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俺より可愛い奴なんていません!!  作者: 下田 暗
二章 桜祭 ミスコン企画
18/204

俺より可愛い奴なんていません。2-1

立花たちばな あおいが起こし、橋本はしもと 美雪みゆきを巻き込んだ事件から数日経ち、事件のほとぼりも少しずつ冷めていた。


桜木高校 昼休み


午前中の授業を終え、様々な生徒が様々な形で昼食を楽しむその中で

葵は今、再び危機に立たされていた。


「おい! 葵ッ!! なんで立候補したんだよッ!!」


葵を廊下に呼び出し、前野まえの 晴太せいたは凄い勢いで葵に向かってそう言い放った。


葵は多くの男子実行委員に取り囲まれ、身動きが取れなく、晴太だけで無く、他の実行委員生徒からも凄い熱量を感じた。


修学旅行実行委員の沖縄旅行に行く者を決める際、男子は4人立候補し、そこから3人に決めるため、ジャンケンでそれを決め、葵は晴れて事前旅行に行けるチケットを手にしていた。


「な、なんでって……そりゃ俺も沖縄行きたかったから……」


葵はそう言って誤魔化したが、晴太達はそんな理由では納得いくわけが無かった。


「お前……なら先それ言えよ…………」


「いや、なんでだよ」


体をブルブルと震わせながら、何故か悔しそうな悲しそうな様子で話す晴太に葵は、もう若干面倒くさそうに様子で答えた。


「なんでだよってお前ッ!!……はぁ〜……」


「もうなんなんだよ!ウザイなぁ〜、早く言えよ」


突っかかったと思ったら今度は何か諦めたかのように今度はため息をつき始める晴太に、葵はついにイライラし始め、晴太にそう言い放った。


「こ、コイツッ!! 逆ギレしやがったぞッ!? お前達!!」


晴太の声に周りの男子実行委員は反応し、一斉に葵に「ブーブー」とブーイングをかました。


葵はもうそのノリに付いていけず、晴太達の相手をするのも疲れてしまい、ため息を1つ零すと何も言わずその場を立ち去ろうとした。


「お、ちょッ! ちょっとッ!! どこ行くねんッ!?」


晴太は何故か語尾が関西弁になりながら、何も言わず急にその場から立ち去ろうとする葵を引っ死に止めた。


「めんどくせぇ〜な。早く要件を言えよ。昼飯まだ食べてないんだよ。」


葵はホントに面倒くさそうにしつつも、晴太の制しに従い、足を止め、文句を垂れた。


「なんてふてぶてしい……まぁいい、お前の罪状を今から伝える」


「ハイハイ……」


晴太の言葉に葵は内心「何もしてないだろ」と思いつつも、一応知り合いであり、友人である彼を蔑ろにすることも出来なかったため、何も言わず、晴太のペースに任せた。


「あの実行委員の件、何かおかしいと思わなかったか?」


晴太の問いに葵は面倒くさく感じながらも少し考えたが、何も思い当たらず、首を横に振って葵は答えた。


「今回。実行委員になった奴のほとんどが事前の沖縄旅行目当てだ。

それなのに、なんであんなすんなりお前を除いた3人がバッチリ数もピッタリ決まったと思う??」


晴太の問いかけは葵に関心を持たせた。


晴太の言うことは確かにそうだった。


葵が初めて実行委員の集会に集まった時、晴太ももちろんだったが、どの生徒も、まだ実行委員の担当の先生から話されていないというのに、その話でどこも持ち切りだった。


そして、葵は1つの考えが過ぎった。


兼ねてから事前旅行にとてつもない情熱を持っていた彼らだ、なんら不思議な事ではなかった。


「お前等……まさか…………」


葵の言葉に晴太は何故か威張るように自信満々に答えた。


「そう! 事前にジャンケンで決めてたんだよ!! しかもリーグ戦でなッ!!!」


(あ、アホだ……アホ過ぎる………)


堂々と答える晴太に何故か周りの外野は「オオッ」と声を上げ、晴太を称賛していた。


葵はその光景に呆れて言葉すらでなかった。


「2つのリーグに分け、勝ち残った上位2人が更にリーグ戦を行い、ジャンケンにジャンケンを重ね、負けた者は勝った者に夢を託し……涙を飲んだんだッ!!」


「そして、本当に運のよかった3人だけが勝ち残ったッ!! なのにッ!!!」


晴太は語るにつれどんどんと熱く騙り始め、何故か涙を拭うような行動を取る男子生徒までいた。


(理解出来ん……)


