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俺より可愛い奴なんていません。10-6


 ◇ ◇ ◇ ◇


『Fairy』撮影から数日後。


あおい紗枝さえがモデルとして載っている雑誌は、まだ発売されていなかったが、葵と紗枝が載るという事は、学校内で周知の事実となっていた為、発売までその話題が途切れることは無かった。


そして、『Fairy』は月初めに発売される月刊誌である為、まだ数週間、発売まで日数があった。


葵と紗枝は撮影が終わり次の週、学校に着くなり質問攻めにあったが、葵は性格上、途中から質問の受け答えがどんどんと雑になっていき、最終的には生返事しか返さなくなり、それを見て周りは、面白くないと感じたのか、矛先は誰にでも丁寧に対応する紗枝へと質問が集中していった。


「おい、葵~~、いいのか? 二宮さん。

すげぇ困ってるみたいだぞ?」


午前中の授業が終わり昼休みに入ると、葵と大和やまとはクラスで昼食をとっており、昼休みになっても紗枝の周りには人だかりができていた。


そんな話題の中心である紗枝を見ながら、紗枝と同じように話題の中心であるべき葵に大和はそう告げた。


「いいもなにも、しょうがないだろ?

クラスでモデルがいるんだから……。

そりゃ、話も聞きたくなる」


「なんでお前は他人ごとなんだよ……。

葵が真面目にみんなの相手をしないから、こうやって二宮さんにしわ寄せが行くんだろ~~?

何とかしてあげろよ~~」


「あぁ? 何とかったって…………」


葵はそう言いかけ、人だかりへ視線を向けた。


「無理だろ……。

今更、あの集団に入ってって何すんだ?

質問には俺が答えるとでも宣言するのか??」


「ダサいけどそうしてやれよ……」


大和は葵の言葉のままに葵のその行動を想像したのか、半ニヤケで、馬鹿にしたような笑みをうかべながらそう答えた。


大和の答えた様に、さんざん今まで生返事や雑な対応を周りに取っておきながら、いざここまで片方が話題になり、葵の言ったような切り口で、集団に切り込むと、変に誤解をする人が出てくる事も予想できた。


「何こいつ……、今更話題に入ってきて……、二宮さんがちやほやされてるのを見て嫉妬したの?

テキトーに、雑に返答してたのは構ってちゃんアピールなの?って思われたりしたら、超ダサいな」


葵は大和の言葉で怪訝そうな表情を浮かべたのを見て。続けて葵にそう告げ、葵も大和と似たような想像をしていた為、余計に怪訝そうな表情を浮かべた。


「二宮にはしばらく我慢してもらう他ないな……」


「いや、助けてやれや……」


葵は大和と意見が被った瞬間に、紗枝に助け舟を出す選択肢は消え、助ける気の無い葵に大和は呆れた様子で、ため息交じりに答えた。


「あ、あの! 立花たちばなさん!」


大和と葵が話をしていると、不意に女性から声を掛けられ、声のする方へと視線を向けると、そこには美雪みゆきあやの姿がそこにあった。


美雪と綾は紗枝と仲の良い為、てっきり今ざわめいている、あの集団にいる者だと、葵は思っており、声を掛けられた事に少し驚いた。


「あぁ、橋本はしもとか……。

どうしたんだ?」


綾は葵達には特段用事は無いのか、美雪の後ろに控える形で、その場にいた。


この状況で綾もいる事に、違和感を感じたが葵は、その事に触れることは無く、話しかけてきた美雪へと要件を尋ねた。


「え、えぇ~~と、立花さんにお願いがありまして……。

修学旅行の実行委員を引き受けている身ではあるんですけど……、実は他にも引き受けたい仕事がありまして…………」


美雪は言いずらそうに、葵の様子を伺いつつ話を切り出し、葵は美雪の子の話題の切り出し方にももう慣れていた為、特段急かすようなことは無く、美雪の言葉を待った。


「じ、実はその仕事っていうのが、体育祭の委員なんですけど……。

めッ、め、迷惑をかけてしまう事になってしまうのは、分かるのですが、どうしてもやりたくてッ」


美雪はいたたまれない様子だが、譲れない者があるのか意志は強く、しっかりと自分の考えを葵に伝えきった。


(体育祭実行委員か……。

委員をまとめる教員って今年は確か…………)


