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第一話 ゴブリンから盗まれた斧を取り返す冒険 その1

 ここは、サマラスと言う村の近くの森。


 カコーン! カコーン!

 

 木を伐り倒そうと、斧を木の幹に叩きつける音が鳴り響いていた。そして、


「へっへー。やっぱり人間の作る斧はいいなぁ! そんなに重くないのにかなり切れ味がいい! 何より磨いてあってピカピカだ!」

 そう独り言を言っていたのはゴブリンだった。緑色の皮膚をした人間型のモンスター。ボロボロの革の服を身にまとっている。


 そこから少し離れた茂みに、二人の人間が隠れていた。

「シメオンくん。あれ?」

 黒髪に青い瞳の、少女のようにも見える女性がそう言った。

「あの斧ですね。間違いなさそうです。」

 シメオンと呼ばれた少年が答える。紺色の長めの髪、茶色の瞳。15歳という年の割に幼さの残る顔立ち。

「私思うんだけど、君は今回が初めての冒険なんだし、今回は私のバトルを見学……あ、ちょっと!」

 女が喋ってる途中で、シメオンが茂みから飛び出したので、女は慌てた。

「僕はサマラスの村のシメオン! あんたが持ってるその斧を返してもらいに来た! バトルの時間だぜ、ゴブリン!」

「ギギッ!? 人間か!」

 シメオンに気づいたゴブリンが面食らって叫んだ。

「はっ!」

 シメオンが気合の声を出すと、彼の体を中心に青い光が広がり、あたりの空間を染め始めた。

「まったく!」

 悪態をつきながら、女はシメオンの近くに寄り、青い光を浴びる。

 そして、ゴブリンも青い光に曝された。

 シメオンが立っている位置を中心に、半径数メートルほどの空間が、青い色に染まった。

 その空間の中央に、光そのものが固まってできたような、光り輝くテーブルと椅子が出現する。

 空間の中にいるのは、シメオンとゴブリン、それに女の三人だ。

「さあバトルだ。分かっていると思うが、バトルが終わるまであんたはここから出られないぜ、ゴブリン」

「けっ、バトルを始められちゃあ仕方ねえ。あんたが勝ったら斧は返すさ。だが、俺様が勝ったら勝者特権であんたに恥ずかしい呪いをかけてやるぜ。それでもいいのか? バトルを取り消すなら今のうちだぜ?」

 ゴブリンは緑色の顔を怒りでどす黒く染めながら、そうすごんだ。

「お好きにどうぞ。勝てるもんならね。」

 シメオンは涼しい顔で答える。

「あんたが仕掛けた勝負だ。バトルの種目はこちらが選ぶ。ゴブリン族の伝統的なカードゲーム、ネズミ集めだ。いいな?」

 ゴブリンはますます顔をどす黒く染めてつばを飛ばしながらそう言った。

「いいね。予習してあるんだ、それ」

「ケーッ! ムカつく! 決めた! 絶対お前をネズミ集めで負かす! そして呪う!」

 ゴブリンはその小さな体でノシノシとテーブルまで歩き、椅子にドスンと腰掛けた。

 シメオンもゆっくりとした動作でテーブルまで行き、椅子にかける。

 テーブルの上に30枚のカードが出現する。


「シメオンくん」

 女が小さな声で語りかけた。

「メラニアさん、ごめんなさい。どうしても僕が戦いたかったんです」

 シメオンは小声で、あまり悪びれずにそう答えた。

「いいわ。もしあなたが負けたら、あたしがあなたの呪いを消すために戦う。だから安心して」

「ありがとう。でも、僕が負けることはないですよ」

 メラニアと呼ばれた女はため息を付いた。


 30枚のカードのうち、20枚がすっと宙に浮き、10枚がシメオンの方に、10枚がゴブリンの方に動いた。まるで目に見えない誰かが手渡しているかのように。

 シメオンも、ゴブリンも慌てることなくその10枚を受け取る。

 ゴブリンは受け取った10枚を一瞥しながら、

「おい人間、あれだけ自信たっぷりだったんだ、ルールの説明はいらないよな?」

「待って!」

 シメオンが口を開く前に、メラニアが遮るように言った。

「ゴブリンさん、私のためにルールの説明をしてくれないかしら。大体は知ってるつもりだけど、確認しておきたいの」

「ああ? ああ、まあいいだろう。今俺らが持ってるのが手札だ。手札は10枚ある。内訳は必ず1、2、3、4、5、6、7、8、9、10が一枚ずつだ。俺の手札も、そっちの人間の手札も同じだ」

 ゴブリンは説明を続ける。

「テーブル上に伏せてある10枚が得点札。最低の数字は-3、そこから1ずつ数字は増えていって最高の数字は7だ。0はない。最終的に、持っていた得点札の数字を合計して、高いほうが勝ちだ」

 メラニアはそれを聞いて、理解しているふうに頷いてみせる。


 本当はメラニアはこの説明を聞く必要はない。経験のある冒険者である彼女は当然このゲームを熟知している。なぜルールの説明を求めたかと言えば、それはシメオンの心の冷静さのためだ。

 メラニアはシメオンがゲームに強いとは聞いているが、いざ、モンスターと勝負する時にシメオンが精神の冷静さを保てるかどうかは分からない。稼げる時間は稼いだほうが良いと思ったのだ。

 シメオンはそんなメラニアの心を知ってか知らずか、目を閉じて我関せずというような顔をしている。


「ゲームの進行は簡単さ。山札がめくられる。例えば3が出たとして、二人が手札から裏向けて一枚出す。出したカードを面に向ける。大きい数字を出してたほうが3の得点札を手に入れるって寸法さ。だが、一度使った手札はもう使えねえ」

 頷くメラニアを見て、ゴブリンは説明を続ける。

「じゃあ次に、山札をめくって-2が出たとする。で、まあ二人がカードを出して、表向きにする。小さい数字を出していたほうが、その-2点を頂戴しちまうって寸法よ。取りたくなかったら、相手より大きい数字を出さなきゃならんのよ。マイナスの場合はルールが逆転だ」

「同じ数字だったらどうなるのかしら?」

 メラニアが聞いた。

「そんときゃあ、どっちも取れねえ。使った手札は使えなくなって、次の得点札をめくる。次はさっき取れなかったやつといまめくったやつと、2枚をセットにして、取り合うことになる。合計がマイナスだったら取り合うじゃなくて押し付け合うだな。ルールはこんな所だ。10枚ある手札を1枚出してぶつける勝負を10回して、終わった時に得点の高いほうが勝ち、簡単だろ?」


 そう、簡単だ。説明は短時間で終わり、大して時間も稼げなかった。

 メラニアがシメオンの方を見ると、大丈夫ですよ、と言わんばかりにシメオンが微笑んでいた。

 ため息をつくメラニア。

「さあ、始めようぜ、ゴブリン」

「後悔させてやるぜ、人間。ゲームスタートだ。」

 テーブルの上に置かれていた10枚の山札が宙に浮き、見えない手がそうしているようにシャッフルされた。そしてテーブルの中央に戻り、一番上の一枚がめくられる、。

 そのカードは、7だった。大きく数字が書かれていて、小さく7匹のネズミの絵が書かれている。

 いきなり、最高得点のカードが出た。

 シメオンの冒険者デビューとなる最初のバトル。

 そのバトルは、いきなり最も重要な場面で始まった。

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