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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
九章 コスプレ編
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俺より可愛い奴なんていません。9-16


◇ ◇ ◇ ◇


葵のプロデュースした三人のコスプレモデルは、素人でありながらたくさんの支持を受けた。


紗枝さえは葵が一時会場を離れてからもその勢いは留まるところを知らず、次々に新しい観覧を呼び込んでいた。


そして、新しく参入した小百合さゆり千春ちはるも観覧を呼び、紗枝を撮影、観覧した人たちが、小百合か千春に流れていくような形になっていた。


葵自身も自信はあったが、ここまで綺麗に、思い通りになるとは思っておらず、ここの会場での、一つの人の流れを作ってしまう程に成功していた。


葵は紗枝達のバックアップやフォローをしながら、彼女達の周りを常に注意し、警戒をしていた。


そんな警戒を怠らない葵に、自然と周りの声が聞こえて来た。


「いや~~、どなたも素晴らしい!!

今年は新人の豊作なのでは!?」


「ですなですなッ!

それにどなたも私共の推し、Aoさんのご友人と来てます!

今日、Aoさんの撮影時間、総合的に見るとかなり短かったですからな~~。

少し残念な感じではありましたが、それでもこんなに沢山の有能なご友人に会えて満足ですよ!!」


「今日はいつにもまして暑かったですからな~~。

体調を崩されてしまったのかもしれません。 少し心配ですがな!

でも、流石Aoさんのご友人ですな! キャラクターのピックが素晴らしい!!」


葵はまたあいつらかと心の中で悪態を付きながらも、憎めない奴らなのは、このイベントで何度か会話を交わし、知っていた為、自然と会話を聞き入れた。


「Aoさん自体、コスプレに関しては、全く流行とか気にされない方でしたからな~~。

流行っていようがいまいが、自分に合うキャラクターのコスプレをする。

偶にマニアックなキャラを選びすぎて、コアなファンにしか伝わってない時とかありましたがね……」


「あぁ~~ッ!! ありましたありました。

観覧の方に何のコスプレをなされているか尋ねられて、キャラの名前を答えても、まるで周りがピンと来ておりませんでしたね!!」


コスプレを見ながらAoの撮影の時の思い出を不意に語り出し、葵は内心「やかましいわ」と思いながらも、葵自身も当時の事を覚えており、少し懐かしくも感じた。


「でも、その精神がご友人にも引き継がれているのでは?

お三方が行われてるコスプレは確かに人気で、良くされる方が多いですが、今の流行りかと言われればそうではない。

あそこで撮影されているサリー(小百合の偽名)さんなんて、Ⅹ-2のユ〇ナですよ?

普通Ⅹの方じゃないです? やるとしたら」


葵の聞いていた二人は話しながら、撮影に応じている小百合を指さし、小百合のコスプレに付いて話し出した。


「ですよねぇ~~ッ!?

私、あのユ〇ナ見たら、学生の時に感じたほろ苦い思い出を思い出して、ちょっと胸が痛かったです」


「確かに、Ⅹ-2の最初はちょっとビックリと若干の喪失感を感じました。

学園のマドンナが夏休みを空けて、一皮むけたような……。

清純系からギャル系にシフトチェンジされたような…………」


葵は段々とコスプレの事から話題が遠のき始めたところで、二人の会話から意識を切り始め、違う人の観覧者の話声へと耳を傾けた。


「みんな凄い完成度だね~~。

ニノ(紗枝の偽名)さんとユキ(千春の偽名)さんが私のお気に入りかな~~」


「あぁ~、分かる。 俺もティ〇ァは見逃せないな~~。

俺の青春だから……」


「えぇ~~ッ!? アッ君の青春は私じゃないの~~?」


「いやそれはもちろん、圭奈けいなが一番の青春だよ!

圭奈が一番だとして、それを踏まえてのだからッ!!」


「もうッ! アッ君たらぁ~っ!

今度、あのキャラのコスプレしたあげるね!」


「マジッ!? 一番の青春とそれ以下の青春の融合で、嬉しさ倍増じゃんッ!?

