俺より可愛い奴なんていません。5-14
女心クイズは続き、葵は既にもう4問も出され、そろそろ嫌気が出てきいた。
佐々木の歌もその間に終わってしまい、綾の出し始めた女心クイズがやけに盛り上がった事で、失礼な話だが佐々木の歌は半分程聞き流されていたりした。
今は馬場が歌っており、所々で皆合いの手などを入れたりしているが、未だにそのクイズは出されていた。
佐々木も仲間に加わった所で、綾から5問目が出されようとしていた。
「それじゃあ、5問目ね?」
「ちょ、ちょっと待った!」
綾が嬉嬉としてクイズを出そうとすると、このままでは精神的にもカラオケ的にも良くないと思った葵が待ったを掛けた。
「もう、これで最後にしよう!
カラオケに来てるのに、カラオケがサブみたいになりつつあるから」
葵はこれ以上、女心などといった訳の分からん物で、ダメな奴のレッテルを貼られるのはこりごりだった。
それっぼい理由と共に葵はこのゲームを辞めようと提案すると、意外とその提案は通り、確かにと楽しげにしていた女性陣達が納得し始めていた。
「だいたい不公平だろ? お前達にだって俺たち男心なんて分かりやしないのに、一方的にこんなの」
「男心ぉ〜?? そんなめめっちいこと言ってるから、これ以上デートを引き伸ばしたくない彼女を引き止めちゃうんだよ!」
続け様に言った葵の反論は通らず、悪戯っぽく笑った卑しい綾に一蹴されるように答えられた。
葵はつい先程出された質問にも、上手く答えられて居らず、葵の考えは女子陣から総スカンを食らっていた。
「いや、あの質問の仕方はおかしいだろ!
なんで上手くいってたデートを、少し彼女が静かになり始めただけで切り上げんだよ!! 訳の分からん……」
葵が先程質問された内容はこうだった。
゛何とか取り付けた憧れの女性との初デート。
計画をしてきた事は全て完璧に盛り上がり、デートは大成功。
しかし、先程から彼女が急に静かに……。
時間も16時と微妙な時間、この後の予定も決まっていない。
そんな時、あなたはどうしますか?゛
葵は質問を出された瞬間に、「はぁ?」っと言わんばかりの素っ頓狂な、本当にどうでも良さそうな表情を浮かべていたが、葵の答えを聞かせろと急かすため、葵はその場で真面目に答えたが、女子陣は言わせた挙句にその答えに納得がまるでいっていない様子だった。
「嘘は付くし、自分勝手にデートに振り回すし、めちゃくちゃだな〜立花」
まるで納得がいっていない様子の葵に、近くにいた河野も綾の意見に賛成といった様子で頷きながらそう答えた。
「いや、お前も対して変わんねぇだろ。
なんで、デートをそのまま続行した上で、次の日の約束まで取り付けんだ??
初めてのデートだっつってたろ?」
河野に言われるのは流石に納得できなかった葵は、すぐさま彼に反論していた。
そして葵の言った通り、河野答えが1番女子からの受けが良くなかった。
「はいはい、2人とも同じぐらいだよ。それじゃあ、最後の質問ね?
あなたには憧れの女性がいます。
そんな彼女がある日、友人と理想の男性像について語っていました。
彼女の答えは、超絶イケメンの芸能人をあげ、その上性格も自分好みに話していました。
それを見た貴方はどうしますか?だって」
綾はスマホの画面を見ながら質問を言い終え、顔を上げた。
しかし、葵以外の男性陣は下手な答えを言えば、バッシングがとてつもないため、真剣に悩みながら考えていた。
「まず、そんなわがままな女、好きにならねぇよ。
どんだけ可愛いか知らねぇけど、どうせ大したことねぇだろ……。
とゆうかそんな事言ってる奴は、大体大した事ない……」
バッシングを受け続けた葵は完全に不貞腐れていて、確実にこの問題でも予測されて無いであろう答えを答えていた。
葵の答えに紗枝は苦笑いしか出来ず、不貞腐れてる葵に綾は質問した癖に面倒そうに「はいはい」と流し、美雪は少し残念そうな表情を浮かべていた。
「なんだぁ? 立花、最後の質問の答えがそれでいいのかぁ??
え〜と、俺はね……、それでも諦めないッ!! かな?」
ライバル視していたのか、河野は完全にやる気を失っている葵にそういった後、真剣に考えた答えを述べた。
すると、ここで初めて河野の答えにおぉ〜っと女子陣から声が上がった。
全員が分かりやすいため、まだ北川が答えていないのに答えが分かってしまうが、それでも北川はその答えに合わせようとする気は無いのか、まだ難しい表情で考えていた。
そして、そんな北川に視線が集まる。
ここまで優秀な成績を残してきた彼だったため、注目されるのは当然だった。
「え〜と、俺はちょっと諦めちゃうかも……」
北川が答えると女子陣からは「えぇ〜」っと声が上がった。
葵も少し意外だと思いながら、北川を見つめいた。
「え? え? どうして??」
北川の答えには流石に敏感な佐々木が、すかさず食いついた。
「え? いやぁ〜、ちょっと昔好きだった人がね……」
北川は少し恥ずかしそうに苦笑いを浮かべながらそう答えた。
皆までは言わなかったが、北川が言いたい事は何となく理解出来た。
「へぇ〜……、こんなイケメンの北川君が失恋をした事があるなんて……」
「ねッ、ちょっとその子信じられない……」
あのモテる北川にも過去に恋愛関係で挫折があったのが、意外で綾と佐々木はそう呟いていた。
佐々木は若干嫉妬のようなものも含んだ物言いだったが、事情を知る葵以外で、そこに不信感を抱く者はいなかった。
「で? 答えはどうなんだ?
