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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
二章 桜祭 ミスコン企画
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俺より可愛い奴なんていません。2-18

立花たちばな あおい橋本はしもと 美雪みゆきが、生徒会室に訪れてから数十分が経過し、生徒会室には静かな時間が流れていた。


「以上が、今ミスコンを開催するにあたっての現状です」


葵は麗華に切り出されてから、ミスコンに関しての話を長々と説明し、ようやく全容を簡単にはであったが、話終えることができた。


内容については、ミスコンを開催するにあたって、自分の姉がスタイリストであり、姉が務める会社の姉が所属先である事務所が、全面協力で衣装を用意したり、本番にスタッフをかなりの数動員してくれるという事と、現在の開催するにあたっての問題点を、ひとつ残らず麗華に伝えた。


葵が話途中から、麗華と波多野の表情は何かを考え込むようなそんな表情になり、話を終えた現在も2人はそのまま、頭の中を整理しているのか、黙り込んだままだった。


2人の反応は当然と言えば当然だった。


葵も話している内に改めて自覚したが、企業が完全バックアップしてくれるイベントなど、明らかに学祭の域を出ていた。


それに、葵との対面が初めてだった生徒会は、今まで情報収集をしていたとしても、生徒同士での噂でてしか情報を知る術が無なく、この話は知りえもしない情報だった。


そして、その情報があまりにも大きな物だったために、今後の進行をスグに解答を返せるはずも無かった。


静かな時間が数分流れると、考えがまとまったのか麗華は顔を上げ、葵に視線を向け話し始めた。


「なるほどね。現在の状況はよく分かったわ。

こんなに大事になっていたなんてね……」


「はい……正直、驚きました」


麗華は、素直に今の感想を零し、波多野も麗華の感想と同じことを思っていた様子で同意し、言葉を漏らした。


「とりあえず、企業の方は今後も立花君の方で連絡を取ってもらう形になると思うわ。

何か、今後の進行に大きく関わってきたりする情報があったら私に報告をお願い。

それと、こちら側から何か用意したり、準備したりする事があれば遠慮なく報告して、できる限りの事ならするから。」


「はい」


麗華の言ったことはもっともだった。


本来なら生徒会として主導でミスコンを企画するのであれば、麗華が直々に連絡を取り合いところなのだろうが、ここまで葵と葵の親族で進んだ話なら、おそらく葵の方が詳しいだろうと判断し、葵に今後も姉を返す形であれなんであれ、企業との連携は葵の方でとることになった。


葵もそれについては仕方ないと思い、麗華の指示に従う意思を見せ、二つ返事承った。


「もし、あちらさんの方で生徒会と直接話したいとかになったりしても、遠慮なく頼っていいから」


麗華は付け加えるように、葵に何かあれば頼っていいことを伝え、続けて違う問題を話し始めた。


「それから、場所ね……場所は生徒会権限を使えば、それなりにいい所を取れると思うわ。

とゆうか、こんなでかいイベント、縮こまった場所じゃ出来ないしやる価値もないし」


麗華のその言葉に葵はひとまず安心した。


正直、部活動としての出し物というわけでも、クラスとしての出し物でも無い、言ってみれば有志の出し物だったため、場所取りには不利だろうと踏んでいた。


友人の大和やまとが提案するように、中庭でやる事も視野に入れてはいたが、最悪中庭ですらも、行えない状況は普通に考えられた。


「それから、参加人数ね。やると発表をしてからのこの増えようじゃあ、スグに30人、40人の参加者人数になりそうね。

1日で、しかも学校がやっている時間内、8時~17時までの開催だとすると、この人数じゃ流石にイベントとして成立しなくなる」


「はい。自分が考える中で、手っ取り早い方法としては参加人数に上限を決める事だと思ってます。人数が多すぎれば、見てる方もおそらく飽きる可能性があります。

逆にずっと盛り上がられても困ります、長時間のミスコンを長時間盛り上げてしまえば、他の出し物に来場者が流れない恐れがあります」


麗華の問題の上げ方に補足するように、葵は自分の考えを述べた。


「でも、参加人数の上限を決めるだけじゃあ、なんかな〜……」


麗華は、長々とやらない事には大いに賛同していたが、それの打開案として、上限を設けるという事は気に入らない様子だった。


つまらないイベントにしろ、盛り上がるイベントにしろ、長々とやる事には何のメリットも無かったが、だからといって参加人数の上限を設けてやるというのも、何と言うか素っ気ないようなそんな感じは確かにあった。


