第九十四話 第二回イベント⑪
月末滑り込みセーフ!!!姫河ハヅキでーす!
いやぁ、最近暑いですね······これだけ暑くちゃマジで外出する気起きません
まぁ私は元から出不精なのだけれども
ちなみに夏休みは卒業研究も休んで思う存分遊ぶつもりですわー。ウチの教授割とゆるいので夏休みの間はゼミないし「研究も進めなくてもいいよ」って言ってくれたんですよねー。
ちょうどスマホゲームもコラボやキャンペーン来ますしー
あ、更新はするつもりなので安心してください
◇◆◇◆◇◆◇
「ぬぅ······?」
「お?」
『え?』
「「「「行くよー!」」」」
突如四人に分身したスノウに戸惑う三人。
四人のスノウは、一人は空に浮かび、二人は素早く辺りを駆け回り、もう一人はその場に留まり、それぞれがいくつもの魔術をバルにに放つ。
アイリスとセナは「支援が増えただけか」と気にせず戦闘を続けるが、バルド()は否応なしに意識させられる。
(どの分身からも魔法が放たれているということは、単なる幻ではない。中に魔道具が仕込まれているか、従魔なり何かしらの使役モンスターに姿を映している。それなりの攻撃を一当てすれば剥がれるだろうが、この熊獣人がいてはそれも難しいな。かといって放置は論外。さて、どう動くか······)
四人全員を警戒しつつ、アイリスとの戦闘を続けるバルド()。
絶え間なく四人のスノウから放たれる魔術を防ぎ、アイリスへの隙にならない程度に時折距離が近くなる二人のスノウに攻撃し、それでも彼は揺らがない。剣技は変わらず冴えわたり、本来のバルドの実力の高さが窺える。
「キリがねぇな······!」
「貴様らが大人しく斬られればすぐ済むが、なっ!」
アイリスにわずかな隙が生まれたのを見逃さず、アイリスの武器を跳ね上げる。
「あっやべっ」
「隙ありだ―――なんてな」
「「っ!」」
アイリスに追撃しようとしていたが急に動きを変え、その攻撃の隙を狙っていた二人のスノウへ鋭い反撃を行うバルド()。アイリスに向かって武器を振りかぶっていたのも殺気を向けていたのもフェイク。偽物を炙り出すためだったのだ。
防御魔法のおかげでダメージは深くないが偽装が外れ、リルとイナバの姿が現れてしまう。
「四人同時にかかってこなかったのは悪手だったな。これで私が警戒すべきは二人のみと「―――【救済の御手】」 グ、アアァァ!?」
バルド()が笑みを浮かべて残り二人のスノウに意識を向けた瞬間、突如頭上から落ちてきた本物のスノウが背後から【救済の御手】を命中させる。
うずくまったバルド()の身体と剣から黒い靄がにじみ出し、うめき声をあげて苦しんでいる。
「······うっわ、『魂縛』に『傀儡』とか呪術の中でもヤバいのばっかじゃん。解除したけど」
「ふむ?呪術はよく分からんが、字面的にヤバそうなのは察した。やっぱ便利だなそれ」
「どうも自分にかけたデメリット込みの強化スキルも解除しちゃうみたいなのが玉に瑕かなー。【憤怒】強制解除されたし」
効果量が高い強化スキルはデメリットが含まれることも多いため、【救済の御手】は対象の全状態異常を解除するが、自身の強化も解除してしまう諸刃の剣と言えよう。
『すーちゃんとあーちゃんで一部のスキルを共有してるからか、あーちゃんのエクストラも解除されてるわねー』
「【憤怒】が解けるのは良いことだと思うの」
「····おかーさん、あの男にトドメは刺さないの?」
「え?あぁ、普段ならあんまり気にしないけど、エクストラスキルくれた相手に『救ってほしい』なんて言われたらねぇ。とりあえず本人を目覚めさせるかなぁ」
「お、黒い靄止まったぞ。どうなるんだこれ?」
「······ふむ」
『ヘレナ、どう?』
『······元の魂が目覚めないわね。相当摩耗してるのかしら······っ!?また呪いが!』
『え?』
『マズいわ!さっきので呪いは解除できてたけど憑依は解除できてない!』
「嘘ぉ!?」
「あ゛?さては終わってないな」
『バフのかけ直しするわねー』
「なんで効果なかったのかな!」
『元の魂が完全に眠りについているから抵抗が一切なくて、そのせいで【救済の御手】の対象にカウントされなかったのかしら?条件や対象に概念絡んだスキルは融通利いたり利かなかったりで面倒なのよねー』
『とりあえず現状では【救済の御手】はムダってことだね!』
『『『いいえ、貴方たちのおかげで可能性が繋がったわ』』』
「ん?」
「お?」
『え?』
◇◆◇スノウside◇◆◇
「······精神世界か」
ヘレナとの初邂逅以来何度も来ているので、来た瞬間に自分が精神世界にいることを察するくらいには慣れている。権能や異能の修行でよく使ってたんだよねー。
「ここは······?」なんてとっくに通り過ぎた境地よ。
ちなみに、例によって例の如くここと現実は時間の流れが違うのでそこそこ話し込んでも大丈夫である。
「俺達をここに連れて来たのは普通に考えてあの声の主なんだろうが······変に声がダブって聞こえたの何なんだろうな?すっげー気持ち悪いんだが」
『『『ごめんなさいね、その竜人の子に祓ってもらった呪詛の影響がまだ残ってるのよ』』』
え?