今回の美雪の提案は飲む全面的に飲むつもりではあったが、葵は思考を巡らせ、どうしてこのタイミングで、そのような事を提案してきたのか考え、そしてその理由はすぐに判明した。


「別に俺は構わないけど、やれるのか? 二つも……。

イベントのシーズンも同じで、日にちも近いから大変だぞ??」


葵はそう言いながら、その言葉は美雪に投げかけつつも、付き添いでこの場にいる綾にも視線を投げ、尋ねた。


「そ、それはッ……」


美雪が言葉を詰まらせつつも答えようとすると、そんな美雪の声を遮るように綾が声を上げた。


「大丈夫! 心配しないで?

私も全面的にバックアップするし、紗枝だって手伝ってくれると思う。

それに、修学旅行の委員の仕事なんて立花一人でも十分でしょ?」


綾は真剣な面持ちで葵の言葉に答えた後、ニヤッといたずらっぽい笑みを浮かべ、葵の神経を逆なでするように付け加えた。


「お前なぁ~……、実行委員も面倒な事多いんだぞ?」


「ごめんごめんて。

今回はお願いしてもらってる立場だからこれ以上野暮な事は言わないよ!

立花も承諾してくれてるわけだから、そっちが困ってたら手を貸すし」


「はぁ~~……。

橋本、このアホが言う様に修学旅行の方は多分、問題無いから、気にせず二足のわらじでいいぞ?」


「すみません!

ありがとうございますッ!」


葵にお願いするのを緊張していたのか、すんなりと承諾を貰えると美雪の表情は一気に明るくなり、綾は葵にアホ呼ばわりされた事を気にし、ガミガミと葵の悪態を隣で付いていた。


これで話は終わりかと葵はそう思っていると、美雪は再び何か言いずらそうに葵に話を振り始めた。


「あ、あの……、立花さん……。

も、もし、なんですけど、体育祭の実行委員も一緒に…………」


美雪の話をもう一度葵は聞いていたが、美雪の話の途中で唐突に、葵のポケットが忙しなく振動し始めた。


「あ、悪いッ橋本!

この話はまた後でな!」


葵は携帯の着信に気付くとすぐさま席を立ち、そそくさと教室を出ていった。


「ん? 珍しいな~~、葵が学校でマナーモードじゃないなんて……。

しかもあんなに慌てて、電話に出るなんて……」


咄嗟の出来事だったため、大和はその疑問を葵に、ぶつける事は叶わなかったが、興味深そうに呟いた。


「え? そうなの??」


「まぁ、珍しいかな……。

葵、電話好きじゃないしな……、学校とかでその機能を使う事も無いから、基本着信が来ても分からないマナーモードだし……。

だから、咄嗟に葵と連絡を取りたい時困るんだよなぁ~~、基本電話で無いし…………」


「それ……、携帯って呼べるの??」


綾の質問に大和は、淡々と昔の出来事も踏まえつつ答えると、大和の話を聞き、綾は若干引いた様子で呟いた。


「女だったりして……」


「え…………?」


綾は疑う様にしてポツリと呟き、そんな綾の言葉に美雪は、音にもならないような小さな声で言葉を零した。


「葵がかぁ? まぁ……、無くは無いか……。

最近女子にも優しくなってきたし」


「でしょッ!? 立花って、ツンケンしてそうで、意外と彼女とかできたら甘そうじゃない!?」


「ありゆるな! 妹にも甘々だし」


小さすぎる美雪の声は当然二人には聞こえておらず、葵の電話の相手に付いて、綾と大和の会話はどんどんと弾んでいった。



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