山の方に行く?」
「それでもいい?」
「正直、私としても物足りない感じはあったから歓迎よ」
「じゃあ、行こっか」
そこら辺に転がっている魔物の死体を収納袋に仕舞い込む。
「頂上から下る?麓から登る?」
「普通に麓から登ればいいでしょ」
山ともなれば鉱石とかあるよね?まだ鍛冶は触ってないけど、いざしようと思った時に素材が無いと困るから、今の内に集めとかないとね。
『ユリアー、ボクが戦闘してる間に鉱石とか探知できる?』
『あまりに深すぎると厳しいけど、少し掘れば採掘できるくらいの浅い所にある鉱石ならいけるかしら?』
『じゃあお願い』
『スノウって採掘する為のピッケルとかツルハシとかあるの?』
『·········あ』
すっかり忘れてた。
『······私が鉱石を探知できても、貴方に採掘手段が無いと無駄じゃない?』
『〈魔力物質化〉でなんとかするよ』
『それでなんとかなるといいけど』
直接姿を見て話してるわけじゃないのに、ユリアがどこか呆れているように思えるのはなんでだろうね?
「スノウー!早く行かないと、狩りの時間が短くなるわよー!」
「ごめん、今行く!」
もう山の方へと歩いているロネに追いつく為に、ボクは走り出した。




