第二十七話 《遍在邸宅》と職業選び
翌日もまたログイン。昨日の祝勝会の時に、おじさんから「八時くらいに起きてほしい」と言われたので、現在朝八時ちょっと前からログインしている。
あ、昨日の新装備による補正や、修練での成果はこんな感じ。
スノウ:竜人(魔竜)
Lv34
HP 1500 MP 6750 AP 1200(×1.6)
STR 560(+250) INT 525(+280)
AGI 600(+200) DEX 580
VIT 50(+380) MND 100
LP0 SP170
エクストラスキル
真·竜魔法
精霊交信
世界樹の加護
淫乱竜
仙闘術
精霊術
種族スキル
竜鱗
竜言語理解
竜眼
飛行
威圧
汎用スキル
熟練爪術Lv2
熟練格闘術Lv4
魔導Lv10
魔力操作Lv22
霊力操作Lv7
召喚術Lv1
剣術Lv1
槍術Lv1
槌術Lv1
短剣術Lv1
刀術Lv1
弓術Lv1
投擲Lv16
二刀流Lv1
筋力上昇Lv18
俊敏Lv2
器用上昇Lv1
無属性魔法Lv1
火属性魔法Lv22
爆属性魔法Lv1
風属性魔法Lv23
雷属性魔法Lv25
水属性魔法Lv14
氷属性魔法Lv1
土属性魔法Lv11
鋼属性魔法Lv1
光属性魔法Lv12
影属性魔法Lv18
聖属性魔法Lv15
闇属性魔法Lv16
古代魔法·時空Lv10
古代魔法·思念Lv1
生活魔法Lv1
調合Lv1
錬金術Lv1
魔法陣学Lv1
刻印術Lv1
鍛冶Lv1
料理Lv12
付与Lv1
魔力自動回復Ⅲ
あと、世界樹の髪飾りも成長していた。このまま最後まで成長したら、えげつない性能になりそうだね。
世界樹の髪飾り
AP+60%
霊力自動回復Ⅱ
精霊術強化Ⅱ
成長(2/10)
昨日習得したスキルは【仙闘術】と【精霊術】で、覚えたアーツは【仙闘術】の〈閃華〉。
【仙闘術】は、魔力と霊力を混ぜ合わせて仙力っていうのを練り上げて、それを体に纏い攻撃力やら防御力を上げるスキル。〈閃華〉は、体に纏わせた仙力を炸裂させるアーツである。
【精霊術】は魔力と霊力を混ぜ合わせて精霊力っていうのを練り上げて、魔法のような攻撃を放つスキル。仙力と精霊力は、両方とも魔力と霊力を混ぜ合わせるから、使い分けるのに苦労したよ。
それにしても、最近の技術ってすごいんだねぇ。体の中を何かが動く感覚がスキル習得の時にあって、とても感激したよ。
攻撃面がかなり強化されて、ボクの戦闘力が上がったのはいいことなんだけど、それとは別に疑問がある。
なんでかレベルが9も上がってるんだよね。ボクは昨日、アルフとの戦闘、おじさんと買い物、アルフ救出戦、リオンとユリアからスキルとアーツの伝授。これだけしかしてないんだよ?2か3は上がってもおかしくない。それでも9はあまりに上がり過ぎている。
怪しいのは、ボクがお酒を飲んでからなんだよ。でも、その時のことを祝勝会の途中で皆に聞いても、誰も教えてくれなかったんだよ。エメロアのせいで【淫乱竜】を獲得してしまったとしか聞いてないけど、多分そこで何か起きたんだと思う。······誰も教えてくれないなら、推測にしかならないけどね。
レベルが上がって困ることはないから、このことを考えるのは終わりにしよう。
さて、ステータスの確認も終わったし、おじさん達がいるリビングに向かおうかな。あ、ユリアを召喚しとかないと。数日前に召喚するのを忘れてた時、「ちゃんと呼びなさいよ!」って怒られたからね。
