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俺より可愛い奴なんていません。10-2


 ◇ ◇ ◇ ◇


放課後 HR


あおいのクラスは無事、二学期の始業式を終え、少し長いHRへと突入していた。


基本的には、下校の時間までの時間つぶしの意味合いが大きいHRだったが、久しぶりの学校という事もあり、担任である山中やまなかの話は尽きる事が無かった。


「えぇ~~、二学期はお前たちも楽しみにしてるであろうイベントが沢山ある。

まず、一番のイベントしては修学旅行だな。

修学旅行の前には体育祭も控えてる、両方の準備で追われるに日々になるからな?

イベントを楽しむ為にも、学業の方は余裕を持って行う様に……」


山中は葵のクラスメートのテンションが上がりそうな話題へと、話を移した。


案の定、山中が話している最中ではあったが、ざわざわと私語が増えていき、山中の話を聞きながらも周りの友人と話す生徒が出てきていた。


「なぁなぁ、葵! そういえば事前旅行の話、あんま聞いて無かったよな?

どうだったんだよ~~」


「なんで、お前そのこと知ってんだよ……。

実行委員しか知らない話だろ?」


「まぁ……、バレんだろ? で?

どうだったんだよ! 沖縄!」


「俺は真面目だからな。

教えん」


葵は実行委員としての仕事もこなしてきた為、何もしていない大和に沖縄での事を伝えるのは何か癪に障る部分があった。


「おぃ~~、ケチんなよ~~」


葵は大和の声は聞こえていたが、全力で無視し、山中の話へと意識を戻した。


「――――まぁ、なんやかんやでイベントはあるが、お前ら来年からは受験だからな??

大学受けない奴も中にはいるだろうが、進路は今年中に何かしら決めてもらうぞ~~。

ざっくりとした未来でもいい、ただ進みたい方向性だけ決めておけ」


山中が進路について話し始めた途端、クラスの雰囲気は重くなり、今までイベントの話で盛ら上がっていた生徒の表情は暗くなっていった。


葵達は二年生であり、否が応でも進路について意識していかなければならない現状だった。


一つ上の先輩を見れば、その進路を決めている様子はとても深刻に映り、考えなければならない事ではあるが、今はまだあまり考えたくないという生徒が、ほとんどの状況だった。


「進路か~~、俺も来年から受験だ就職だと忙しくなるんだろうな~~。

葵はもうなんか決めてたりするのか??」


「決めては……いるな…………」


「マジかッ!?

どっか行きたい大学とか、狙ってる専門学校あるのか??」


大和は葵の進路を進学だと決めつけ、葵に詰め寄るようにして尋ねた。


「いや、大学はいかないぞ? 多分……」


「多分ってなんだよ……。

てゆうか、大学行かないのかッ!? なんで!? 別に頭が悪いわけでもないだろ??」


大和は葵の答えに驚き、段々と声が大きくなっていった。


だが、大和が驚くのは当然の事だった。


葵と大和の通う桜木高校は進学校の側面もあり、学年で頭の良い生徒の中には難関な大学に果敢に挑戦し、過去にも有名な名大学に受かった生徒も多く卒業していた。


進学率も90%もあり、成績優秀な葵がその進学を選ばないことが意外だった。


「声が大きいぞ? 

別に珍しい事でもないだろ? 高校出てすぐ就職なんて……」


大和の驚く声にHR中だというのに、注目を集め、ペラペラとしゃべっている山中も軽く、やる気の無い声で大和を注意した。


大和は山中に軽く悪びれる様子で謝罪し、すぐさま葵との話題へと戻った。


「いや、十分珍しいだろ!?

クラスに一人二人のレベルだぞ?

で? 高校出て何やるつもりなんだ??」


「んん~~? 芸術……」


「はぁ!? 芸術!?」


葵は遂に大和の質問を答える興味を失せ、テイト―に言い放つとそれ以降、その事に対して真面目に答える事は無かった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


放課後のHRも終わり、学校中にチャイムが鳴り響いた。


チャイムの音を聞くと同時に、これまで長々とだらだら話していた山中は、話を終わらせにかかり、数分で話題を閉めると、すぐにHRを終わらせた。


HRが終わったことにより、教室の生徒は一斉に動き出し、一気クラス中が騒然とし始めた。


そんな騒がしい教室の中、葵はこれから共に用事のある人に声を掛ける。


「二宮~~、校門で待ってるから、用事終わったら来いよ~~」


葵が騒然としている教室で、少し離れた席にいる紗枝へとそう声を掛けた途端、騒がしかった教室は一気に静まり返った。


葵はその空気に一瞬ヤバいかと感じたが、朝の状況から既に知らない人もいないような状況だったため、段々と冷静になっていった。


しかし、そんな事になるとは思ってもいない紗枝は、一瞬何が起こったのか分からないといった様子で、驚いた表情を浮かべた後、クラス中から注目を浴びる状況と葵の行動に、どんどんと恥ずかしさが込み上げてきていた。


状況を理解すると段々顔が赤くなっていく紗枝は、返事する事も恥ずかしく思え、声は出すことが出来ず、ただ首を縦に振る事しか出来なかった。


僅かな動作な為、葵には伝わらないかと紗枝は不安に感じたが、そんな心配も杞憂に終わり、葵は紗枝の返事を受け取ると、そのまま教室へと出ていった。


葵が出ていくとクラスは再び騒然となり、先程までは様々な話題で、クラス中がざわざわとしていたが、今の出来事によりクラスのあちこちで話される話題は一点に集中していた。


「まったく! 立花は場所と時を選びなさいよね~~」


紗枝の状況を知ってか、先程まで談笑していた綾は呆れた様にそう呟いた。


「ま、まぁ、もう既にクラスのみんなが知ってる事だし……。

立花君も別に隠す必要が無いと、思っただけだと思うよ?」


「にしたって、あんな離れた位置から声掛けんでも……。

全く女心の分からない男子はこれだから…………」


綾の恨み節に紗枝は乾いた笑いしか出なかった。


そんな綾に紗枝は帰りの準備を整えると、別れを告げ、足早に自分を待つ葵の元へと向かった。


綾はそんな紗枝を見送り、自分も帰り支度をしようとしていると、不意に美雪が綾に声を掛けた。


「綾さん」


「お? おぉ~~、美雪!

どした? 一緒に帰る?」


「はい! あ、いえ……そうじゃなくて……。

少しご相談したいことがあって……」


綾の申し出に、美雪は話しかけた本来の目的から脱線しかけたが、持ちなおし、美雪の要領を得ない様子に、綾は不思議そうに美雪を見つめた。


「なに? ご相談って……。

恋愛相談??」


にやにやといやらしい笑みを浮かべて、からかう様に話す綾に対して、美雪は真面目に、冷静な様子でハッキリと答える。


「はい、恋愛相談です」


「うえッ……!?」


美雪の毅然とした態度とまさかの話題に、綾は間抜けな声を漏らした。



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