嬉しすぎて血管切れて死ぬかも」


葵はイチャイチャカップルの話声を聞いてしまい、若干気分が悪くなったが、彼女の言った言葉は聞き逃せず、次のモデルに狙おうかと思ったが、時計を確認し、今から勧誘して、モデルとして仕上げても、披露できる時間がそこまで確保できない為、残念に感じながら諦めた。


(今日は、小百合さんと千春さんで最後かな……。

もっとバリバリやるつもりだったけど、想像以上に苦戦したな。

それこそ、二宮がいてくれなければ誰一人として、コスプレ出来ずに終わってたかもしれない……)


葵は現時点の時間を見て、改めて今日、紗枝が居てくれてよかったと、心底そう思った。


そうして、ここである程度披露を終えたら、三人には改めてお願いし、小休憩を踏まえ、今度はこのイベント一番の大舞台である、プロのコスプレイヤーも沢山撮影しているであろう場所へ行くつもりだった。


そんな今後の予定を考え、どこで位置を決め、疲労してもらおうかと作戦を決めようとしている時だった。


葵の警戒している三人の撮影している範囲で、少し騒動のような、ざわざわとした不穏な空気が流れた。


葵はすぐにそれに気付くと、その不穏な雰囲気の流れる方へと視線を向けた。


「なんだ……?」


葵が視線を向ける先には、コスプレを披露する紗枝の姿があり、一人の男性が紗枝に詰め寄っているようにも見えた。


葵はその光景を見て、すぐさま行動を起こし、紗枝の元へと近づいていく。


小百合と千春、紗枝の三人はなるべくすぐにフォローにいける様に、近場で披露させていたが、それでも数秒で彼女たちの傍に行くことは叶わず、葵が近づく中で、段々とそのざわざわとした雰囲気が大きくなった居る様に感じた。


「ナンパか……?」


紗枝に詰めよう男性に対して、そんな紗枝をかばう様に、二人の紗枝の撮影をしていたと思われる男性が、抗議するように声を掛けており、葵が到着する時には、男性二人組と、紗枝に言いより始めた黒スーツを着た男性、そしてその間でどうしようかと、焦った様子の紗枝の姿がそこにあった。


「どうした?」


葵が紗枝の隣に立ち、小さな声で紗枝に呼びかけると、紗枝は葵の存在に気づき、不安な表情から一気に明るさを取り戻していき、安心した様子で葵を見つめた。


「あ、立花君!

え、えっと……、ちょっと詳しくは聞けてないんだけど、何かファッション雑誌に出したいみたいな…………」


紗枝も要領を得て無いのか、話の詳細を聞く前に助けに入られてしまったのか、分からなかったが、葵は声を掛けて来たスーツの男性が、悪意を持って近づいたのかどうかを判断できなかった。


葵はこのままの状況にはさせることは出来なかった為、率先して少し口論になりかけている男性の集団の会話に入っていった。


「すみません、このモデルのスタイリストです。

代わって話を聞きます」


葵は冷静に淡々とした様子で、スーツの男に話しかけた。


葵の申し出に、スーツの男は困っていた表情から少しだけ表情を和らげ、少しだけホッとしたように葵に話し始めた。


「あぁ……、良かった、他にも関係者がいたんだね!

急にモデルに話しかけてしまって申し訳ない! 少しこちらも事情がありまして」


葵が入ってきた事で、安心する表情を浮かべたスーツの男を見て葵は、ただのナンパの為に話しかけてきたような輩では無い事を判断し、紗枝を守るように会話に入ってきてくれた男性に、角は立たないようにお礼を告げ、後を引き継ぐようにして、スーツの男性との会話を引き継いだ。


「あ、ごめんなさいッ! 急にいろいろ怪しいですよねッ!?

まずはこれを……、お納め下さい。

ファッション雑誌『Fairy』の担当をしております。 

離英社の田島たじまと申します。」


田島はそう言いながら、葵達の信用を得ようと名刺を差し出した。


「『Fairy』って……」


紗枝は知っていたのか、驚いたような表情を浮かべながら思わず声を漏らした。


『Fairy』は有名であり、もちろん葵もその雑誌に付いては知っていた。


そして、田島は紗枝の零した声が聞こえていたのか、隙無く追及するように話始めた。


「あ、知ってますか!? いや~、ならお話が速い!

単刀直入に言わせていただきますと、ぜひともニノさん! あなたにこの雑誌に出ていただきたいッ!」


田島は少し食い気味に、溢れる思いからか、体をグッと紗枝に近づけながら力強くそう告げた。




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