「『召喚:ユリア』」
ボクの声に応えるように魔法陣が床に現れ、そこからユリアが出てくる。
「おはようスノウ。今日は早いのね」
「うん。今日はおじさんから、八時くらいに起きてって言われたんだ。何かあったっけ?」
「······今日は二十九日だったわよね?」
「そうだよ?」
「王都の学院での夏期短期講習の入学試験って今日じゃなかったかしら?」
「·········あ」
「髪飾りの中で聞いただけの私が覚えてて、直接聞いたはずの貴方が覚えてないのはなんでなのよ······」
耳が痛い·········。
アルマさんに貰ったパジャマから戦巫女装備に着替え、リビングへと向かう。
「お、嬢ちゃん起きてきたか。それにユリ助も」
「スノウおはよー。あとユリアもおはよー」
「お嬢様、ユリア様、おはようございます」
「三人共おはよ〜」
「うん、おはよう。······ところでユリ助って何?」
「ただの呼び名だが?」
いつの間にかユリアの呼び名がユリ助になっていた。まあユリアをそう呼ぶのはおじさんだけなんだけど。
ここでキッチンの方から、コップを持ったエメロアが来た。飲み物を取りに行っていた様子。
「うむ、スノウは起きるのが遅いのう」
「お前も今起きてきたばっかじゃねぇか」
普通に挨拶をした三人とは違い、ドヤ顔でボクにマウントを取ろうとしたエメロアが、おじさんに頭を叩かれている。リオンはその光景を何の反応もすることなく傍観している。いつもの光景みたい。
あ、アルフの性別は男に戻ってたよ。あと、敬語はやめてって言ったのに敬語に戻ってる。はぁ······多分何回言ってもいつの間にか敬語に戻してるだろうし、もういいや。
「そんじゃ、嬢ちゃんとユリ助も起きたことだし王都に行くか」
「ユリ助で固定なのね·········もうそれでいいわ」
何事も無かったかのようにユリ助呼びを続けるおじさんに、ユリアが訂正を諦めている。
「その前に一ついい?」
「なんだ?」
「アルマさんはどこかに行ったの?」
「アルマは王都の方の店で用事があるっつってもう出掛けたな」
そういえば、アルマさんは服屋さんだっけ。王都がどんな所かは知らないけど、二つの街にお店があるって、相当人気だよね?
「ありがとう。それじゃあ行こうか······それで、王都ってどこ?」
「普通に行けば、徒歩で数日、馬車で十時間くらいだな」
「え!?なんでそんなに落ち着いてるの!?」
今日が夏期短期講習の入学試験日なんでしょ!?そんな遠くじゃ間に合わないよ!?
「言い方が悪いよパンツァー。スノウが勘違いしてるじゃん。安心してねー。アタシ達なら、扉出てから王都に着くまで一分かかんないからー」
「······?」
どゆこと?徒歩で数日、馬車で十時間の王都にすぐ到着する?
「あー、やっぱ分かってないよねー。実際にやってみよっか」
リオンがボクの手を取って玄関に行き、ドアの横にあるダイヤルのような物の針を変え、ドアを開ける。
すると、
「あれ、ここどこ·········?」
目の前には、見たことのない景色が広がっていた。
「王都だよ?」
「ふぇ?」
ボクはリオンの言葉が信じられなかった。だって、ボク達はさっきまでアインスにいたし。ドアを開けたら別の街ってどうなってんの?
