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第九十三話 第二回イベント⑩

月内更新ヨシ!(地面に埋まったハードルを指さしながら)


短めかもですがどうぞお楽しみください。

◇◆◇◆◇◆◇


「······さすがに、ジリ貧ですね」


「エクストラスキル込みでも格上の集団はそりゃキツいニャ」


「むしろよくここまで保ったよねー」


 あるとりあ、マタタビ、もこもこの三人は、ニュクサリナ第二騎士団と戦闘していた。バルドという例外を除けばこのニュクサリナで二番目の大戦力である。

 レベルも人数も自分たちより上の相手に対して、セレネから授かったエクストラスキルと三人の高い地力でどうにか互角に近い戦いを繰り広げていたが、じりじりと追い詰められてきていた。


「追い詰めたぞ侵入者どもめ!」


「クソッ、しぶとかったな」


「手間かけさせやがって。どうせ無駄になるってのによ」


「············勝ち誇るのは早いんじゃないかなー?」


 騎士団による猛攻を受けてボロボロになり、HP、MP共に三割を下回っている。それでも彼女たちの目から闘志が消えない。


「貴様ら異界人は特殊なスキルを持つ者も多いと伝わっている。だからこうして少しずつ削り、気を緩めることなくここまで追い詰めた。まだ手立てがあるなら使う隙はあっただろうに使う素振りがなかった。詰みだ」


「まぁ確かに詰みニャ。―――アチシ達だけなら、ニャ」


「お届け物でーす!!!」


「「「「「VAAAAAAAAA」」」」」


「「「「「オオオオオオオオオォォォ!!!」」」」」


『『『なっ······ !?』』』


 多数のプレイヤーと騎士を引き連れたスノウ達が城の内壁を破壊しながら大勢で現れる。城内に突入する前と比べて軍勢の人数が多くなっているあたり、突入してからこの場に来るまでの間にいくつか騎士団とプレイヤー達を蹂躙してきたようだ。




「────♪」


【月夜の演奏会】

〈演奏:誘惑の魔曲〉



「La───♪」


【堕落の邪視】

【認識攪乱】

〈歌唱:誘惑の魔曲〉

〈魅惑の美声〉


『『『―――』』』


 騎士団が優勢だったとはいえあるとりあ達との戦闘で少なからず消耗していたこと、奇襲だったせいで抵抗の準備が不十分だったことなどいくつもの要因で騎士団の半分以上が魅了にかかってしまう。

 魅了にかからなかった残りは魅了と死霊術に支配された軍勢に蹂躙されて息絶え、死霊術で使役された。


「こ れ は ひ ど い」


「奇襲で初手魅了とは······どう考えても敵側の行動ですよね」


「そもそも騎士たち格上なのになんで魅了通るの?」


「バフデバフにポーションまで重ねたら割と格上もいけるんだよ」


「この大軍で攻めれば儀式場の破壊もいけそうですかね······ ?あ、スノウちゃん。アンデッドはどうするんでしたっけ」


「えっとねー······これ、『黄泉傀儡』。これがあればアンデッドも魅了の対象になるから、セイネイさんがこの軍勢使役できるよー」


 そう言ってスノウがインベントリから取り出したのは、茨に絡みつかれた髑髏という禍々しい意匠がこらされた魔道具だ。セイネイが受け取り装備すると独りでに浮かび上がり、彼女の周りをふよふよと漂いはじめた。


「おぉ······」


「あ、ヒバナさんにはこれ」


「なんだこれ」


「【死霊術】のアーツを一部使える魔道具ー。死体のアンデッド化とかね」


「······マジか」


「じゃ、ボクはバルドの方に加勢するからー」


 スノウが神輿から飛び立ち、姿が見えなくなってからあるとりあ達三人は、神輿に乗ったセイネイとヒバナに視線を向ける。


「······ねぇ」


「······なんですか?」


「おミャーらが突入してきた時からずっと気になってたんだけど············なんで神輿に乗ってるんニャ?」


「魅了された奴らが意気揚々と神輿担いでるの、シュール過ぎて笑っちゃった」


「これ中にいる人の音楽系スキルにバフ入るんですよね」


「あと私とセイネイがAGI低いからこれで運んでもらうことで進軍速度の問題解決してるんだよな。これなかったら来るのかなり遅れてたぞ」


「······見た時は何かと思いましたが、めちゃくちゃキーパーツだったんですね。私たち割とギリギリでしたし」


「それじゃもこもこもこの神輿に乗せて儀式場向かうか。スペース的にあるとりあとマタタビは徒歩で頼むわ」


「構いません」


「了解ニャ」


·

·

·

·

·


481:名も無き異界人(虜)

進め進めー!


