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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
二章 桜祭 ミスコン企画
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俺より可愛い奴なんていません。2-17

橋本はしもと 美雪みゆきとの話も終え、立花たちばな あおいは生徒会室に向かうため、廊下を2人で歩いていた。


美雪達のおかげで、何とか自分1人で受け持っていた問題を分散させることが叶った葵は、少しホットした様子で、先程よりも幾分か気持ちが軽くなったような気がしていた。


そのような状況になれた葵は、他の事にも気を回す余裕が出てきており、美雪と歩くうちに疑問に感じていた事を幾つか聞くことにした。


「なぁ、生徒会に行くのは俺と橋本だけでいいのか?

加藤かとう二宮にのみやも協力してくれたんだろ?」


葵は、美雪から加藤かとう あや二宮にのみや 紗枝さえもこの件に協力してくれていた事を聞かされていたため、この場に2人がいない事が気になっていた。


「あ、あぁ、橋本さんは今日の放課後はクラス委員の方で、集まりがあるみたいで、加藤さんは部活に顔出すそうです。」


「そうか……」


美雪は葵の質問に素直に答え、葵は出来れば2人にもお礼を伝えたかったが、今回生徒会室には来ないらしかったため、今度の機会にそれは伝えようと考えた。


ひとまずこの話題はこれで決着させ、葵は更に質問を美雪にした。


「どうして、生徒会に取り持ってくれたんだ? 貴重な昼休みを削ってまで」


葵は、美雪の話を聞いた上で1番気になっていた事を美雪に尋ねた。


「え……?」


葵の質問に、何故か美雪は驚いた表情で葵を見つめ、当然の質問をしたと思っていた葵は、そんな反応をした美雪を不思議そうに見つめ返した。


「え、えぇ〜と。まぁ、なんでしょう……知らない仲では無いですし?」


「はぁ……? なんだそれ…………」


何故か言い淀むように話し、何故だか疑問形で返す美雪に、葵は訳が分からないといったような様子で答えた。


(まさか……コイツ…………俺を?)


葵はそんな美雪を見て、その場で立ち止まり、少し妙な考えが過ぎり、それに気づくと、美雪の反応をもっと観察しようと、グッと美雪に視線を持っていき、観察するように凝視した。


「な、内緒ですよ??」


葵が立ち止まった事に気づいた美雪は自分も立ち止まり、頬を少し赤らめながら、恥ずかしそうにも見えるそんな様子で葵を見つめ、言葉を漏らした。


葵はそんな美雪の姿を見て、ますます妙な気分にさせられた。


「あ、あぁ……」


葵は生唾を飲み込み、意を決した様子で美雪の言葉を待ったが、美雪の一言によってそれは思い過ごしだったスグに気付かされた。


「実は、二宮さんが昔、立花さんに助けられた事があったみたいで、それの恩返しがしたかったらしいんです」


「…………は?」


美雪の言葉に葵は、呆然とした様子で言葉を漏らし、思考が停止し、間抜けな声だけが口から漏れた

「だからぁ、昔に、橋本さんがクラス委員を引き受けた時に、立花さんが人知れず、フォローしてくれたらしくて、それの恩返しがしたかったそうなんです」


葵の間抜けな声と、呆然とした様子に、美雪は聞き取れなかったのかと思い、もう一度、今度は先程よりも声を大きく、葵に伝えた。


美雪の告白を受け、葵はスグに何か言葉を返す事が出来ず、美雪も紗枝の昔の話だったため、言うのが少し億劫だったため恥ずかしそうにし、何も言葉を発せず、2人の間に静かな時間が流れた。


立ち尽くした2人に沈黙の時間が数分流れると、葵は思い出したように再び、何も言わず歩き始めた。


「ちょ、ちょっと、何か答えてくださいよ!」


美雪は何も言わず、再び何も無かったかのように歩き始めた葵に、自分もついて行くようにして早足で再び歩み出し、問いただした。


「いや、何をだよ。助けた覚えが無いからピンと来ないし、何答えていいかもよく分からん」


「えぇッ!? 自分から聞いといて!?」


葵は、少しでも妙な考え、美雪が自分に好意があって、そこからの動機だという考えが少しでも過ぎった事に後悔し、心の中で自分を責めながら、美雪の質問に淡々とした様子で答えた。


(はぁ……少しでも妙な考えが過ぎった俺を殺したい…………)