まぁ、反応からして何が正解かわかるんだけど……」
葵は女性陣の反応から答えが何なのかわかってはいたが、それでも一応、綾にそれを尋ねた。
「あぁ、えっとね、ここに書いてあるのだと河野君が一番近い答えかな。
意中の女の子がそんな会話をしていたからといって諦めたりしてはきけません。
あくまで憧れであり、本当にそんな人と結婚や付き合えたりできるとは思っていないです。
自信の無い男性は女の子から嫌われます、根拠は無くとも自信を持つこと、だって。」
「ふ~ん。まぁ、最後の問題の答えは割とまともな事言ってんだな……」
「いやいや、最初から立花の答えよかずっとマシだったよ!」
答え聞きつまらなそうに呟く葵に綾は、すぐさま否定的な声を上げた。
そんな時、クイズで盛り上がっていた中で不意に全員に向かって声がかかった。
「おい、お前ら人の歌聞けよなぁ~。
最初は聞いてくれてる節があったけど、後半盛り上がり過ぎてまったく聞いてなかったろ??」
声がする方へと視線を向けると、そこには少し不満げな馬場がマイクを持って、文句を言っていた。
馬場の声と最後問題だったという事もあり、クイズはそこで終わり、再び個々で盛り上がる流れになろうとしていた。
そしてわいわいと私語多くなる中、機器から曲のイントロが流れ始めた。
「あ……、この曲……」
「ほらッ、紗枝! マイク持って! マイクッ!」
曲が流れ始めると紗枝はすぐに何かを感じ始め、紗枝が小さく呟き、綾は椅子から立ち上がると、すばやくテーブルに置いてあったマイクを二つ手に取り、笑顔で楽し気に紗枝にマイクを渡しながらそう言った。
綾の勢いと、二人でよく歌っていたのか、紗枝はそれにすんなりと応じ楽し気に二人で歌い始めた。
その光景はあまりにも微笑ましく、特にする事もなかった葵はそれをぼぉっと見つめていた。
葵が見つめていると自然と紗枝と目が合ったが、紗枝は葵と目が合うと驚いた表情をした後、すぐさま視線を逸らされてしまっていた。
葵は不思議に思ったが、特にそれについてどうこう考える事も無く、そのまま2人の歌っている姿を見ていると、自分の空いていた隣の席に急に人が座ってきた。
流石に視線を逸らし、隣を見るとそこには、苦笑いを浮かべた美雪の姿があった。
「どうした?」
葵は一瞬驚いたが、落ち着いた様子で美雪に尋ねた。
「いや、少し変わってと言われまして……」
美雪は苦笑いを浮かべたままそう答え、美雪の答えだけではピンと来なかった葵は、先程まで居たはずの美雪の席を見ると、そこには佐々木の姿があり、隣には北川の姿があった。
「あぁ〜、なるほどね……」
美雪は恐らく何故だから分からなかったが、葵にはその光景と美雪が言われた一言で全て察しがつき、思わず小さく呟いた。
「綾さんと紗枝さん、凄く歌上手いですし、2人並んで歌ってると凄い可愛いですよね〜。
仲良さそうですし!」
美雪はせっかく隣に座ったという事もあり、葵に話題を振り始めた。
「そうだな……。
でも、本当に仲が良いのかなんて分かんないぞ?」
「え……?」
葵が歌ってる2人に視線を戻し、見つめたままそう答えると、美雪は信じられないと言った様子で葵に視線を移した。
「女心は複雑なんだろ?」
「あ、あぁ〜……、結構根に持ってますね? 立花さん」
葵の次の一言で美雪は納得がいき、安心した様子で今度は楽しげに葵にそう答えた。
「当たり前だ……。なんで、あんな事で俺が罵倒されなきゃなんねぇんだよ」
「フフフッ……。クイズ、楽しくなかったですか??」
「楽しくない」
「そうでしたか」
淡々と答える葵だったが、美雪は楽しそうに笑顔を絶やさず話した。
「でも、結構私たちは意外な事が知れて楽しかったですよ?」
「さいですか……」
楽しげに言う美雪に冷たく葵が答えると、2人の間に少しの間が出来た。
葵が流石に冷たくし過ぎたかと、内心で考えていると、美雪は意を決したように葵の方を向き、話し始めた。
「立花さん……。私には嘘、付かないでくださいね?」
美雪のその言葉に葵は思わず心臓が跳ね上がり、ずっと歌っている紗枝達を見ていたが、流石に美雪の方に驚いた表情のまま振り向いた。
すると、そこには少し恥ずかしそうに笑う美雪の姿があり、葵はそれを見て一瞬思考が止まり、スグに何か言葉を返す事が出来なかった。
何も答えれずにいる葵に美雪は続け様にそう言い放ち、葵は短く「おぅ」とだけしか答えられずにいた。
 




