第二十八話 入学試験とパーティー結成
色々な事情がアレして本日二話投稿です〜。
こんなことは滅多にないです(マジ)
次に二話投稿する機会は······無いと思ってくだしい
特に事件などが起きるということは無く、無事に学院へと辿り着いた。
「スノウ、もう学院じゃし解くぞ」
「うん、ここまでありがとう」
ボクがそう答えると同時に、ボクの体を囲んでいた魔力が霧散する。エメロアの幻惑魔法が解けたようだ。
「それにしても、随分広いんだねぇ」
『確かにかなり広いわね』
「うむ。この学院は、他の国のそれよりも広いからのう」
今ボク達がいる正門前では見渡せない程に敷地が広く、ついどれくらい建築費がかかったんだろうと考えてしまう。
「嬢ちゃん、ボーッとしてねぇで試験会場に向かうぞ」
「あ、うん」
正門を通り試験会場に行くと、老若男女、種族もバラバラな大勢の人でぎゅうぎゅう詰め。どこもかしこも人だらけだ。
·········倍率がえぐそう。合格できるかどうか心配だなぁ。
「うわー······」
『三十路くらいのおっさんもいるんだけど、あの人は学院に通う必要あるのかしら?』
『無いと思うけどなぁ······』
「これ······人が多いのって多分アタシ達が原因だねー。自分で言うのもなんだけど、十二英傑って有名だからねー」
「なるほどね」
世界最強の十二人が教師になるなら、ここまでの集まり具合も納得だね。
「この夏期短期講習で、十二英傑って全員集まってるの?」
「いんやー。エメロア、パンツァー、アタシ、イスファ、ミネルヴァの五人だけだねー」
あ、やっぱり全員はいないのね。
「一回、十二英傑の全員に会ってみたいなぁ」
「「「《天蠍》だけはやめとけ(やめておくのじゃ)(やめといたらー?)」」」
······一体《天蠍》さんはどういう人物なんだろうね?三人が一斉に止めるって、変態の時を彷彿とさせるんだけど。
「嬢ちゃん、十二英傑の残りの奴に会いたいってのにはほぼ反対しねぇが、《天蠍》だけはやめとけ。《天蠍》以外なら俺が会わせてやるから《天蠍》だけは会っちゃいけねぇ」
「そうじゃ。あやつだけはおぬしに会わせる訳にはいかぬ」
「《天蠍》だけはダメだよー」
「う、うん。分かった」
三人がここまで言うならこれ以上は言わないでおこう。これほど真剣に止められるってことは、下手したらリュミナを超える変態かもしれない。
そんな風に話していると、魔法を使ってなのか、校内放送みたいなものが流れる。
〘受験者とその保護者は係員の指示に従って、それぞれの場所に行ってください〙
「うむ、放送でもこう言っておるのじゃし、ここからはスノウ一人で行くのじゃ」
『私もいるわよ!』
『分かっておるわい。ユリ助の存在がバレると面倒くさいからそう言ってるだけじゃ』
『······いつの間に貴方もユリ助呼びになってるのよ』
ユリアをユリ助と呼ぶのはおじさんだけじゃなかったみたい。
ユリアとエメロアが【古代魔法·思念】の方の『念話』で言い争っている。
「じゃあ行くね。合格できるように頑張るよ」
「嬢ちゃん、頑張ってこいよ」
「スノウなら合格できるじゃろう」
「スノウ頑張れー」
ここで三人とは別れたので、ボクにはあとの会話は聞こえなかったのだった。
◆◇◆保護者side◆◇◆
スノウが受験者の集合場所に向かった後、スノウの保護者の三人は保護者の集合場所に向かいつつ彼女について話し合っていた。
「······なぁ、嬢ちゃんは合格できるか不安って顔してたんだが」
「受験者の中にはCランクの冒険者もおったが、スノウが不合格になることは無いじゃろうな」
「この世界に来てからアタシ達くらいとしか関わってないせいで、強さの基準が分かってないよねー」
全くもってその通りである。スノウは異界人とも現地人ともほとんど関わっておらず、標準的な強さというものが全く分かっていない。シユやティノアと共にレベリングをした時間も短く、その時間だけでプレイヤーの基準を分かれというのは酷だろう。
そもそも、一週間でレベル30を越えるというのは並大抵のことではない。パンツァーをはじめ、エメロアやリオンなどといった世界最強クラスの人物と模擬戦をしているからこそ、このレベルアップ速度なのだ。
しかし、スノウはこの異常に気付いていない。黒雪暴走事件によってレベルアップしていたことには不審感を抱いていたが、それ以前のレベルアップ速度には何の不審さも感じていなかったのである。
「嬢ちゃんはどこか抜けてるからな。自分のことには鈍いし、色々常識が欠けてやがる」
スノウが街を歩くと必ずと言っていい程周りが騒がしくなるのだが、本人はその原因が自分の見た目だということを分かっていない。自分の顔に関しては女々しいという感想しか抱いていないが、掲示板の連中が言っているように絶世の美少女なのである。そのうえ身長に見合わぬ豊満な胸を持っていて、俗に言うロリ巨乳だ。
本人がそれに気付いていないので、無自覚かつ強力な男殺しとなっている。
なお、現実でも雪は、おっぱいが無いだけで普通に美少女なので街を歩くとかなり目立つ。そのうえナンパ男も寄って来るので、しばらく前から雪は外出時に帽子とマスク、大きめの伊達メガネを着用して誤魔化している。
