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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
二章 桜祭 ミスコン企画
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俺より可愛い奴なんていません。2-2

桜祭おうさい


桜木さくらぎ高校には、昔からそう呼ばれる学園祭があった。


各クラス毎に出し物を決め、学園祭当日にクラス毎に発表するもので、内容は様々。


教室を改造し、お化け屋敷にしたり、飲食店のようにしたり、縁日のようなことをするクラスもあった。


体育館では、バンドを披露する者、クラスで劇やダンスパフォーマンスを披露する者がいた。


そのため毎年かなり賑わい、桜祭は学園祭の中でも派手な部類に入った。


そのため、準備にも時間をかけ、他校から来場する生徒や地域の人々までも訪れる事があった。


そして、その桜祭は今年とは少し違った、出し物をやる事になり、それを知る生徒達はいつもとは違った盛り上がりをしていた。


「桜祭ミスコン??」


橋本はしもと 美雪みゆき加藤かとう あやの持つチラシにデカデカと書かれた文字を不思議そうに読み上げ、二宮にのみや 紗枝さえもまたキョトンとしていた。


「そう! ミスコン!!なんかね〜、今年はある数人の男子生徒の熱意でね、やる事になったらしいんだよね〜。」


綾は楽しそうに紗枝と美雪に説明したが、2人は難しそうな表情に変わり、何が不満があるような様子だった。


「どうしたの? ミスコンだよッ!? 盛り上がるよ〜」


「う〜ん……確かに盛り上がるのかもしれないけど、誰が参加するの??」


紗枝の指摘に綾は驚いた表情で受け止めた後、手のひらを額に当て、天を仰いだ。


「あぁ〜そっか……盲点だった!!」


綾は女性でありながら、楽しみにしていたのか、心底ガッカリした様子で話す中、美雪は一言「借りるね」と綾に伝えると、綾の手からチラシを受け取った。


「ふ〜ん……結構気合い入れてるんですね……、ん? これ……」


美雪はチラシの作り具合を褒めながら、チラシを上から読み上げていくと、下の方に気になる文字が目に入り、隣にいた紗枝にその文字を指さしながらチラシを紗枝の方へと寄せた。