美雪はそんな葵に納得いってないと言った様子でブーブーと文句をこぼしていたが、葵がその事で反応することはもうなかった。


葵が反応しないと分かった美雪は、文句を言うのを諦め、美雪が黙り込んだ事で、会話のない静かな時間が流れた。


「な、なぁ」


葵は無視した事で美雪が機嫌が悪くなったのだと思い、少し気遣うように美雪に話しかけた。


「なんです……?」


葵の問いかけに、美雪は答えてくれたが、やはり愚痴を言っていた美雪を無視した事に不満がありそうな様子で、少し冷たいような感じを含んだ声で答えた。


「ん、あぁ、いや……ちょっとな、もう1つ聞きたいことがあってさ……」


「なんで、未だに二宮と加藤の呼び方、苗字なんだ??」


葵は、美雪の親しくしている亜紀あき晴海はるみといった友人とは下の名前で呼びかう仲なのを知っていたため、親しくなっている綾や紗枝とも下の名前で呼びあっても、普通の事じゃないと考えていた。


「そ、それは、まぁ……何と言うか……ちょっとタイミングが…………」


美雪は、痛いところをつかれたといったような様子で、気まずそうにそう呟いた。


(やっぱりな……)


美雪のその態度を見て、思った通りの行動で葵は心の中でそう呟いた。


「別にタイミングなんて、気にする必要ないじゃないか? もう随分と一緒にいるみたいだし、それにアイツらだって多分下の名前でお前から呼ばれたら嬉しいんじゃないか?」


葵は美雪の背中を押すように、優しく話した。


「ま、まぁ……でも、どうやってやっていいのか……?」


「そんなの直球でいいだろ? 下の名前で呼んでいいかって聞いてさ」


「はぁ……それが出来たら苦労しないですよ…………」


困惑する美雪に、葵はケロッとした様子でさも当然のように答えると、美雪は大きく落胆したようにため息を付き、呟くように答えた。


美雪のその態度をみた葵は、考え事をするようにして、少し黙り込み、何か妙案が出たのか、再び美雪に視線を戻し、したり顔で美雪に話しかけた。


「なぁ、今回協力してくれた事のお礼って訳じゃ無いけど、協力してやろうか?」


葵の自信に満ちたような、少しほくそ笑んだ表情で提案し、美雪は下の名前で呼びたいのは山々だったため、自分じゃどうしようも出来ない状況だったため、首を縦に振り、葵の協力を望んだ。


◇ ◇ ◇ ◇


2人が会話をしつつ歩いていると、気づくと目的である生徒会室の前までやってきていた。


「着いたな……」


葵は、ここまで歩いた疲れからか、着いた瞬間には自然にため息が出ていた。


「橋本さんには言わないで下さいよ? その、私が昔に助けられた事を伝えてしまった事……」


美雪はここに来るまで散々した話題を葵に最終確認するように、わざわざ尋ねた。


それほどまでに、美雪は先程の話をあまり聞かせたく無かったの、最近出来た大切な友人だからこそ、最新の注意を払って再三に渡って、葵に釘を刺した。


「しつこいな。大丈夫だよ、しないよ」


もちろん、葵はそんな事をする気も無ければ、もうその話は葵の中で自分が勘違いしていた事を思い出し、あまりしたくない部類の話題になっていたため、少し不機嫌そうにしながらも、しないと再び美雪に誓った。


葵の答えは少し雑な答え方だったが、美雪は葵を信じる事に決め、不安は少しあったが、もうこの事について葵に言及するのはやめた。


「じゃあ、入りますか」


美雪はそういって、生徒会室のドアへと手を伸ばした。


軽く2、3回ノックすると、美雪は「失礼します」と中に聞こえる程度の声で呼びかけた。


すると、中から女性の声で「どうぞ〜」と一言、了承の声が返ってきた。


美雪はその言葉を聞き取ると、ゆっくりと生徒会室の扉を開けた。


生徒会室の扉を開け、中へと入ると、生徒会室は昼休みの時よりも人が少なく、会長である並木なみき 麗華れいかと副会長である波多野はたの 啓示けいじの2人だけが在席していた。


「来たわね」


美雪と葵が部屋へと入ってきたのを確認すると、美雪達の来訪を待っていたのか、麗華は小さく呟いた。

「それじゃ、昼休みの時みたく、あっちで話しましょう」


麗華はにこやかに微笑みながら美雪達に提案すると、美雪達は頷き、指示された通りにソファへと向かい、そこへ腰をかけた。


麗華も、美雪達と同じように反対側へと腰掛け、波多野はソファには座らず、麗華の隣で控えるようにして、立っていた。


そして、このまま進行するようにして麗華は話し始めた。


「えぇっと、それじゃあ、ミスコンの話、詳しく聞かせてもらおうかな」


麗華は真面目な表情で、葵と美雪を見据えそう話し、麗華の言葉によりミスコンの話を詰めていった。


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