ボクの頭が疑問符でいっぱいになってるのが分かったのか、リオンが説明してくれる。
「種明かしをするとねー、この家自体が古代魔道具なんだよー」
「ちなみに、銘は《遍在邸宅》だ。俺とエメとアルマとリオンに四人で攻略したダンジョンから出てきた」
「あっ、それアタシが説明しようとしてたのにー!」
「······私は髪飾りに戻っておいた方がいいわね」
「そうじゃな。精霊術師はゼロではないとはいえ、かなり珍しい存在じゃからの。まだ人には見られておらぬが、さっさと髪飾りに戻っておけ」
「はいは〜い」
「王都はアインスより人口が多い分、治安も悪いですし、お嬢様のような人物が精霊を連れていると確実に狙われるので、そうした方がよろしいかと」
リオンの解説を横からかっさらったおじさんを始め、ぞろぞろと残りの人たちも玄関から出てくる中、ユリアだけは周りに人がいるのを見て髪飾りに戻った。エメロアによると、精霊はとても目立つらしい。アインスでもユリア以外の精霊は一度も見たことがないから、ボクでも精霊が珍しいというのは分かる。
『髪飾りの中からでも外の様子は分かるし、面倒くさいのに絡まれるリスクを冒してまで外に出る理由は無いわね。あと、こうやってコミュニケーションも取れるしね』
あぁ、【古代魔法·思念】をボクが持ってるから【魔力制御】でユリアもボクのスキルを使えるね。
「まだ入学試験もあるから、先に冒険者ギルドに行っておくか。嬢ちゃんの職業も設定しねぇとな」
「職業って?」
「それは冒険者ギルドに行くまでにアタシが説明するよー」
「そういえば、職業無しであの強さなんでしたっけ······」
アルフが遠い目をして何か言っているが、声が小さくて何を言ってるのか分からない。大事なことだったら大きな声で言うだろうし、わざわざ聞き返す必要はないかな。
「じゃあ頼む。俺はそこまで説明が得意じゃねぇしな。《遍在邸宅》の説明もしてやってくれ」
「おっけー」
「パンツァー、なぜワシには説明をさせぬのじゃ?」
「お前、説明の間に嬢ちゃんに悪戯するだろ?」
「しないわけがなかろう!」
そんなことを言いながらエメロアが胸を張っている。
その言葉を聞いて、エメロアとは二人きりにならないようにしようとボクは心に決めた。何されるか分かんないし。
冒険者ギルドへの道中、ボクとユリアはリオンから職業や《遍在邸宅》について教えて貰った。おじさんとエメロア、アルフは後ろから黙ってついて来ていた。
「冒険者は普通、ギルドでどれかの職業について、能力値の補正や、職業ごとの固有技能を得るんだよー。アインスにはそれ用の魔道具が無いから、スノウは職業につけなかったんだけどねー」
「ふむふむ」
『ふーん』
「ギルドにある魔道具で調べれば、その人が就くことのできる職業の一覧が出るんだよー。それを見てどの職業にするかを決めるって感じ」
「なるほど」
『なるほどね』
ボクならどんな職業が出るんだろう。格闘家とか魔術師とかかな?できるだけ強い職業がいいなぁ。
『仙闘術士と精霊術師は出るんじゃない?』
確かに。ボクはその二つを覚えてるからね。
「職業については分かったー?分かったなら次は《遍在邸宅》の説明するよー?」
「おっけ〜」
「あれは家自体が一つの古代魔道具でねー、遍在の言葉の通りに、同時にいくつも存在するんだよ。世界中のあちこちにあの家があって、さっきのダイヤルを弄ればあの家がある所全てに行けるっていうすごく便利な魔道具だよー」
んーと·········空間魔法みたいな感じ?場所が決まってる長距離転移的な?