「この短期講習でスノウに惚れる男は何人いるんだろねー?」
「それは嬢ちゃんが困るだけだから、そんなことを考えるのはやめとけ······」
「じゃがパンツァーよ、スノウに惚れる男が一人もおらぬと断言できるかの?」
「··········ノーコメントだ」
実はパンツァーも、スノウに惚れる男がいるだろうと思っていたりする。あの可愛らしい見た目と優しい性格を持ち合わせているため、惚れる男がいないなどとは全く思っていない。
だが、スノウの異界での性別が男だと知っているのでスノウを気遣っているのだ。エメロアとリオンはそれを分かったうえで言っているので質が悪い。
「ま、なるようになるか。傲慢な貴族が嬢ちゃんを狙ってきても俺達なら大丈夫だろ」
「スノウを変態に渡す訳にはいかんからの」
「そういうのは見つけ次第釘を刺すって方針でいこっかー。それでも相手が何かしていきたらスノウには秘密で潰す、でいいよねー?」
「「異議なし」」
なんだかんだイジりつつも、こんな風に三人、そして今はここにいないアルマもスノウのことを大切に思っているのだった。
入学試験は中継映像が放送されるのだが、それを見たいくつかの変態貴族家がスノウを様々な手段で狙い、四人に潰されたのは別の話である。
そしてその四人の行動のしわ寄せがリュミナに行き、リュミナが必死に後始末をしたのはまた別の話である。
◆◇◆スノウside◆◇◆
係員さんの指示に従い進んでいると、かなり開けた場所に出る。
〘それでは受験者は揃いましたねー?これから入学試験の説明を始めまーす!〙
放送の人の口調が軽いな······。そんな軽い口調は最初だけのようで、試験の説明の時は普通に話してくれた。
その放送の内容はーーー
1.入学試験の方法は、特殊な魔道具を用いたバトルロイヤルである。
2.魔道具の効果により、試験中の負傷は無かったことになり、致命傷を受けたと判断された場合は即座に時空魔法が発動するので心配する必要はない。
3.合格者は、受験者の人数が定員に収まった時点で決定するが、他の受験者の撃破数で特待生になれるかどうかが左右されるので注意。
4.翌日はクラス分けの二次試験があるので、明日も遅れずに来るべし。
とのこと。
······一次試験の説明で、二次試験のことまで言う必要は無かったんじゃないかな?
それはともかく、これから一次試験が始まろうという時に、放送の人が(コミュ障に対する)死刑宣告を告げた。
〘それでは、二人以上でパーティーを組んでくださーい。強制ではないですが、人数が多い方が有利ですよー〙
え?引きこもり予備軍兼コミュ障のボクにパーティーを組めと仰る!?無理だよ!?
まあ、強制じゃないんだし、ボクはソロで頑張ろう。一人でも大丈夫だし。
·········ダメ元で一人くらい探してみようかな?
そう思って周りを見渡すも、ほとんどの人が数人で固まっており、ボクが入る余地は無さそうだ。もしかしたら、いくつかのグループの中には突発的に組んだのもあるのかもしれないが、ボクにはそれが分からず、声をかける勇気が出ない。
パーティーは諦めてソロで受験する覚悟を決めようとした時、ある人物が目に入る。
まるで日本人のような黒髪黒眼を持つ猫獣人の女の子。クールっぽい雰囲気を纏っており、槍を背負っている。
『ツンデレっぽいわね』
ユリアはちょっと黙ってて。
見た感じ彼女も一人みたいだし、声をかけてみよう。
「ねえ、そこの猫獣人さん」
「何?大したようが無いなら話しかけないでほしいのだけれど」
ちょっとキツめな性格だね。それでも、まだめげないよ。
『やっぱりツンデレよ!今ツンよ!』
なんでそんなに興奮してるの!?ていうか、なんでツンデレの言葉を知ってるの!?
とりあえず、ユリアの出処が謎の知識は放置で。
「ボクとパーティーを組まない?」
「私に足手まといはいらないわよ」
「足手まといにはならないと思うけどなぁ······」
「それじゃあ冒険者ランクを教えてちょうだい。私はBランクよ」
「あ、ボクはCランク」
「アンタみたいなまだ若いのがCランクなの?嘘じゃないでしょうね?」
若いってのはブーメランじゃない?おまけにボクよりも高いBランクだし。
「嘘じゃないよ。ほら」
ボクはそう言ってギルドカードを彼女に渡す。
「本当にCランクだわ······しかも仙闘術士!?」
ボクのギルドカードを見た彼女はとても驚いている。仙闘術士ってそんなに珍しいの?リオンからあっさり教えてもらったんだけど。
「仙闘術士って珍しいの?」
「そりゃ珍しいわよ。普通の戦士系統の職業ならともかく、魔力と霊力を両方持ち合わせてる人物はかなり少ないのよ?仙力や精霊力を扱うことのできる人はさらに少ないのだけど······私が言えることではないのだけれどね」
「それで、パーティーは組んでくれる?」
「Cランクの仙闘術士だなんて、断る理由が無いわよ。私はロネ。Bランクの精霊槍士よ。よろしくね」
「ボクはスノウ。さっき分かったとは思うけど、Cランクの仙闘術士だよ。こちらこそよろしくね」
そう言いながら獣人の女の子、改めロネが差し出した手をボクは握り返した。




