第十四話 エメロアからの提案
祝!ブックマーク数500件突破!!
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次は目指せ1000件、そしていつかは書籍化も〜。
これからもよろしくお願いします。
アルマさんの店での買い物を終え、現在は帰宅中。行きとは違い、徒歩で移動している。給水度や満腹度の回復のため、途中でサンドイッチや牛乳を買って食べてたりするんだけど、とても美味しかったです。まる。
「はぁ〜。やっと出られたわよ」
そんな声が聞こえたと思ったら、髪をポニーテールに結っていた髪飾りからユリアが出てきた。
「そういえば、アルマさんの店では出てこなかったね」
「あのねぇ、スノウは精霊の珍しさを理解してないの?安易に姿を見られたら即座に狙われるのよ?」
「······今、出てるけどいいの?」
「あっ」
ユリアはすぐに髪飾りに引っ込んだ。······人に言っておきながら本精霊が簡単に姿を見せちゃダメじゃん。
「そうそう、貴方の服、似合ってるわよ。どこかの貴族のお姫様みたい」
今、ユリアが言ったようにボクの服装は初期装備の質素な物ではなく、アルマさんの店で(エメロアが)購入した白のワンピースに変わっている。あとは下着も(強制的に)変わっていたりする。こちらも色は白。アルマさんもエメロアも体格に合わない筋力持ってたから無理矢理着替えさせられたよ······。
それにしても···うう、人の視線をたくさん感じるよ······。こんなにジロジロ見られるととても恥ずかしい。そんなに似合ってないのかなぁ?
「スノウよ、おぬしが今やっておる恥ずかしがり方を見るとまるで男には見えんのう」
「だって皆がボクを見てくるんだもん。そりゃ恥ずかしいよ」
「おぬしが美人だからじゃ。それにその服も似合っておるぞ。堂々とせい」
「似合ってるって言われて悪い気はしないけどさ······」
(こやつ本当に男じゃろうなぁ?歩き方や仕草に何の違和感もないのじゃが。それに加えて女物の服を似合ってると言われて照れておるしのう)
「エメロア、何か言った?」
「ただの独り言じゃ。気にせんでよい」
「ふーん。あ、そうだ。【調合】や【付与術】、【魔法陣学】をボクに教えてほしいんだ」
「うむ、ワシも教えるのは構わんのじゃが······」
「何か不都合があるの?」
「不都合というか、ワシが教えるにはある程度基礎が固まっておらんと理解が難しい」
「あー、なるほどね」
やっぱりそう簡単にはいかないか。ど素人が一流に技術を教わろうとしても無理だしね。
「じゃからスノウよ、おぬし学校に通ってみんかの?」
「え?」
この世界にいる時間が限られてるボクに通える学校があるの?
「八月に王都の学園で夏季短期講習があるのじゃ。そこで習える科目の中に薬学、刻印学、魔法陣学と全てあるからちょうどよかろう。どうじゃ、行ってみる気はあるかの?」
正直に言うと、めっちゃ行きたい。でも、ボクにそんな所に通う学費は無いんだよね。これ以上エメロア達からお世話してもらうのは本当に申し訳ないから遠慮しておこうかな。
「学費に関しては心配するでない。特待生制度というものがあるのじゃ」
「なんでボクの言おうとした事がわかったの?」
「スノウはすぐ顔に出るからわかりやすいのじゃ。とても申し訳なさそうな顔をしておったからおぬしの心情を読むのは龍を狩るより簡単じゃったわ」
また表情読まれた······。
「それにの、あやつに『できればお金を使ってほしいんだけど···。君たちが貯め込んでいると経済の流れが停滞するからある程度は使ってくれない?』と言われておるしの」
あれ、魔導書と技能書の時にもおじさんが同じようなことを言ってた気がする。もしかして、同一人物だったり?
······流通や経済を気にするって所に引っかかるなぁ。エメロアが街の衛兵に様付けで呼ばれるクラスの人だから貴族、しかも伯爵や公爵レベル?いや、王様も有り得るかも?