他のゲームでもあったよねこういうの。メニューからワールドマップ開いて移動するあれ。
それが常時発動してるのねおじさんの家は······。色んな人から狙われてそう。
「あ、到着したよー」
リオンから説明を受けている間に、冒険者ギルドの前に到着した。アインスの冒険者ギルドよりも建物は大きく、中から聞こえてくる声のボリュームもアインスより上だ。
「建物大きいね······」
「まあ人の数が多いからねー。さっさと入っちゃおっかー」
「ちょ、押さないでよ」
心の準備が終わる前にリオンに背中を押され、半ば無理やりにギルドに入らされる。
「おい、なんだあのめっちゃ綺麗な女の子は。どっかの貴族令嬢か?」
「いや、竜人の貴族なんて聞いたことねぇよ」
「じゃあ一般人か?あんな一般人がいたら今頃世界は美少女だらけだぞ」
「逸般人じゃね?」
「「「それだ」」」
『うるさいわね』
『うん、アインスの冒険者ギルドよりうるさいね』
王都でのおじさんの家から冒険者ギルドへの道中でも、アインスを歩いてた時も思ってたんだけど、なんでボクを見たらザワザワするの?その度に気になるんだけどなぁ。
それと、どこかから聞こえてきた、不穏な発音の「いっぱんじん」は何?どことなく馬鹿にされているというかからかわれている感じがする。
まあとりあえずは放置で。早く職業とやらを決めよ。
「リオン、どこで職業を決められるの?」
「あっちのカウンターでギルドカードを見せたらできるよー」
「あと、後見人の手続きもしとくぞ。そうじゃねぇと嬢ちゃんがいらねぇことに巻き込まれそうだ」
「後見人?」
「後見人っつうのは、こんな人物と知り合ってる、ってことを知らせる為のもんだ。それをしとくと、周りからの余計な手出しを防げるからやっといた方がいいんだ。この前の登録の時に推薦と一緒に済ませときゃよかったんだが、忘れててな」
「おじさんがボクの後見人になってくれるの?ボクは会って少ししか経ってないし異界人だよ?」
「異界人だとかなんてそんなこと関係ねぇよ。俺が嬢ちゃんを気に入ったからするんだ。危ねぇことにはあんま遭ってほしくねぇしな」
おじさん、なんてイケメン······。とても頼もしくて、ボクが女の子だったら惚れてたりしそう。
「ワシも後見人になっておくのじゃ」
「アタシもー」
「あ、二人もなってくれるの?」
「アタシの初めての弟子だからねー」
「悪戯しがい、ゴフン、魔法の才能がありそうじゃからの」
······二人共に感謝しようと思ってたけど、感謝はリオンだけにしておこう。エメロアにはあまりしたくないかな。悪戯しがいだなんて言葉が聞こえちゃったし。
「······私程度では、後見人になる価値は無さそうですね」
あああ!落ち込まないでアルフ!
アルフを励ました所で気を取り直して、先程リオンが指差したカウンターへと向かう。
「ここで職業に就くことができるんですか?」
「はい。ギルドカードを出してください。はい······(えっ!?Cランクで無職ですか!?)」
言われた通りにギルドカードを受付の人に渡すと、受付の人は目を見開いて驚いたが小声で絶叫するという実に器用なことをやってのけた。
ちゃんと個人情報を守ろうとしてくれるのはありがたい。何せ「無職」は響きがよろしくない。
「昨日アインスで冒険者登録したので、まだ職業が無いんですよ」
「(昨日登録してCランク!?)······少し待ってください。上の者を呼んできます」
何かに気付いたような受付の人はそう言って、カウンターの奥に行ってしまった。
·········なんで?
『私、まずは年齢で驚かれると思ってたわ』
それ、バカにしてるよねユリア。喧嘩売るなら買うよ?
少しして、受付の人はガッシリとした巨体の男の人と一緒に戻ってきた。着ている服にかなりの負担がかかっていそうな程の筋肉の持ち主だ。
「お手数ですが、お連れ様と奥の部屋に来ていただけないでしょうか?」
『こんな筋肉の塊みたいなのが敬語!?違和感しか無いわよ!?』
そのモリモリマッチョマンな図体に見合わない敬語!?······ってそうじゃない。ユリアと感想がほぼ一致したけどそうじゃない。
おじさん達四人の方を向くと、全員頷いている。なんかデジャヴ。アインスの冒険者ギルドでは頷くんじゃなくてサムズアップだったけど。アインスの時とは人が違うけど。
「大丈夫みたいです」
「ではこちらへ」
·········うん、筋肉モリモリな人が敬語を使うとやっぱり違和感しかない。
アインスの時と同じように、豪華な部屋に案内されるボク達。向かい合ったソファの片方にボク、おじさん、エメロア、リオン、アルフの五人。もう片方に筋肉の人が座っている。おじさん、エメロア、リオンの三人はさっきまで発動していた幻惑魔法を解除している。
「私がギルドマスター、ライザ·マッスルボディです」
マッスルボディ!?
