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第二十一話 おじさん宅での事件

今回は少し短め。次は······もう少し長くなるはず。

 買い物を終え、おじさんの家に到着。到着···したんだけど······。


「やめてください!二人とも!」


「ふっふっふ。ワシらから逃げられると思うでないぞ〜」


「私はまだ満足してにゃいわよ〜。ふふふ〜」


 ドタバタと騒がしい足音と共に、すごく楽しそうなエメロア、なぜかあまり呂律が回っていないアルマさん、そして知らない女の人の声がする。女の人の声であって、断じてアルフの声ではない。

 ······誰を追いかけてるの。犯罪じゃないよね?違うよね?


「おじさん、リオン。エメロアとアルマさんは何をしてるの···?」


「アルマの呂律が回ってねぇから、事態の想像はつくんだよな。発端は間違いなくエメだ」


「そうだよねー。アルマは自分から騒ぎを起こすことはほとんどないし」


「じゃあ、中で何が起こってるの?」


「多分、エメが酒になんか混ぜてアルマに盛ったんだろう。アルマは酒に弱ぇから、そこに薬を混ぜておいたらほぼ確実に効くしな。だが······二人とは別に女の声がするのが心配なんだよな」


「ボクとしては、アルフがいないのが疑問なんだよ」


「······あぁ、そういうことか」


「······あー、アタシも分かった」


 ボクの言葉を聞き、納得した様子を見せるおじさんとリオン。またか、といった感じにため息を吐いている。


「二人で納得してないで、ボクにも教えてよ」


「確証は無いけどねー······女の人の声が多分アルフ君の声だよー」


 ·········え?アルフは男だよ?


「アルフは男だけど?」


「それは知ってるよー。さっきパンツァーからシュヴァルツ家の家訓とかスノウが勝って部下にしたとか色々聞いたから」



 あ、リオンの店からここに歩いて来る時に何か話してると思ったら、そんなことを話してたのね。


「じゃあ、なんで女の人の声がアルフのだって結論になるのさ」


「エメロアが作った魔法薬のシリーズの一つ、《いたずら魔法薬(ファニー·ポット)》にある転性薬(ジェンダートランサー)がアルフ君を性転換させたんじゃないかな?そうでもないと、アルフ君の声がしないことの説明ができないし」


「俺の予想もそれだ。さっきの女の声はアルフの坊主のものと考えていいだろうな」


 二、三十歳と思われるアルフを坊主呼ばわりか······おじさんはいくつなんだろうね?

 それにしても、転性薬(ジェンダートランサー)か······それがあれば、ゲーム内のボクの性別を男に変えることができるのかなぁ。

もしそうなら、是非とも欲しい。切実に。

 そんな希望を抱いていたボクを、おじさんの一言が絶望へと叩き落とす。


「あー······嬢ちゃんに残念なお知らせだ。《いたずら魔法薬(ファニー·ポット)》はどれも時間経過で効果が切れる。だから、嬢ちゃんの性別を永続的に男にすることはできねぇ」


「なっ············」


 なんでよーーーーー!

 思わずorzの姿勢を取ったボクを見て、リオンが困惑している。


「えっと······なんでスノウは落ち込んでるの?そんなに男になりたかったの?」


 そういえば、リオンはボクの性別に関したあれこれを知らなかったね。教えておくべきか、秘密にしておくべきか。う〜ん·········リオンとはそこまで付き合いは深くないし、今は言わないでおこうかな。事情って言って誤魔化そう。


「ちょっと事情があるんだよ」


「事情って何ー?」


 ······それを言いたくないから事情ってはぐらかしたのが分かんないのかこの獣耳っ娘は。


「事情は事情。言いたくない」


「えー?ケチー」


 現実と異界で性別が違うってのは、そんな簡単に言えることじゃないからね。許してくれたまえ。


「せっかく一つ技能と口伝の武技(アーツ)を教えてあげようと思ったんだけどなー」


「············」


 ダメだボク。スキルやアーツに釣られるんじゃない。『口伝』という響きにとても惹かれるけど罠だ。ハマっちゃいけない。


「アタシにはもう必要ない装備品をあげようと思ったんだけどなー」


「············」


 この世界でトップクラスの戦闘力を持つ十二英傑(ゾディアック)が使っていた装備とか、今のボクからしたらえげつない性能を持ってるだろうけど、ダメ。すごく欲しいけど、軽々しく伝えていいことじゃ············あるのかな?良く考えると、別に害は無いような···。問題点はボクの羞恥心だけか。それなら、自分から言うことはせずとも、聞かれたら答える。くらいでいっか。もちろん怪しい人や口が軽そうな人には話さない方針で。


「······技能や武技(アーツ)、装備品は本当にくれるの?」


「うん、あげるよー」


 全く話そうとしない態度から一転し、交換条件の確認をするボクに、おじさんは驚いたようだ。


「いいのか?嬢ちゃん」


「良く考えてみれば、そこまで隠すことでもないかなって」


「そうか······?まあ、嬢ちゃんがいいなら構わねぇが」


「それで、スノウの事情ってどんなの?」


「それはね···」


           〜説明中〜


「へー、そうなんだ」


「まあ、そんな訳。······言いふらさないでね?」


「わざわざ言いふらす相手いないよー。あ、ゆっきーって呼んでいい?」


「ここで異界(あっち)での名前バレるとやばいから勘弁して」


「そういうもんなの?」


「そういうもんなの」


 まあ、ボクがリアル割れしてもストーキングとかされないだろうけど、一応ね。


「説明が終わった所で一ついいか?」


「「何?」」


「嬢ちゃんがリオンに説明してる間、ずっと家からはドタドタ音がしてたんだが······。そろそろ入らねぇとヤバくねぇか?」


「「あ」」


 そうだった。今までずっと女アルフがエメロアと酩酊状態のアルマさんから逃げ回ってるんだった。速く助けないと。


「アルフ君、無事だといいね」


「不穏なことを言わないで!?」


「そんじゃ大体の手順を決めておくか。まず、リオンはアルマを抑えろ。多分だが、今のアルマは酔ってて鞭は持ってねぇ。無手のお前が適任だ。次に、俺はアルフの坊主を助けるから嬢ちゃんはエメを頼む。俺の体格じゃエメを相手するのはちとキツい。だが嬢ちゃんは無理しなくていい。少しの間エメに動きを止めてくれれば俺がなんとかする」


「おっけー」


「りょうか〜い」


 さぁて、アルフの救出作戦開始だよ!



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