「ボクはバルドの呪いしか解いてないけど······?」
魔力の質的に素性はなんとなく察してるけど、貴方の呪い解いた記憶ないんだよねー。
「さっき黒い靄がバルドだけじゃなくて剣からも出てたし、もしかして剣に宿ってたのかしら?」
「「あ」」
そういやそうだったね。
というか、対象を認識してなくて直接触れてなくても効果あるんだ、【救済の御手】。融通利くのか利かないのか······。
『『『そう、あの呪縛から解放されたからこうして貴方たちに干渉できるようになったの。そのお礼と、もう一つの頼みをさせてほしい』』』
でしょうね。バルドに近しい人······家族か恋人あたりかねこの人。
『『『あの人を、バルドを救ってほしいの。私の守護者にして、初恋の人』』』
ほうほう······ん?
「あれかしら!身分違いの恋!?」
「分かりやすくテンション上がってるの草なんだが」
「女性はいくつになっても恋バナ好きだねー」
『『『······続きを話してもいい?』』』
「「「どうぞどうぞ」」」
ごめんね、話の腰を折っちゃって。
『『『私はバルドをああも苦しめる気はなかったの―――』』』
なるほど。恋心が無意識に祝福を強化してしまい、不本意にもバルドを不老の存在に変えてしまったと。
『『『私は死んだ後、冥界で過ごしていたわ。生前はそれなりに善いことをしていたから神の眷属に誘われていたけど、私はそんなことよりバルドといたかった。しばらく経ってもバルドの魂が冥界に来なくて、冥界神の一柱に頼んでバルドの様子を見てもらった。そこで信じられないものを見たわ。―――不老となったバルドの肉体を操る不届きものがいたの』』』
『『『既に冥界に来ているはずの魂を肉体に縛り付け、肉体は己が物として使っていた!許せるわけがなかった!前から勧誘してくれていた神に頼んで眷属精霊にしてもらい、神命として現世に戻ったわ』』』
『『『バルドの肉体の強さは神も分かっていたから私にかなり大きな力をくれたわ。そのおかげで私はあいつを追い詰めることができたけど、けど······アイツはバルドの魂を人質に取った!何も······できなかった············!あの人を救いたくて現世に来たんだもの············!』』』
『『『どうにか神に力の大部分を返せたけど、私はバルドの剣に封じられて、呪詛で縛られてしまったわ。それからは、剣から動けないまま、眠ったバルドの魂とバルドの身体で好き放題するクズを見させられ続けた』』』
『『『もう魂は限界も限界で、本来ならとうの昔に魂が天に召されてバルドは死ねるはずだった。なのに!なのに、あの下郎が肉体を奪って無理やり使って······!望まぬ行動をさせられることにバルドは疲れ果てて、いつしか魂は眠りについてしまった。あいつを引きはがせば、バルドは死んで救われる。その為に必要な力は渡すから、どうかお願い。あの人を······救って············! 』』』
話し始めたときは声を荒げていた彼女は、膝から崩れ落ちて泣いていた。勿論バルドの身体を使い続けている者への怒りも大きいのだろうが、それ以上にバルドを想って泣いていた。
「スノウ、セナ、あいつ倒せると思うか?眠った魂起こすならそれなりの必要時間が必要だろうし、いっぺんボコさないとだよな」
「私はバフと回復担当だから······すーちゃん的にはどう?」
「んー······正直に言わせてもらうと、もらえるスキル次第かなー。精神世界に来る直前、あの騎士に『死兵』とか『超人強化』がかかってたし現状じゃ正面から倒すの多分ムリ。そこ二つに匹敵する強化系エクストラか、魂を目覚めさせるのに手っ取り早いのがないと厳しいよ。あと、魂関連はあんまり触ってないから眠った魂を起こす方法も教えてほしい」
『『『······協力して······くれるの············?』』』
「お前さんに会う前からあの国とは敵対してるしなー」
「勝算、手段があるならだけどね?」
「二人がやるなら私に否はないわよ!」
『『『······ありがとう。私から渡せる力は、バルドを目覚めさせるためのものが一つ、貴方たちに渡すお礼が一人一つで三つ、それらの効力を高めるものも一人一つの三つよ』』』
めちゃくちゃ大盤振る舞いだね!?