482:名も無き異界人(故)

敵はっけーん

おらどけ


483:名も無き異界人(故)

依頼を受けたはずなのに爆速で寝返って依頼主の部下をボコる私たち······

ここまで酷い裏切りそうそうないでしょ


484:名も無き異界人(虜)

俺ら魅了くらっちゃったからね、仕方ないね


485:名も無き異界人(故)

そうそう

俺らは力及ばず敗れ去った後、哀れにもその骸を使役されてしまった被害者だから


486:名も無き異界人

······本音は?


487:名も無き異界人(虜)

城攻め楽しい


489:名も無き異界人(故)

美少女乗せた神輿担げるのはどう考えても役得だろ


490:名も無き異界人(虜)

あ、お前神輿担いでる一人か!

裏山!!!


491:名も無き異界人(故)

ふはははは

羨ましかろう!


492:名も無き異界人(虜)

ちくせう

このアバターが動けば無理やり場所を奪ってやるのに······!


493:名も無き異界人

城を守る気ゼロで草


494:名も無き異界人

欲望のままに行きすぎだろお前

依頼はどうした


495:名も無き異界人(故)

トップ層とかニュクサリナ第一騎士団いれば大丈夫じゃないの?

知らんけど


496:名も無き異界人

生産職だからこうして掲示板で高みの見物してるんだが、城内そんな面白いことなってるのか

一人くらい軍勢増えても影響少なそうだし行けばよかったかな


497:名も無き異界人(虜)

いやー?防御貧弱だろうと壁一枚増えるだけで割としんどいぞ

魅了されて肉壁になる→死ぬ→アンデッドとして使役されて肉壁(二回目)

って感じで実質二枚壁が増えるわけだからな


498:名も無き異界人

つまり悪影響はないと


499:名も無き異界人(故)

そうかな······そうかも······


500:シユ

あるに決まってるやろ!?

ウチら城を守る側やで!?


501:名も無き異界人

でもさ、正直きな臭くない?


502:シユ

······まぁ、それは、な

ウチらが守ってる場所の役割聞いてもはぐらかされるし、姫さんの方に人あんまり行っとらんみたいやし······


503:ヒバナ

儀式場守ってるプレイヤーたちへ

今からたくさんのおともだちを連れてそちらに行きます

楽しみにしていてください


504:名も無き異界人

いや草


505:名も無き異界人(故)


505:名も無き異界人

おともだち()


506:名も無き異界人(虜)

おともだちと呼んでもらえるんですか!


507:レン

······ちなみに何人くらいいるんだ?


508:名も無き異界人

いや、さすがに答えてくれるわけないでしょ


509:セイネイ

防衛に回っていた総数の六割くらいですかね


510:名も無き異界人

>>509

は?????


511:名も無き異界人

多すぎんか?


512:ヴィンセント

······ちょっと待ってくれ


513:レン

おい

おい


514:名も無き異界人(故)

阿鼻叫喚で草ァ!


515:名も無き異界人(虜)

がんばえー


516:名も無き異界人

マジで洒落にならん数残ってるな!?


517:セイネイ

いやぁ、死霊術も魅了も便利ですね

イベント終わったら本格的に探してみましょうか


518:名も無き異界人

>>517

お願いだからやめろください


519:名も無き異界人

音楽系プレイヤーって攻撃手段なかったはずなんだけどなぁ

下手したら最強の広域制圧型になるぞこの人


520:名も無き異界人(虜)

>>517

魅了した相手への指示が通りやすくなったり魅了した相手のステータス引き上げたりするスキルの情報あるんだけどいる?


521:名も無き異界人

>>520

おバカ!!!!!


522:名も無き異界人

>>520

何FOE作ろうとしてんだお前!


523:名も無き異界人(故)

>>517

音楽家でーす

アンデッドへのバフ入る曲知ってまーす

周辺の死体を一時的に使役する曲も知ってまーす


524:名も無き異界人

>>523

だから何してんだお前ェ!


525:セイネイ

>>520>>523

あとで聞かせてください


526:名も無き異界人

ここぞとばかりにレアスキル持ちがポコポコ出現してるな······


527:名も無き異界人(虜)

「みんなのちからをあわせてさいきょうのおんがくかをつくろう」


528:名も無き異界人

この調子だと音楽家の皮を被った大軍系レイドボスが爆誕しそうだけど······?


·

·

·

·

·


 父さんと鍔迫り合いしてるバルドの後頭部目掛けてドロップキーック!!!