「それで、俺達に何の用だ?」
ボクが名字に驚いている間に、おじさんが用件を聞いている。
「スノウ様は、十二英傑の方々の内三人からの推薦を受けていると耳にしまして。周りの者が貴方達に気づいて騒ぎにならぬようにと思い、このような行動をとらせていただきました。もし後見人の手続きをするようならここでお願いいたします」
「あー、その三人って多分パンツァーとエメロアとアルマのことだよね?アタシもスノウの後見人になるからー」
「今日はアルマはいねぇが、あいつから後見人になるっつう書類と手続きの為の魔術印を受け取ってる」
あ、そうだったの?アルマさんもボクの後見人になってくれるつもりだったんだ。
十二英傑の内四人から後見人になるという言葉を聞いたギルドマスターは、あまりに驚いたのか固まっている。
なんか最近、驚きで固まる人をよく見てる気がする。
「·········わかりました。それでは後見人の手続きをいたしましょう」
「あ、その前に嬢ちゃんの職業を決めてぇんだが」
「承知しております。魔道具はこちらに」
ギルドマスターが机に置いたのは、宝石のように輝く水晶球。その下にはボクのギルドカードが置かれている。
「それではスノウ様。こちらに手をかざし、魔力を流してください」
「はい」
言われた通りに水晶球に手をかざし、魔力を流すと、水晶球の上方にステータス画面のような半透明の板が現れる。
それをよく見てみると、剣士やら格闘家やら職業の名前がいくつも書いてあることがわかる。
「これらの中から選べばいいんだね。どれにしようかな······」
「うむ、スノウに適正がある職業にはどんなものがあるかのう?」
ボクの後ろからエメロアが職業の一覧を覗いてきたが、特に実害は無いので放置。
『へぇ······色々あるのね。精霊術師はどこかしら?』
ユリアは精霊術師を探しているようだ。ユリアは、ボクが選べる職業の中に精霊術師があるっていう前提で探しているみたいだけど、あるとは限らないから、もし無くても怒らないでよ?
「剣使い、盾使い、槍使い、斧使い、槌使い、短剣使い、弓使い、刀使い、薬師、鍛冶師、錬金術師、刻印術師、料理人、無属性魔術師、火属性魔術師、水属性魔術師、風属性魔術師、土属性魔術師·········多くない?」
「多いのう」
「多いな」
「多いねー」
「多いですね」
いつの間にか後ろに回り込んでいた四人全員から多いと言われる。
職業の多さに少しげんにょりしたボクだが、ここでお目当ての職業を見つける。
「あ、あった」
見つけたのは仙闘術士と精霊術師。ボクの職業はこの二つのどちらかにしよう。
『どっちにするのよ?』
『どっちにしようか?』
『うーん·········精霊術なら私が使えるから、スノウは仙闘術士にしておいたら?』
『そうするよ』
結構な数ある職業の中から、仙闘術士を選ぶと、水晶球の下にあったボクのギルドカードの職業欄に仙闘術士と表記される。
「これでおっけ〜」
「仙闘術士ですか。その職業ならば、仙闘術の発動を補助し、効果を高める技能を習得できます。転職をすると、その技能は無くなるのでご注意ください」
「はい」
「嬢ちゃんの職業が決まったし、次は後見人の手続きをすっか」
「書類はこちらに」
あ、ボクが職業を選んでる時にどこかに行ったと思ったら書類を取りに行ってたのね。
ギルドマスターが持ってきた書類の後見人の欄にエメロアとリオンが一つ、おじさんは自分のとアルマさんの二つの判子を押している。さっき言ってた魔術印ってこれかな?
「これで手続きは以上です」
「うっし、じゃあ学院に行くか」
「うむ。幻惑魔法をかけ直さんとな」
「あ、エメロア。ボクにもかけてくれない?」
周りがザワザワするのが気になるからね。
「別に構わん。じゃがおぬしは試験を受けるのじゃから、学院の近くで解くぞ?」
「それで十分だよ」
「目立たぬように、裏口を用意しております。もしよろしければ、こちらからお出になってください」
「ありがとねー」
冒険者ギルドでの職業選びは終わり、ボク達は学院へと向かった。