葵はもうその世界観に付いていけず、呆然と立ち尽くし、晴太達の熱に押されていた。


「最後の最後でハブれてしまった者の気持ちがお前に分かるかッ!?」


晴太のその言葉に外野の生徒達は涙声で悔しそうに「田中たなか、田中」と口々に言い、葵はその者達の目線の先を追うと、先程涙を拭うような行動を取っていた生徒が見えた。


(お前が田中だったんだな……)


葵はその事に関しては悪い事をしたと、こころの中で少し反省した。

そして、それと同時に葵はもう1つ気になった事があった。


「なぁ、男子がその方法を取ってピッタリだったって事は女子もなのか?」


葵の問いに何故か晴太達はビクリと体を震わせ、不思議そうに見つめる葵に観念した晴太ゆっくりと話し始めた。


「違う……逆だ」


「逆?」


「集会の後にそのジャンケン大会を開いたらドン引きされた……」


晴太は俯き、先程の元気を微塵も感じず、暗い雰囲気で呟くと、周りの生徒達も感染したかのように暗い雰囲気になり、辺りの空気がドッと重くなるような気がした。


「お前達はほんとバカか? 何故それを女子の前でやる??」


葵はしょんぼりとした彼らに追い打ちをかけるように説教すると、晴太達は再び沈んでいき、ますます落ち込んだ。


(でも、橋本はしもと達は手を挙げてたな……、アイツらも委員会終わったら3人揃ってスグに帰ってたから知らなかった……?)


葵は当時の淡い記憶を思い出しながら、結論を出した。


「とゆうか、晴太。お前、さっきから選ばれなかった仲間を煽ってるけど結局はこっち側の人間だよな? 事前旅行行くわけだし……なぁ? りゅう


「え……?」


葵は晴太に呼びかけた後、もう1人、沖縄旅行の事前旅行の切符を手にした長谷川はせがわ りゅうにも話を振った。


龍の間抜けな声が響いたその瞬間、さっきまであれほど団結していた男子達は分裂していき、晴太や龍も葵と同じように、恨めしい目付きで、かつての仲間からの視線を受け始めた。


「ま、待てッ!! お前達!! 俺達はキチンと公平に勝負して負けた者は俺達に夢を託すと背中を押してくれた仲間だろ?」


「そ、そうだぞ? 笑って送り出すってお前ら言ったじゃねぇか」


晴太と龍は必死に自分たちの無実を訴えたが、膨れ上がった彼等の羨みは留まるところを知らず、一気に夢を掴んだ男達と夢破れた男達の構図になった。


「うるせぇ!! お前達は俺達の気持ちを弁明しているフリをしてるが本当の俺達の気持ちなんて分かりやしねぇんだ!!」


「た、田中ッ!! 待てッ! 敵は俺らじゃ…………」


晴太と龍に標的が写った事で葵はチャンスとばかりに静かに、何事も無かったかのようにその場から離れていった。


後ろから晴太や龍の名前を呼ぶ声と助けを呼ぶ声がしたが、葵は振り返ることも無くその場から立ち去った。


(ホント、俺を巻き込むなよな……。俺はそれどころじゃないんだって……)


葵は心の中で彼らに呆れた後、今度は真剣に思考を巡らし始めた。


(さて、気付いてしまった以上、どうにかして決着を付けなきゃな。橋本 美雪……どうやって優劣を付けるかだな)


葵はそう考えながら、いまだあの件を引きづっていた。


それは、あの東堂とうどうの1件で気付かされた、自分よりも魅力的に葵が映るという事についてだった。


(アイツ、学校にメイクとかしてこねぇしな……。どうするか……)


今の葵はその事だけにしか興味が無かった。


「ん?これ……」


考えがまとまらないまま、教室へ向うための廊下を歩いているとあるチラシが目に入った。


(あ〜……なるほどね……これだ)


葵はチラシを見るなり、考えが浮かんだのか悪い笑みを浮かべた。


◇ ◇ ◇ ◇


昼休み真っ只中の教室は大きく賑わい、所々で笑い声が聞こえ、その中で葵と似たような境遇に立たされる生徒が1人居た。


最近友達になった二宮にのみや 紗枝さえ加藤かとう あやに質問攻めに合いながらも楽しく昼休みを過ごしていた。


橋本はしもとさん!! ぶっちぇけ聞いていい? 立花さんとその……付き合ってたりするの?」


「え……?」


綾はこの間からずっと気になっていた事を、美雪にここぞとばかりに身を乗り出す勢いで、美雪に訪ねた。


美雪が立候補するなり、あの女子嫌いで有名な葵が立候補したり、放課後、葵の方から美雪に実行委員の集会に行こうと誘ったり、綾達からしてみれば、そう考えてもおかしくはなかった。


