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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
二章 桜祭 ミスコン企画
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俺より可愛い奴なんていません。2-15

橋本はしもと 美雪みゆきは、生徒会長である麗華れいかにキッパリと自分の意見を伝え、生徒会室には静かな時間が流れていた。


美雪の意見は確証なんかは無く、綾の言ったこと何かよりも根拠の無い意見だったが、真剣な表情で言い切った美雪のその意見には何故が、説得力があるようなそんな気すらさせた。


美雪達は言いたいことは全て伝えたと感じ、麗華の言葉をじっと待ち、麗華から視線を逸らさなかった。


麗華は、目を閉じ何かを考えるような様子で何も発言しなかったが、数分すると、ゆっくりと目を開け、再び美雪達に向き直り、ニッコリと微笑みながら話し始めた。


「フフフッ……そんな怖い顔しなくても大丈夫ですよ?

分かりました。生徒会としてそのイベントを引き継ぎましょう」


「ほ、本当にですか!?」


麗華の言葉を信じられないと言った様子で、少し声色が明るくなり喜びつつも、加藤かとう あやは麗華に訪ねた。


「ええ、本当です。私の負けです」


麗華は綾達を安心させるように、優しい声色で微笑みながら答えた。


麗華の言葉に、綾は「良かったぁ〜」と声を零しながら、喜び、緊張から解き放たれたかのように肩を下ろし、紗英も美雪も同様に緊張から解放されたような様子でホッと安心していた。


「まぁ、御三方には悪い事をしましたが、実はそのミスコンを引き受ける話、生徒会では引き継がせてもらおうと考えていたんです。

意地悪してゴメンなさいね。」


麗華はニコッと笑いながら、イタズラをしていた事を悪びれるように謝罪した。


「えぇ!? じゃ、じゃあ、私達がここに来なくても……?」


綾は驚いた様子で声をあげ、麗華に尋ねると麗華は軽く首を縦に振り肯定した。


「はぁ〜……生徒会長さん、人が悪いですよ〜……」


綾は完全に気落ちしたようで、言葉を漏らした。


それほど綾にとってはヒヤヒヤな状況だったのか、麗華はそんな綾を見て、続けて謝罪した。


「本当、見ていてこっちがいたたまれない気持ちでしたよ。

意地悪も程々にしてください、会長」


そういって美雪達の話す場所へと1人の男子生徒がやってきた。


彼はお盆に人数分の飲み物を乗せ、ここへ運んできた模様で、会長を注意しながら、テーブルに一人一人、飲み物を置いていった。


「いや〜、ちょっと、どれほど本気にやってるのか調べるつもりだったんだよ〜。ゴメンね?」


男子生徒に注意され、麗華は再三謝罪し、もう緊張感のある会話をするつもりは無いのか、美雪達の緊張がより解けるように、砕けた様子で話し方を変え話した。


普段きっちりとした話し方をするイメージの麗華のそんなフレンドリーな様子に、美雪達は驚いた。


「まったく……」


美雪達に飲み物を配り終えた男子生徒は、ため息を付きながら、呆れた様子で愚痴を零した。


そして、美雪達に視線を移すと真剣な面持ちで、話し始めた。


「すみません、ウチの会長の悪い癖で……。

私は、生徒会副会長をやらせて貰っています、羽多野はたの 啓司けいじと言う者です」


羽多野は会長に続き、自らも重ねて謝罪した後、軽くメガネを上げながら丁寧に自己紹介をした。


羽多野の風貌はまさしく、真面目の一言で、きっちりと着こなした制服と、寝癖一つない整えられた清潔感ある髪からも、彼の真面目さが滲み出ていた。


目は鋭く、普通にしていても睨みを効かせているような少しおっかない風貌だったため、彼の真面目さも相まって、余計に相手に気を使わせたり、緊張感を与えたりする節がよくあった。


「あ、私は2年の橋本 美雪です」


美雪は少しかしこまった様子で答え、美雪に続くようにして紗枝も綾も軽く自己紹介をしていった。


「今回の件、先程並木会長からもあったように、私達、生徒会としても、生徒会が主導となって、ミスコンを開催していけたらと思っていたところだったのです」


羽多野は、美雪達よりも一つ上の学年であったが、美雪達に敬語を使い、丁寧に対応していた。


「そうだったんですか……」


「はい。私達からしても、どんどんと話題が大きくなっていくミスコンを無視は出来ず、生徒会としての出し物も決まっていなかったため、色々と生徒会内で協議した結果、協力、あるいは主導でやらせてもらおうという結論に至ってました」


呟いた美雪に、羽多野は補足するように答えた。


「まぁ、私達からしても丁度良かったって事なの。

だから、あなた達がこの話を持ってきた時点で結果は決まってたみたいなものなのよ?

