表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
九章 コスプレ編
182/204

俺より可愛い奴なんていません。9-8


 ◇ ◇ ◇ ◇


あおい紗枝さえからの提案に甘え、紗枝を連れ、道中コスプレの事や、どのようにしてメイクアップや、セットアップをしているのか説明をしていた。


『ミルジュ』のバンが止まっている駐車場は、会場から一番近い駐車場ではあったが、それでもかなり離れたところにあり、一通り説明するには、十分な時間があった。


葵は説明しながらも、今日『ミルジュ』が用意した衣装の事、そしてその衣装の中で紗枝に似合った物を考え、使いたい衣装が、使用されていた事も見据え、候補も決めた。


そうこうしている内に、あっと言う間に二人は目的の駐車へとたどり着き、『ミルジュ』の用意したバンが止まっている一区画で、人が賑わっているのが見えた。


「なんか人多いね」


紗枝もその光景が不思議に見えたのか、ポロリと呟いた。


時間的には、まだまだ会場に人がいる状況で、帰りの混雑を避ける為、一足、二足先に帰宅をしている来場者もいたが、それでも数は少なかった。


つまり、人がまばらで、まだあまり混雑していない駐車場で、人が集まっている『ミルジュ』のバンは異様に見えていた。


「姉貴たちも丁度、モデルを連れて来たのか」


葵はらんがコーディネートしている時間に被った事に気付くと、ちょっと嫌そうな表情を浮かべたが、蘭のコーディネートをしている様子も見れる為、割り切り、作業場もそこまで広くは取れなくなるが、折り合いを付ける事を決めた。


二宮にのみや、他ともブッキングしてるから、余計に時間かかるかもしれないけど、いいか?」


「うん、私は大丈夫だよ。

しょうがないよね」


ただでさえコスプレ、そして会場でその姿を披露となると、紗枝を拘束してしまう為、頼る事に気が引けていた節もあり、余計に時間を撮らせてしまう事を葵は申し訳なく感じていた。


そんな葵の心情を、紗枝は知りはしなかったが、気を遣わせないよう、あっさりとした様子で即答した。


紗枝の言葉を聞き、一先ず安堵した葵は、人が賑わう『ミルジュ』のバンへと、再び歩み始めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「お? 葵~~!

やっと帰ってきた?」


葵がバンへと近づくと自分が勧誘したであろう、素人のお客さんを丁度メイクしていた蘭が、葵に気付き声を掛けてきた。


『ミルジュ』の宣伝も兼ねている為、仕事でもあるのだが、蘭は気の抜けたような声で、普段、自分や椿つばきに接している時と同じ雰囲気のまま、その場にいた。


仕事とプライベートで、そこまでオンオフがはっきり変わる人で無い事は、葵も知ってはいたが、それでも桜祭で意気込んでいた蘭には、オーラのようなものを感じる事もあった。


しかし、今の蘭にはそれは全く感じず、真剣に、手を抜いているわけではないが、気持ちはそこまで入っていないように、葵は感じた。


「遅くて悪かったな……。

バンの中は借りてもいいか?」


蘭は外に作られた、ポールを立て布状の物で仮設のメイクルームで作業をしており、メイクルームは外からはあまり見えないようになっており、ファスナーで開け閉めできる出入口が一か所あり、締め切ってしまえば、完全に外から仲が見えないような作りになっていた。


葵は野外で椅子を出し、メイクアップをしている蘭を見て、バンの中での作業場は空いているものだと思い、確認がてらに尋ねた。


「あ~~、ダメダメ!

今、他の子着替えに入ってるから」


「他の子??

三島みしまさんと椿??」


「椿~? あんた何言ってんの……。

椿はとっくに仕上がって、今頃撮影中よ」


「そうか……。

そんなに時間かけてたんだな…………」


午後から参加合流予定だった蘭と同じ『ミルジュ』で働くゆいですら、一人コーディネートを済ませ、既に撮影に行っている事を知り、自分がそこまで一人連れてくるのに時間がかかっていたのかと、改めて思い知らされた。


「それじゃ、俺らも外か……。

部屋、もう一個は空いてるだろ?」


「うん。そっち使いな、今は」


蘭はそう言って返事を返すと、それ以上言葉を交わすことなく、自分のモデルに集中し始めた。


葵はそんな蘭から視線を外し、白井が立てておいてくれた、もう一つの仮設のメイクルームへと紗枝を誘導し、中へ入った。


「悪いなこんな外で……。

冬じゃないし、閉め切れば外からも見えないから」


「うん、別にそれは大丈夫……。

あっちは閉めなくてもいいのかな?」


「ん?」


紗枝は用意された椅子にちょこんと座ると、蘭の方が気になるのか、指を指し葵に尋ねた。


「あぁ、あのモデルさん連れがいるだろ?

団体の人を誘ったから、友達が返信していくとこを見てみたいとかじゃないか?

俺がここに来るまでに、和気あいあいと楽し気に会話してたから……」


葵は正解かどうかは分からなかったが、おそらく自分が思いつく物の、もっとも可能性のあるものを紗枝に話した。


実際、過去に蘭が連れて来た素人さんの中には、そういった団体がいた事があった。


「なるほど……、確かに友達と来てるなら見たいかもね!

プロのスタイリストなら尚更だよね」


葵の答えに紗枝は納得し、きょろきょろと辺りを見渡した。


白井が用意したメイクルームは決して大きな部屋では無かったが、人二人が入るには十分なスペースがあり、メイク道具も揃っていた。


長机が2つ程並べられ、その上に様々な道具がセッティングされ、それなりにオシャレをし、友達と外に出かける事もある紗枝ですら見たことの無い物や、ブランドが見えた。


女の子としてそういったもの一つ一つが気になったが、いちいち葵に聞くことは気が引け、手際よく準備に取り掛かり始めた葵に尋ねる事は出来なかった。


一通り準備を整えると、葵は一息つき、ようやく紗枝に向き直った。


「さて、どうするか……」


紗枝を真っ直ぐと真剣な眼差しで見つめ、葵は小さく呟いた。


道中何が似合うのか、なにが適しているのか、考えながらここに来たつもりだが、結局考えはまとまらず、メイクルームに入り、考えをまとめる事に決めていた。


「えっとぉ……、や、やっぱり慣れないね……?」


葵にじっと見つめられ、会話も無かった為、沈黙と恥ずかしさに耐えられず、少し頬を赤く染め、恥ずかしそうに葵にそう話しかけた。


「そうか? 二回目だぞ??」


葵は眉一つ動かさず、紗枝の顔見る事に集中していたが、それでも紗枝の質問に答えた。


「に、二回目って……、こんなにまじまじと男の子から顔を見られる事なんて無いし、何回目だとしても恥ずかしいよ…………」


「ふ~~ん」


「ふ~~んって…………」


もう、いかにコスプレさせるのに集中しているのか、葵は会話がテキトーになり始め、それでも顔をまじまじと見続けられる事で、紗枝は複雑な表情を浮かべた。


そうして数分、葵は静かに考えこみ、考えが纏まったのか、ようやく紗枝から視線を逸らした。


「よし、ある程度方向は決まったから、衣装見に行こう」


葵はそう告げると、メイクルームから出るよう紗枝に促し、紗枝はそれに従う様に椅子から立ち上がった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