美雪はいきなり尋ねられた事に頭が付いていがず、呆然とした様子で言葉を漏らした。


「あ……それは私も気になってた」


「だよね! あの難攻不落の立花様とあんなに話せるだもん」


2人はそう言って、美雪の方へと視線を移した。


「ふ……普通だと私は思うんですけど…………」


美雪は特に照れたりするような素振りで無く、難しそうな表情をしたまま、答えずらそうに答えた。


綾や紗枝は美雪の意図を読み取ろうと、必死に美雪から視線を逸らさずに見つめていたが、美雪の言葉の裏に特に何かあるといったような様子は無く、感じられなかった。


「う〜ん……普通じゃないんだけどなぁ〜…………こっちじゃないとするとあっちかな?」


「え? 立花君の方?? どうだろ、ちょっと分からんない……」


乙女で恋愛に敏感な綾は、どうしても2人の間に何かがあるという思いが捨てきれず、唸りながら考え込み、紗枝も考えたが、今ある情報じゃ、全然答えに辿り着けはしなかった。


「なんか? 立花君とあったりしなかったの??」


綾は更に情報を求めるため、美雪に尋ねた。


美雪はあの東堂との事件以外に何かあったかなと少し考え込んだ後、何か思い当たる節があったのか、口元に人差し指を当て、少し上斜めに視線を持っていきながら、思い出すようにゆっくりと話し始めた。


「1度、告白されそうになった事がありましたね」


美雪がその言葉を言うと、今まで会話していた2人から何も返事が帰ってこず、不思議に思った美雪は2人に視線を戻した。


そこには、口元にお弁当のオカズを持っていくところで手を止め、固まった綾と同じく、美雪に驚いた表情のまま固まった紗枝の姿があった。


3人の間に少しの静寂が流れた後、止まった時が動き出したかのように2人の絶叫が教室に響いた。


「えぇぇぇぇッ!!!」


いつも明るくて元気な綾と共に、どちらかと言えばあまり騒ぐ方ではない紗枝まで珍しく大声をあげ、驚いていた。


それほどまでに2人にとっては衝撃的な一言だった。


2人の声に、教室中はざわめき、3人は教室中の生徒から注目を浴びてしまった。


綾と紗枝は、その事にスグに気づき、申し訳なさそうにしながら周りに軽く頭を下げ、再び美雪の方へと視線を戻した。


「ど、ど、どうゆこと……? 橋本さんッ……!?」


紗枝は、自分の声のボリュームに注意しながら、美雪に尋ね、隣では綾が首を縦にブンブンと振って、興味津々だった。


紗枝と綾は、乙女らしく、恋バナになった途端、顔を赤らめ、先程の恥ずかしい失態もあいまって、余計に顔を赤らめていた。


美雪はここまで2人が食いつくとも思ってもいなかったため、全てを語るつもりは無かったが、こうなってしまった以上、語る他なかった。


「え、えっと……1度、放課後に2人で話をしようと誘われた事があって」


「うんうんッ!! それで?」


「3階の廊下で二人っきりでお話をしました……」


「ま、マジかッ!?」


美雪の話に相槌を入れ、興味津々な綾と、下手に相槌は打たなかったが、紗枝もまた美雪に熱い視線を送り、興味がある様子だった。


「私もそんなシュチエーションだから、てっきり告白されるのかと思って淡い期待をしてたんですけど…………」


美雪の話はそこで終わり、後に続く言葉は無かった。


ここで話が終わるとは思っていなかった綾と紗枝は固まってしまい、また3人の間に静かな空気が流れた。


「え…………? 終わり……?」


「はい……、終わりました」


「そ、そっかぁ……終わりかぁ〜……まぁ現実はそんなもんだよねぇ……」


綾の声は若干震えており、今まで盛り上がっていたのがいきなり盛り下がってしまい、少しおかしなテンションになりつつ、この先さらに盛り上がる事を期待していた綾は少し残念そうに答えた。


美雪も、当初からオチのないこの話をここまで話す気は無かったため、2人の熱に負け話してしまった事を公開した。


先程の盛り上がりが嘘のようにシラケる中で1人、紗枝だけはどうしても2人と同じような結論にはならなかった。


(絶対、なんかあると思うんだけどな〜……)


紗枝がそんな風に考える中、綾はこの空気を変えようと新しい話題を提示した。


「あ、あぁ〜……そうだッ!! 二人ともこれ知ってる?? なんか今年からやるらしいんだけど……」


綾はそういって机の中から1枚のチラシを2人に見せた。


その、チラシには大きくピンク色の文字で桜祭おうさいミスコンと書かれていた。

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