それに、あなた達みたいな可愛い子達のお願いを聞かないわけにはいかないしね!」


「ホント、決まってるだからさっさと返事しろって内心思ってました。

本題に中々入らず、どうでもいい話をベラベラと…………」


「ムッ」


麗華と美雪達との会話が気に入らなかったのか、羽多野はずっと感じていた不満を嫌味のように零すと、麗華の感に触れたのか、ムスッとした表情で少し睨むようにして、立って話す羽多野を下から見上げた。


「だって、この子達がどれほどまで本気でミスコンをやろうとしているかだって重要なことでしょ〜!?」


羽多野に怒りを見せるようにして、麗華はブーブーと不満を零したが、羽多野はまるで相手にせず、美雪達に視線を移し、話し始めた。


「やっと、本題に入れた所ですし、中身の話をしましょう。

現在、そちらで企画し、実行しようとしているプランをお聞かせ下さい」


「えっとぉ…………」


真剣に尋ねる羽多野に、自ら率先してミスコンを率いていない3人は、詳しい内情を知らず、紗枝は気まずそうに声を漏らす事しか出来なかった。


羽多野の相手にされなかった麗華は、羽多野後ろで更にブーブーと不満を漏らした。


「何か?問題でも?」


感の良い羽多野は、質問に答えずらそうにする3人に、不思議そうに尋ねた。


ここまで乗り込んできた美雪達は、自分たちが主導でミスコンを動かしているとは発言していなかったが、ここまで行動した以上、羽多野達からは、美雪達が指揮をとっていると思われても仕方の無い事だった。


そのらへんの説明をはしょり、単刀直入に本題に入ったため、その所の説明不足だと言うことに美雪達は今気づき、完全にミスコンの中身についての話を出来ないと悟った。


羽多野の様子に、シラを切らす事など出来ないと思った紗枝は、覚悟を決め、本当の事を話し始めた。


「じ、実は……」


紗枝が言葉を発すると、遮るようにして校内に昼休みの終わりを予告する、5分前のチャイムが大きく鳴り響いた。


紗枝はそのチャイムに気を取られ、話を途中で止めてしまい、チャイムの音だけが生徒会室に流れた。


チャイムが鳴り終わると、紗枝は再び話そうとしたが、再び今度は麗華が遮るようにして、話し始めた。


「昼休み、終わってしまうわね。

生徒会の私用であなた達を授業に遅刻させるわけにも、ましてや私たち生徒会が遅刻するわけにもいかないですからね。

この話は、また放課後にしましょ?」


麗華は、生徒会長然とした様子で、かしこまった話し方で、美雪達に言い聞かせるようにして、提案した。


美雪達も断る理由も無かったため、二つ返事でその事を了承すると、ゆっくりと席を立ち上がった。


そして、そのまま美雪達は、生徒会室を出るため、扉へと近づくと不意に麗華に呼び止められた。


「あッ、これだけは教えて欲しいのだけれど、ミスコンを企画して指揮をとっているのって誰かしら??」


麗華は、美雪達の反応で美雪達がミスコンを主催するにあたって、あまり内容に関わっていない事が分かっていた様子で、優しく美雪達に尋ねた。


美雪達は聞かれた以上、答える訳にはいかず、自分たちが主導でやっている事でもないのに、わざわざ生徒会まで押しかけてきた事に少しもし訳なさを感じつつ、美雪は代表してハッキリと答えた。


「2年生で、私達と同じクラスの立花 葵さんです!」


美雪達はそういって、伝えたい事と、自分たちが望んだ方向に話が進んだ事に満足しながら、生徒会室を後にした。


◇ ◇ ◇ ◇


美雪達が出ていった生徒会室。


美雪の主導で引っ張っている人物の名前を聞いた、並木 麗華はその場で立ち尽くしていた。


「た、たちばな あおい…………」


麗華は深刻な表情のまま、美雪から聞いた男子生徒の名前を口ずさんだ。


「ん? どうした並木……」


生徒会メンバーだけとなった生徒会室で、羽多野はメンバー以外がいる時に使う呼び方とは違う呼び方で、麗華を不思議そうに呼んだ。


「え? あ、いや……なんでもない…………」


考え事していた様子の麗華は、呼びかけられた事で、我に返ったように反応し、取り繕う様子で答えた。


「そうか」


羽多野はそんな麗華を明らかに変だと感じたが、特に気にする事無く、自分も教室に戻るため支度をし始め、麗華から離れていった。


「たちばな……まさか…………いや、そんなはずは…………」


麗華は、嫌な予感を大いに感じながらも、勘違いだと、思い違いだと言い聞かせるようにしてその事を考える事をやめた。

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