「あ、私の分のお礼はあーちゃんに渡してくれない?私は支援が割と多いし、一緒にいれないこともあるから」
『『『分かったわ』』』
《エクストラスキル【追憶の御手】を獲得しました》
《エクストラスキル【月の姫巫女】を獲得しました》
《称号《月の寵愛》を獲得しました》
『『『【救済の御手】を持つ、竜人の貴方にバルドの覚醒をお願いするわ。対象に己の記憶を与えたり、対象の記憶を呼び覚ます【追憶の御手】でバルドの魂に刺激を与えて、少しでも彼が起きれば【救済の御手】の対象になるはずよ。一度じゃバルドが起きないかもしれないけど······その場合は何度かお願いできるかしら?』』』
「おっけー。ちなみに、呼び覚ますバルドの記憶はどんなものなの?それを【追憶の御手】だけじゃなくて現実でも再現できれば成功率上がりそうだけど」
『『『そうね。眠ったと表現しているけれど、目や耳からの情報はバルドにも届くから効果はあるはずよ。······でも······うーん』』』
「あ、恥ずかしい記憶なら無理は言わないよ」
『『『いや、言いにくいなんてことはないのだけれど······私との記憶だから、私が直接姿を出せるならいいのにな、って思ったのよ。長年の呪詛で消耗した今の私じゃまともに顕現できないし、声だって変だもの。現実で再現は無理ね』』』
「今、お前さんの本当の声をスノウに聞かせられるか?【追憶の御手】を利用してなんやかんやで」
『『『できるけど······何の意味があるの?』』』
「百聞は一見に如かずだ。とりあえずやってくれ」
『『『え、えぇ。いくわね』』』
······ふぅむ。元はこんな声か。
「あ、あー。······こんなところかしら」
『『『えっ!?』』』
「新鮮な反応」
「やっぱり我が子ながらヤバいわねぇ」
「こういうことよ。で、幻術ならボクの仲間ができるしボク自身もそこら辺の少し持ってるから姿もかなり高精度で真似れるんだよねー」
『『『竜人じゃなくてドッペルゲンガーの類だったかしら?まぁ真似は存分にしてもらって構わないわよ。バルドを救うためもの』』』
「同じこと色んな人から言われるなー。······確認させてもらうけど、本当に君の姿と声を真似ていいの?君じゃない人間が、君の姿と声で、君の好きな人に近づくんだよ?」
『『『············えぇ。可能なら私自身がその役割を果たしたかったけれど、無理だから。今はバルドが救われることが第一よ』』』
アーツ/スキル解説
『超人強化』:強化魔法の一つ。全能力値を大幅に引き上げるが、コストが非常に重い。支援魔法系統四次で習得する。
『魂縛』:【呪術】で付与する呪怨系状態異常の一つ。対象の魂を縛り、肉体との繋がりを遮断する。
『傀儡』:【呪術】で付与する呪怨系状態異常の一つ。対象の身体を思いのままに操る。
『死兵』:【呪術】で付与する呪怨系状態異常の一つ。対象の肉体が自壊するほどの過剰身体強化。