「おそらく、これに出たいと思ってる女性は、シンプルにプロの手によって綺麗になりたいとか、可愛くなりたいとかそういった思いで立候補している子が多いと思うの。

せっかく立候補してくれたその子達を、ただイベントのやる時間を限るからという理由で、退けるのはちょっとやりたくないわ」


麗華の意見は、とても女性的な意見だった。


この場にいる波多野や葵からは、まず思いつくはずも無いこの意見は、葵の隣座る美雪には届いたのか、首を何度も縦に振り、大いに同意していた。


葵は内心「そんなものなのかと」呟き、まるで分からない女心を悟った気でいた。


「桜祭は、2日開催よ。何とか企業に2日頼めないかしら??」


「えぇッ!? 2日もやるんですか!? 流石に……飽きられてしまうんじゃ……」


麗華の申し出に、今まで黙っていた波多野が驚いた様子で声を上げた。


麗華は2日頼めないか葵に提案したが、葵もどちらかと言えば自分の意見は波多野に近かった。


自分が桜祭の来場者となって考えた時、2日は確かにしつこいようなそんな気がした。


まず間違いなく、2日目の人は減ると単純に思った。


「自分も、2日は多いと思います。

2日連続で来場していない者や、他校から来る生徒にはいいかもしれないですが、ウチの生徒たちはおそらく2日も連続で見に来る生徒はガックリと減ります」


桜祭は、もちろん来てもらう人達だけが校内を観覧するわけではなかった。


桜祭を取り仕切り、様々なイベントを執り行う桜木高校の生徒もまた、来場者と同じ観覧者なのだ。


1日目に見た生徒はまず間違いなくほとんどが2日目のミスコンは見ない、少なくとも葵は見に行かないと思った。


企業がバックアップしてくれるイベントのだけあって、盛り下がるような事だけは、絶対に避けたかった。


「確かに、下がるかと思うわ。でも、どうにか2日目もミスコンをやるべきだと思う。

それに、他の部活やクラスの生徒たちは、2日間当然のようにイベントをやり切るわ。私たち生徒会だけが、1日だけというわけにはいない」


「そ、そうですね……とりあえず、2日できるか頼むだけ頼んでみます」


麗華の言葉に、葵も波多野の何も言い返せず、葵は2日やるにしても姉の企業の力が必要だったため、ひとまずこの件は、企業との話が決まり次第に考えようと、麗華にそう答えた。


麗華も葵の意図を察したかのように、この件に関してはこれ以上話す事は無く、違う話を話し始めた。


◇ ◇ ◇ ◇


麗華達とのミスコンの話は続き、生徒会室に入って、既に1時間を経過していた。


葵の説明から生徒会は、ミスコンの全容を抑え、組織として主催する事になったため、葵1人ではどうしようもないような事も解決できる兆しが見え、生徒会の下に入る形で葵はミスコンを企画していくことになった。


それに付随して、葵は麗華に今後の細かい指示出し等を貰える事となり、かなり動きやすい状況になった。


「もうこんな時間なのね。さて、あんまり遅くなるのもあれですし、ここいらで解散にしましょう」


麗華は会話を交わす間に、ふと生徒会室に飾られた時計へと視線向けるとかなりの時間が経過していた事がわかり、葵と美雪に提案するようにそう話した。


葵と美雪は短く答え、首を縦に振りそれを了承した。


「いやぁ〜、やる事にいっぱいね。波多野君、これから忙しくなりそうよ」


「はい。とりあえず、学外の人が多く協力してくれる事を教員に報告しなくてはならないですね。

その話が通らなければ、企画その物がおじゃんですし……」


麗華は長々と話した事で疲労が溜まっていたのか、大きく両手を上に上げ、伸びをするようにして、波多野の呼びかけた。


波多野の仕事は、先程の話の間では教員との交渉や、細々とした事を教員に報告し、それを認知させるような事を主体に、生徒会と教員の間を取り持つようなそんな仕事を多く任されていた。