美雪から差し出されたチラシに紗枝は視線を移すと確かに興味深いような文字が書かれてはいた。


「参加者全員に豪華景品プレゼント??」


紗枝はその文字を読み上げたが内心、嘘くさいような怪しいイメージしか浮かんではこなかった。


「それに、ここに優勝者には更なる景品プレゼントって書いてありますけど……」


美雪も読み上げたが、景品に興味はわかず、紗枝と同じで怪しい感じしか感じ取れなかった。


紗枝は更にチラシを読み進めるともっと気になる文字が目に入ってしまった。


「え……? ちょっと待って……これって……」


紗枝の驚いた声に反応し、美雪と先程まで落ち込んでいた綾がチラシに目線を向けた。


チラシに3人の視線が集中する中、紗枝はゆっくりと気になる部分を読み上げた。


「男子参加型。男子で女子を推薦し、その女子が出てくれた場合、男子にもいい事あるかもって……これ大丈夫かな?」


感のいい紗枝は嫌な予感しかしなかった。


紗枝に指摘され、美雪も紗枝の言いたいことが理解出来たが、地味な自分には関係のない事だと決めつけ、自分のことでは、特に心配する所は無いと結論を出した。


ここで1番心配なのは、やはり紗枝であった。


「紗枝……これ、紗枝は強制参加じゃない??」


綾も紗枝とは長い付き合いだったため理解出来たのか、それとも過去に似たような事があったのか、スグに対策案も出してくれていた。


綾は紗枝にミスコンに出てくれと男子に群がれたりされる前に、自分からミスコンに出ると進言し、それらを回避する事が懸命なのだと思っていた。


紗枝も綾の言ってることは理解出来たが、ミスコンに出るとなるとかなり抵抗があった。


「えぇ〜……、凄く出たくない……」


紗枝はかなり嫌そうに答え、紗枝の目は綾や美雪に助けを求めるような瞳をしていた。


「そ、そんな目で見られても……、ここに通う男子大体頭おかしいし……」


真顔で意外と辛辣な一言を言う綾に美雪と紗枝は、上手く返せる言葉が無く、苦笑いしか出来なかった。


「でも、目立つのはホントに嫌だな…………」


辛そうな紗枝を2人はどうにかならないかと考えたが、上手く答えは見つからず、唸る事しかできなかった。


縛らく、3人ともそれぞれの思考を巡らせる事に集中してしまい、誰も話さなくなり、静かな時間が流れた。


そして、3人ともやや俯きながら考えている中で、何か閃いたのか、目をキラキラと輝かせ、明るい表情で美雪が勢いよく顔をあげた。


「閃いきましたッ!! それにお二人には良い機会ですしね……是非とも見てもらいたい……」


楽しそうに話し始めたかと思ったら今度はニヤニヤと悪巧みをするような様子で美雪は話し、紗枝と綾は首を傾げ、不思議そうに美雪を見つめた。


「ちょっと、交渉してみましょ!! きっと力を貸してくれるハズです!!」


2人に見つめられる中、美雪はそう言い放ち、今度はクラス中をキョロキョロと見渡し始めた。


美雪が見渡すと、ちょうどお目当ての生徒が1人教室に戻ってきた所だった。


美雪はその人物が視界に入ると2人の方に再び視線を戻し、ニッコリ笑った。


「行ってきますねッ!!」


「う、うん……」


元気に2人にことわりを入れる美雪に対し、紗枝は少し同様した様子で、返事を返し、美雪は席を立ち、足早に教室の出口へと向かっていった。


「ど、どうしたんだろ……」


「わからないけど……橋本さんがあんなに自信もっていくのなら何かあるのかも……」


不安そうに訪ねる綾に、紗枝は何故か美雪のあの曇りの無い晴れやかな笑顔に期待を持てた。


2人はそうして、教室の廊下へ出るための扉へと向かっていった美雪を見つめた。


そして、美雪は教室の扉の近くで目当ての人物を見つけたのか、その人物に話しかけた。


美雪が話しかけた人物を見て2人は驚愕した。


「え? 橋本さんッ!?」


「紗枝……あれって……」


2人は驚きつつも、美雪の今後の展開が見逃せず、視線を切ることなくお互いに確認するように、声を上げた。


◇ ◇ ◇ ◇


昼休み、昼食を取り終え、トイレに行くため席を外していた、立花たちばな あおいは教室に戻ってきていた。


ただ、トイレに行くつもりだったのだが、前野まえの 晴太せいた等に捕まり、余計な時間を食ってしまい、葵が戻ってきた時には、既にもう昼休みも中盤に差し掛かっていた。


ほとんどの生徒達が弁当等を食べ終え、それぞれの昼休みの過ごし方をしていた。


そして、そんな中、葵も考え事をし、有意義な時間にしていた。


(とりあえず、アレを利用する事は決定で良いだろう。問題はどうやって舞台に上げるかだな……)


葵は必死に思考を巡らせ、自分の掲げた目的を果たすために作戦を考え込んでいた。


(もう、5月に入る所だしな、桜際が6月下旬だから、もうスグだよな。早く手を打っといた方がいいだろうし……)


葵がスケジュールを逆算しながら、チラシには書いてなかったが、大体このくらいに締切日を持ってくるだろうと予想し、タイムリミットを設けていた。


すると、そんな葵に1人の生徒が寄ってきた。


「立花さんッ」


葵はその存在に気付くのが遅れ、声を掛けられた事でようやくその者の存在に気づいた。


葵が声の方へと視線を向けると、そこに立っていた橋本 美雪の姿が視界に入ってきた。


「何?」


葵はいきなり話しかけられた事で驚いたが、特に取り乱した様子も無く普段通りに対応した。


「あの、すいません。ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」


「別にいいけど……今?」


「そうです。お願いします」


「わかった」


美雪は葵を丁寧に誘い、葵も丁度彼女に用事があったため、葵からしても都合がいい誘いだった。


美雪の誘いに葵は応じると、美雪はクルリと振り返り、教室の中へと歩きだし、葵もそれに続くようにして、後ろからついて行った。


(てゆうか、俺に頼み事ってなんだ……?)