「―――!」


「えっ、今の防ぐの」


「どっせい!」


「ぐぅっ」


 ドロップキックは防がれたけど代わりに父さんが腹パンかましたからヨシ!


『ヘレナ、魂はどう?』


『あー······本来の魂は休眠状態で、生きたまま本来の身体を捨てた別人の魂があの身体を使ってるわね』


 なるほど。アンデッドじゃない生霊だからボクじゃ気付けなかったのか。


「何故邪魔をするのだ貴様らは!すぐにこの国から去る旅人の分際で!」


「んー······強いて言うなら気分?」


「そうそう。別に行きがけだとしても、気に食わないもんは潰すだろ?」


『夫と息子が蛮族過ぎて困る』


「············は?」


 わ、すっごい驚いてる。ギャグマンガみたいな顔になってて笑う。


「何の理由もなく我らの邪魔をするだと······!?この国はこうしなければ存続できないのだ!儀式を欠かせば土地は痩せ、魔法資源は採取できなくなり、民は飢える!」


「知らないよそんなこと。今日のボクは思うが儘に行動する邪神なのさ」


「な―――」


「そもそも犠牲ありきで国家運営してるのがアホだろ」


「ねー。犠牲抜きで普通に賄えるくらいに国民の数を抑えなきゃ」


「そんなことができるはずがない!国民を半分以上も殺すなど!」


 は?バカじゃないの!?


「儀式やべぇな。本来のキャパの二倍以上いけるのかよ」


「それより『儀式があるから』で限界の二倍以上まで国民増やしたこの国の馬鹿さの方がヤバくない······?」


『これ蛮族というより無慈悲でドライなのかしら······?』


「貴様ら外道はただ斬るだけでは足りんぞ······!」


「子供に国の為だなんだと言って犠牲を強いる奴に外道とか言われたくないんだが」


「人の身体を乗っ取って何十年、何百年も使い続ける方が外道じゃない? 」


「······!気付いていたのか」


「なんだそれ、知らんぞ」


「まぁとりあえず叩きのめしてからだねー」


 ほい【憤怒】起動&父さんに共有。


「先手必勝ッ!」


「ぬがっ!」


 速っ。エクストラとカラミティ(元の四割)の重ね掛けとはいえ強化され過ぎなような············あ、別枠だこれ。


「エクストラ以上のバフを別枠で二個重ねるとこうなるんだ······」


『あーちゃん自前で強化系エクストラ2,3つ持ってたはずだからそれも重ね掛けしてるわねー』


 つまりエクストラ以上のバフを四、五個重ねてる、と。生物やめてそう······人の形をした古代兵器でしょこれ。

 まぁいいや。『魔弾』でぺしぺししようか。『魔槍』より弾速遅いけどコントロール利くからこういう支援のときだと『魔弾』の方が便利なんだよね。 ダメージ代替用の防具ストックじゃんじゃん削るよー。


「これは······!まだ実力を隠していたのか」


「最初っから切り札を見せるわけないんだよなぁ!」


 うーん······多重エクストラの父さんでやっと互角かぁ。プレイヤーではタイマンで相手できるの他にいなさそうだし、もしやレイドボスだったりする?でもレイドボスにしちゃサイズが小さすぎるし、HPが少なすぎるんだよねぇ。

 あれか。儀式場の破壊がメインターゲットでバルドはそれまで足止めできたらOKってパターンか。

 にしても隙が全然ないねー。【救済の御手】当てたいのに。

 やっぱりボクも接近戦するべきかなー?バルドにはボクは遠距離職だってイメージを植え付けて、隙を見計らって近づいて【救済の御手】の予定だったけど、いっそ攻めまくって無理くり隙をこじ開けてって方がワンチャンあるかも。


『スノウ、私たちが隙を作ってやるわ』


 ほほう?話を聞こうか。

Tips:強化系スキル、バフデバフの仕様

純粋強化枠、魔法強化枠、特殊強化枠などいくつかの枠組みがあり、同枠のものを重ね掛けした場合は加算だが、別枠のものを重ね掛けすると乗算される


Tips:スノウ、アイリスの価値観

某ソシャゲのアライメントで表すと中立・中庸。

家族や親戚、親友など自分と親しい者が重要。それ以外にはあまり強い関心を持たない

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― 新着の感想 ―
>506:名も無き異界人(虜) >おともだちと呼んでもらえるんですか!  感激です、ご友人……!  まさかこんな私を、ご友人と認めて下さるなんて!  滅多にこんな気持ちにはなりません。 その気持ちを…
レイドの人数差をひっくり返す戦法だな(ʘᗩʘ’) 良い子はマネしちゃ駄目だぞ~(⌐■-■)
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