まあ、それは置いといて。
「特待生制度ってどんなの?」
「入学試験の結果や冒険者ランクによって学費が一定割合免除されるのじゃ」
ふむ、名前から想像できる通りだね。
「夏季短期講習は八月からって言ってたけどさ、入学試験はいつなの?もう過ぎてたりしないよね?」
「入学試験は一週間後、二十九日じゃ」
それで、入学が八月一日と。······え、事務員さんの負担デカそうじゃない?入学者の把握とその情報の整理、そして講師の用意を二日でやらされるの? ハードスケジュールすぎて可哀そうだよ。
「どれだけ入学者がいるかわからないのに講師の人達をどうやって集めるの?」
「いいや、基本的に募集定員を超える人数が集まるからそこは心配ないのじゃ」
「へえ、そんなに人気なんだね」
「短い期間で多くのことを学べるからの。短いからといって内容が薄いわけでもなく、しっかりと教えてくれるから人気らしいのじゃ。さらに、講師には現役の冒険者を呼んでおるから冒険者としての心構えも聞ける貴重な機会じゃ」
倍率高そう。合格できるかどうか心配だねぇ。
「今回は王族が入学するらしいから特別にSランクの冒険者が······む」
「どうしたの?」
「そういえば、ワシとパンツァーが呼ばれておったわ」
えええ!?忘れてたの!?
「エメロアが教える知識はある程度基礎が固まってないと理解できないんじゃないの?」
「面倒くさいのう······ずぶの素人にゼロから教えるのは」
生徒に王族がいる講師の態度じゃないってこれ······。
「エメロアは何を担当するの?」
「魔術に薬学じゃな」
「なんで今まで思い出してなかったの!?」
今のボクとの会話に出てきた言葉だよね!?
「それは···お、無事に自宅に到着じゃ。ほれ、さっさと中に入るぞ」
これ以上無いほど不自然な話題逸らしだ······。
「ん?転移じゃなくて徒歩で帰ってきたのか」
「スノウの恥ずかしがる姿が見たかったからの」
「なんて理由で嬢ちゃんを連れ回してんだエメ!」
「そんな理由だったの!?」
歳の割に性格が子供っぽいよねエメロア!?
「それはそうとパンツァー、夏季短期講習の講師の件を覚えておるか?」
「······あ」
おじさんも忘れてたのね。あとエメロアの話題逸らしにあっさり引っかからないで。
「って違ぇ。その件は忘れてたが、エメは後でもう一回説教だ。朝で懲りたと思ってたんだが、まだ懲りてなかったようだな」
あ、引っかかってなかった。
「なぬ!」
なんでエメロアはこうなるってわからなかったのかなぁ。
「あたりめぇだ!体に合わせて服を女物にするのは百歩、いや千歩譲ってしょうがねぇのかもしれん。だがな、恥ずかしがる嬢ちゃんを見てぇからって理由で連れ回したのは許さん!」
「そんなに怒らなくていいよおじさん。それ以上のことはされなかったからさ」
「いいや、こいつは叱らねぇと直んねぇからな。ったく、今は八百歳くらいだってぇのに、お前の精神は体と同じ幼児のままか?」
「それは言い過ぎじゃぞ!」
「てめぇの欲望に従って悪戯を繰り返す奴のどこが子供じゃねぇんだ?」
「うぬぅ······」
おじさんの言う通りで、エメロアのやってることは子供だよね······。
「嬢ちゃん、明日から冒険者ギルドの戦闘力試験で上のランクを目指せるように数日間特訓だ。今日はもう夕方だし、帰って夜ご飯でも食べときな。嬢ちゃんは異界で昼ご飯食ってねぇだろ?」
「わかった。じゃあね」
「待てスノウよ!もう少しここでゆっくりしていかんかの!」
エメロアはおじさんの説教が嫌なのか必死にボクを留めようとしてる。でも、気にせずに帰ります。エメロアは大人しく怒られてね。
「ばいば〜い♪」
「待て!待つのじゃスノウよーーー」
「じゃあ、ゆっくり話そうか」
エメロアは首根っこを掴まれながらおじさんの部屋へと連行されていった。······どれだけ叱られてもエメロアはめげないんだろうなぁ。