葵がそんな風にして疑問を持ちながら、美雪の後に付いていくとそこには、美雪の最近クラスで仲良くしているクラスメイトが2人、席に着いていた。


(加藤と二宮??)


葵は席に座る2人を認識し、これなら益々何が起こるか分からなくなってきていた。


綾や紗枝もまた、美雪が自分達の所から離れ、葵と話し、こちらへ戻ってくるまでの一部始終を見ていたため、葵がこちらに来ることは分かっていた。


しかし、綾も紗枝も少し驚き、戸惑った様子で葵と美雪を見上げていた。


「来てもらいました。 早速お願いしたいところ何ですが、その前に……」


美雪は2人に説明する前に1度、葵に振り返った。


葵の方へと振り返ると、美雪はゆっくりと葵の顔に自分の顔を近づかせ、片手で紗枝達からは見えないよう口元を隠し、耳打ちをするようにして葵に話しかけた。


「あの、立花さん。協力して欲しい事があるんですけど、その前に、2人に立花さんが女装している事を話してもいいですか?」


葵は顔をいきなり近づけてきた美雪に一瞬驚き、軽く心臓が跳ねたが、美雪の放った一言でそれどころでは無くなった。


「はッ??」


「あぁ〜あ、 広まる事を気にされてるですよね? もちろん、大丈夫です! お二方も良い方なんで広めないでくれと頼めば、きっと話したりはしないです。」


葵の理解出来ず思わず出た言葉に、反応するようにして、美雪は長々と弁明したが、それでも葵は何故そんな話になっているのか理解出来なかった。


「いや、別にバレたらバレたで構いはしないんだが、話がまったく見えてこない。何を俺にさせたいんだ?」


「フフフッ……それですか……、それはですねぇ……」


葵の問いに美雪はニヤニヤと勿体ぶるように笑った後、再び振り返り、今度は紗枝達の方を向き、ハッキリと答えた。


「立花さんにもミスコンに出てもらって、二宮さんの印象を薄めてもらおうと思います!!」


美雪の声は3人の耳にハッキリと聞こえたが、誰も何も言葉を返す者はいなかった。


紗枝と綾は驚いた表情で何が起きたか分からないといったような様子で、葵もまた、同様だった。


3人がポカンとした様子の中、美雪は続けて話し始めた。


「立花さんの推薦として二宮さんには出てもらって、そこで他の男子達は諦めて、恐らく二宮さんを誘ってくるような事は無くなります。

そして、ミスコン当日は、立花さんも出るので間違いなく1人ではないですし……、何より立花さんの女装です。目立ちまくりです」


美雪の言っていることは確かに的を得ていた。


葵に出てもらえれば、紗枝はどのみちミスコンには出ることにはなるが、最悪の状況にはならず、恐らく、今考えつく妥協案としてはかなり有力な案だった。


「あぁ〜……確かにそれはありかもね!!」


綾は美雪の話を聞き、納得し、問題の当人である紗枝へと視線を振った。


「ま、まぁ……私はいいですけど……立花君が…………」


紗枝も美雪の説明で、自分にとってはいい話だと思ったが、それをするにはまずなにより、葵の参加が必要だったため、実現は難しいと紗枝は思いつつ、葵の様子を伺うようにして呟くように答えた。


紗枝の呟きで、葵は他の3人から一斉に視線を向けられ、葵の返事を待つ形になった。


「いやいや、待て!! 橋本の言ってる事は分かったが、何が原因でこんな話になった?」


葵は自分に美雪達が頼みたい事の内容は理解したが、紗枝の悩みやミスコンを行う事は葵も知っていたが、男子に推薦される等といった細かい所までは知らなかったため、大雑把な所しか把握出来ていなかった。


「そうですね。立花さんもよく分かってないようですし、きちんと説明しましょう。」


美雪は1度、話を整理するためにも、何が原因でこんな話になったのかを話し始めた。

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