「立花さん、学外の人間が校内に多く入るという事もあり、セキュリティ上の事を考えるとこのままでは、よろしくないです。上に話を通すためにも、来場者する企業の方をリストアップして貰ってもよろしいですか?

当日はそのリストを使用して、部外者と見分けると伝えます」


「分かりました、頼んでみます」


葵は波多野のからの指示も素直に従い、頭の中のこれからやる事のリストの中にその項目を追加した。


「と、なると当日は校内と校外を出入り出来るように、再入場ようの何か印のような、アイテムを作っとく必要もありますね……」


波多野は、葵の返事を聞くと今度はブツブツと1人で言葉を発しながら、何か考えていた。


波多野のその様子を見た葵は、当日の姉達の来場に関しては、波多野に一任させても何の心配も無いなと安心する事ができた。


ここまで話してきて分かったが、麗華は流石生徒会長と思えるほど優秀だった。


葵が気づかなかったような問題点も綺麗に洗い出し、組織を纏める立場としては必須な指示もかなり的確で分かりやすかった。


波多野のも問題点を解決させるように細かいところもどんどんと気づいては修正していき、当日のトラブルを減らすように隙のない物へと企画を仕上げていった。


「それじゃあ、後は特に今のところ自分にお願いする事は無いですか?」


「はい。大丈夫です」


葵は、解散という事で帰るために最後に確認するように麗華と波多野に呼びかけると、麗華はにっこりと微笑みながら、キッパリと葵に答えた。


「では、失礼し……」


「あっ! ごめんごめん、ちょっと待ってッ! 最後に1つどうしても聞きたいことがあったんだった」


葵と美雪が席を立ち上がろうとした瞬間、麗華は慌てた様子で思い出したように声を上げ、葵を止めた。


「これにさ、ちょっと立花君の名前書いてもらってもいい?」


麗華は私用の件の事なのか、砕けたような話し方で葵に紙とペンを渡し、名前を書いてくれるように要求した。


葵も別に断る理由など無かったため、不思議に思いつつも、言われた通りにペンを持ち、紙へ自分の名前を記入した。


「やっぱりね…………」


葵が描きなれた自分の名前を時間を掛けずにサラッと書き上げると、麗華は小声で呟くようにして声を漏らした。


「お姉さんの名前って……立花たちばな らんさんで間違いよね?」


麗華は最後に確認するように、葵に尋ねると葵は首を縦に振り肯定した。


◇ ◇ ◇ ◇


「失礼しました」


葵と美雪は、そう言って全ての用事を済ませ軽くお辞儀をし、生徒会室から出ていった。


麗華と波多野はそれを見送り、パタリと音を立て扉が閉まると、静かな時間が流れた。


麗華は見送った事で、自分の本来の生徒会長の座る席へと戻ろうとした。


そんな麗華を後ろから見つめていた波多野は、ある疑問を麗華にぶつけた。


「立花さんのお姉さんと知り合いなんですか?」


麗華は波多野に問い掛けられた事で自分の席へと戻る途中、ピタリと動きを止めた。


「ま、まぁね……私が1年生の時に生徒会に入った時の会長さん」


麗華は波多野の質問に素直に答えたが、声は緊張して強ばっているような印象があった。


波多野は明らかに2人に何かあるなと、その時点で感じたが、波多野自体がそこまで他人に鑑賞するような性格ではなかったため、短く「そうですか」と答え、この会話はスグに終了した。


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